月青く人影なきこの深夜
家々の閨をかいま見つゝ
白き巷を疾くよぎる侏儒の影あり
愚かなる状して黒々と立てる屋根の下に
臥所ありて人はいぎたなく眠れり
家々はかく遠く連なりたれど
眠の罪たるを知るもの絶えてあらず
月も今宵その青き光を恥ぢず
快楽を欲する人間の流す
いつはりの涙に媚ぶと見えたり
かゝる安逸の領ずる夜なれば
あらんかぎりの男女の肌を見んとて
魔性の侏儒は心たのしみ
おもはゆげもなく軒より軒へ
白き巷をよぎりゆくなり
むだい
富永 太郎
月青く人影なきこの深夜
家々の閨をかいま見つゝ
白き巷を疾くよぎる侏儒の影あり
愚かなる状して黒々と立てる屋根の下に
臥所ありて人はいぎたなく眠れり
家々はかく遠く連なりたれど
眠の罪たるを知るもの絶えてあらず
月も今宵その青き光を恥ぢず
快楽を欲する人間の流す
いつはりの涙に媚ぶと見えたり
かゝる安逸の領ずる夜なれば
あらんかぎりの男女の肌を見んとて
魔性の侏儒は心たのしみ
おもはゆげもなく軒より軒へ
白き巷をよぎりゆくなり
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c富永 太郎「無題」(新字旧仮名)、底本『富永太郎詩集』現代詩文庫、思潮社、1975年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 055491_000678, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079