Soranoha

おおかみと きつね

おおかみと きつね

グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール、グリム ヴィルヘルム・カール

むかし むかし、おおかみが、きつねを、じぶんのうちにおいていました。

きつねは、動物どうぶつのなかでも、たいへんよわい けものでした。ですから、おおかみのいうことは、なんでも、きかなければなりませんでした。きつねは、なんとかして、このしゅじんのところから にげだしたいと、おもっていました。

ある日のこと、きつねとおおかみは、ふたりで 森もりのなかをあるいていました。

そのとき、おおかみがいいだしました。

「おい、あかぎつね。なにか たべるものをもってこい。さもないと、おまえを ガリガリ たべちまうぞ。」

すると、きつねがこたえました。

「わたしは、子ひつじが二、三びきいる 百ひゃくしょうやをしっています。もし、おのぞみでしたら、そいつを一ぴき、とったらどうでしょう。」

おおかみは気きにいりました。そこで、ふたりででかけていきました。

きつねは、子ひつじを こっそり ぬすみだして、おおかみのところへもってきました。そして、じぶんは、そのまま さっさと、いってしまいました。おおかみは、ぺろりとごちそうをたいらげました。でも、まだまだ たりません。ほかのも ほしくなりました。そこで、ほかのもちょうだいしに、のこのこ でかけていきました。

ところが、おおかみのやりかたは、へたくそです。たちまち、子ひつじのお母さんに、みつかってしまいました。子ひつじのお母さんは、大声おおごえをはりあげて なきわめきました。それを お百ひゃくしょうさんたちがききつけて、とんできました。

みんなは、おおかみをみつけると、さんざんに ぶったたきました。おかげで、おおかみは 足あしをひきずり、ヒーヒー なきながら、きつねのところへもどってきました。

「やい、きさま、よくも おれをだましたな。おれは、ほかの子ひつじも さらってこようと、おもったんだ。そしたら、百ひゃくしょうどもにとっつかまってな。このとおり、体からだがぐにゃぐにゃになるまで、ぶちのめされたぞ。」

と、おおかみはいいました。

「あんたは、どうして、そう、くいしんぼうなんでしょうねえ。」

と、きつねはこたえました。

あくる日、ふたりは、また 野原のはらへでかけました。

くいしんぼうのおおかみが、またもや いいだしました。

「おい、あかぎつね。なにか たべるものをもってこい。さもないと、おまえを ガリガリ たべちまうぞ。」

すると、きつねはこたえました。

「わたしは、ある百ひゃくしょうやをしってるんですがね。そこのおかみさんが、こんや、たまごパンをやきます。そいつを とってやりましょうよ。」

ふたりはでかけていきました。きつねは、家いえのまわりを、こそこそ あるきまわりました。ながいこと、のぞいてみたり くんくん かいでみたりしてから、ようやく おさらのあるところを、みつけました。きつねは、そのおさらから、たまごパンを 六むっつだけひきずりおろして、おおかみのところへもってきました。

「さあ、ごちそうをもってきましたよ。」

と、きつねは、おおかみにいって、じぶんは、さっさと いってしまいました。

おおかみは、たまごパンを 六むっつとも、あっというまに のみこんでしまいました。

「もっと、くいたいなあ。」

おおかみは そう いうと、こんどは、ひとりででかけていきました。

ところが、おおかみときたら、たまごパンを、おさらにはいったまま ひきずりおろしたのです。さあ、たまりません。おさらは下におっこちて、こなごなに われてしまいました。

ガラガラ ピシャン という すさまじい音おとに、おかみさんがとびだしてきました。

おかみさんは、おおかみのすがたをみると、大声おおごえで、男たちをよびました。男たちはすっとんできて、おもいっきり、おおかみをたたきのめしました。で、おおかみは、足あしをひきずり ワーワー なきながら、森もりのなかの きつねのところへ、もどってきました。

「やい、きさまは、おれをひどいめにあわしたな。百ひゃくしょうどもが、おれをとっつかまえて、さんざっぱら なぐったんだぞ。」

と、おおかみはどなりました。

「あんたは、なんて、くいしんぼうなんでしょうねえ。」

とだけ、きつねはいいました。

三日めです。ふたりは、また そろってでかけました。おおかみは、きょうは、足あしをひきずりひきずり、やっと あるいているありさまです。

それでいながら、また いいだしました。

「おい、あかぎつね。なにか たべるものをもってこい。さもないと、おまえを ガリガリ たべちまうぞ。」

すると、きつねはこたえました。

「わたしは、ある男をしってるんですがね。その男は 動物どうぶつをころしましてね。しおづけにした肉にくを たるにつめて、あなぐらにしまっているんですよ。そいつをとってきましょうよ。」

けれども、おおかみは、こんどは こう いいました。

「それじゃ、おれも いっしょにいく。おれがにげられなくなったら おまえに たすけてもらえるようにな。」

「どうぞ、おすきなように。」

と、きつねはいって、おおかみに、ぬけ道みちやら ちか道みちやらを、おしえました。

ふたりは、そこをとおって、ようやく あなぐらのなかへ はいりこみました。みると、肉にくが うんとこさ あります。おおかみは、ものをもいわず かぶりつきました。

(こいつをかたづけるには、じかんがかかるな。)

と、おおかみはおもいました。

きつねも、うまそうにたべました。けれども、しょっちゅう、あたりを きょろきょろみまわしていました。そのあいだには、ときどき、さっきとおってきた あなのところへいって、じぶんの体からだが、まだ とおりぬけられるかどうかを、ためしていました。

それをみて、おおかみがいいました。

「やい、きつね。いったい なんだって、そんなに、あっちへうろうろ こっちへうろうろ、とびだしてったり とびこんできたりしているんだ。」

「だれかきやしないか、よく みはってないと、いけませんからね。」

と、きつねはこたえました。そして、つけくわえて、いいました。

「それより、あんまり たべすぎないほうがいいですよ。」

けれども、おおかみはいいました。

「このたるを からっぽにするまでは、ここを うごきやしないぞ。」

そうしているうちに、お百ひゃくしょうさんが、きつねのとびはねる音おとを ききつけて、あなぐらへやってきました。きつねは、お百ひゃくしょうさんをみると、ピョンと ひととび はねて、あなから にげていってしまいました。

おおかみも、あわてて ついていこうとしました。ところが、あんまりたべすぎて、おなかが ぱんぱんにふくれています。はいってきたときのあなを、とおりぬけることができません。体からだがひっかかって、ぬけなくなってしまいました。

お百ひゃくしょうさんは、まるたんぼうをつかんできて、おおかみを、なぐってなぐって なぐりころしてしまいました。

きつねは、森もりのなかへ とんでかえりました。こちらは、くいしんぼうの じいさんおおかみから、うまく にげだすことができて、おおよろこびでした。

底本 / Source edition

底本:「グリムの昔話(1)野の道編」童話館出版
2000(平成12)年10月20日第1刷発行
2014(平成26)年8月20日第14刷発行
底本の親本:「グリム童話全集 6 ブレーメンのおんがくたい」実業之日本社
1964(昭和39)年
入力:sogo
校正:木下聡
2024年12月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール、グリム ヴィルヘルム・カール「おおかみと きつね」(新字新仮名)、底本『グリムの昔話(1)野の道編』童話館出版、2000年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 061532_001091, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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