Soranoha

平野義太郎宛書簡

ひらのよしたろうあてしょかん

野呂 栄太郎

御手紙拝見いたしました。

一、編集人の件、なるべくなら他の講座同様岩波氏にしていただいた方、万事好都合と思いますので、極力そうしてもらうよう交渉すべきだと存じます。岩波氏としては本講座は出筆者の顔ぶれから見て出版法違反にでも問われることがあってはというようなことを懸念されるのだと思いますが、そのような懸念はほとんど杞憂きゆうでしょうし、他のものが編集名義人となっている時、万一そのような危険性のある場合でも、岩波氏が名義人なるが故に却かえってその厄を免れ得るとも考えられるのです。われわれ編集者としては万全を期してそのような口実を当局に与えないように極力努力することは既定の方針なのだからなるべくなら岩波氏にお願することにしたいと思います。

二、しかし岩波氏の方でどうしても御都合が悪ければわれわれ編集者の間から誰かを選定せねばなりませんが、その場合は、貴下が最適任と存じますから、その際には是非御願い仕りたいと存じます。勿論編集者一同の決定であるならば私でも差し支えございませんが、ただ何か急に出頭して諒解を求める必要でも起こった際絶えず病臥びょうがしている私では何かと不都合が起こるでしょうし、それに編集名義人が私なるが故にというような場合も全然予想し得ないこともないので、なるべくならば、第二案の場合には是非貴下に御願い仕りたいと存じます。

三、第二巻の原稿出来ました分から順次に拝見したいと思います。一時になると中々容易でありませんから。

御蔭で私は大分元気を恢復しましたが相変わらず、午後から夜にかけて多少の微熱が出ますので仕事の能率があがらず閉口しています。当地もすでに花時を過ぎて四時変らぬ松の緑ばかりとなりましたが、それでも新緑の候は格別です。御閑暇もあらば御来遊下さい。

まずは御返事まで。

四月三十日夜栄太郎

平野様

侍史

底本 / Source edition

底本:「野呂栄太郎全集 下」新日本出版社
1994(平成6)年12月5日初版
※作品名は、便宜を考慮して、入力時に新たに付したものです。
入力:山田剛
校正:土屋隆
2005年3月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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書誌 / Bibliography
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野呂 栄太郎「平野義太郎宛書簡──04 一九三二年四月三十日」(新字新仮名)、底本『野呂栄太郎全集 下』新日本出版社、1994年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 004453_000287, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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