たゞひとり黎明の森を行く。
風は心虚しく幹のあはひを翔り、
木々はみなその白き葉裏を反す。
樹の間がくれに、足速に
白き馬を牽きゆくは誰ぞ。
道の辺の 歯朶の群をのゝけり。
かゝるとき、湿りたる岩根を踏めば
あゝ、わが出生の記憶甦へる。
むだい
富永 太郎
たゞひとり黎明の森を行く。
風は心虚しく幹のあはひを翔り、
木々はみなその白き葉裏を反す。
樹の間がくれに、足速に
白き馬を牽きゆくは誰ぞ。
道の辺の 歯朶の群をのゝけり。
かゝるとき、湿りたる岩根を踏めば
あゝ、わが出生の記憶甦へる。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c富永 太郎「無題」(新字旧仮名)、底本『富永太郎詩集』現代詩文庫、思潮社、1975年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 055492_000678, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079