Soranoha

右門捕物帖

うもんとりものちょう

佐々木 味津三

1

――ひきつづき第十一番てがらに移ります。

事の勃発ぼっぱついたしましたのは師走しわすの月ずえ。今までもしばしば申し上げたように、当今とは一カ月おくれの太陰暦ですから、師走は師走であっても、ずっと寒気がきびしくて、朝夕はへそまでが凍りそうな寒のさいちゅうでした。

しかし、陽気はいかに寒いにしても、犬が東を向けばその尾は必ず西へ向くように、師走が来ればその次にお正月が来ると決まっているんですから、さらでだに火事と師走どろぼうで忙しい江戸の町は、このときにいたってますます忙しさを加え、それだけにまためいめいのふところぐあいも負けないで火の車とみえ、行き行く人の顔は、いずれも青息吐息でありました。

だが、そういう忙しげな周囲のなかにあって、忙しければ忙しいほど反対にほくほくしているところが、同じその江戸の中にただ一軒ありました。――屋号を生島屋いくしまやといった日本橋小田原町の呉服屋七郎兵衛の一家です。というのは、毎年の吉例どおりにこの十五日から始めた年末歳暮の大売り出しが、いつになくすばらしい大当たりを取ったからでしたが、ことにことしはせがれの陽吉が親の跡めをついで、その新婚記念と相続記念に、特別景品つきの大勉強をするというところから、売り出し初日の十五日には、これくらいあればじゅうぶんだろうと用意しておいた秩父銘仙ちちぶめいせんばかりでもが、優に二千反を売り切ったというような、比類なき大景気でありました。銘仙ですらがそんな景気ですから、その他のもののはけぐあいがいいことはもちろんのことで、二日三日と大売り出しが重なっていくにつれて、客は客を呼び、評判は評判を生んで、まことに文字どおり店先は市をなすの盛況でありました。

その評判を聞きつけたのが例のおしゃべり屋の伝六で――

「ちぇッ、世の中にゃ金のなる木を持っていやがるやつが、ふんだんにあるとみえらあ。ね、だんな、おたげえひとり者どうしで、お歳暮にくれてやる女の子もねえんだが、せっかくお正月が来るっていうのに、暮れの景気も知らねえじゃ、いかにもしみったれみたいで業腹だから、ひとつぶらぶらといってみますかね」

朝湯がえりにひょっくりと顔をみせると、ちょうどその日は非番のために、右門が屈託顔でねこごたつにあたりながら、おなじみのあの十八番のあごひげをまさぐりまさぐり、草双紙かなんかに読みふけっていましたので、そそのかすように水を差し向けました。

「そうそう、おれァあの子に帯を買ってやる約束だっけ。腹ごなしに出かけようか」

すると、右門が、まさかと思っていたのに、妙なひとりごとを漏らしながら、ふいと立ち上がりましたものでしたから、水を向けるには向けましたが、案外な気のりのしかたに、かえって伝六があわててしまいました。

「そりゃほんとうですかい」

「みくびっちゃいけねえよ。おめえのひとり者と、おれのひとり者とは、同じひとり者はひとり者でも、できが違うんだ――行くなら早くお小屋へけえって、へそくりをさらってきなよ」

本気で促しましたものでしたから、おしゃべりとほっつき歩きの大好物な伝六は、犬ころのようになってしたくに駆け帰りました。

寒は寒でしたが、いいぐあいに小春日で、それがまたいっそう客足を呼んだものか、小田原町の通りまでいってみると、もう店先はいっぱいの黒山でありました。それらの黒だかりしている客の間を、少年店員が右往左往しながら、わめくようにあちらからもこちらからも呼び合いました。

「えい、一両で二十八文のおかえしイ」

「さらしの上物一反――」

「こちらは黄八丈のどてら地イ――」

しかし、そのとき、ふと右門の目をひいたものは、そこの帳場ごうしの向こうにそろばんをぱちぱちとはじきながら、手が八本あっても忙しくてたまらないといいたげに、しきりに金勘定をやっている若者でありました。たぶん、それが今度親の跡めを継いだという生島屋呉服店の新当主陽吉にちがいないが、右門の目をひいたというのは陽吉のすばらしい美男子ぶりで、それがまた並みたいていの美男子ではなく、おなごにしてもこのくらいな上玉はそうたくさんあるまいと思われるほどな逸品でしたから、ついひかれるともなくそのほうへ目をひかれました。

それと知って、ところかまわずがらッ八を始めた者は、例のとおりおしゃべり屋伝六で、こやつはほかのこととなるとご存じのようにいたってどじの伝六なんだが、どうしたことか回り気だけはおかしいくらい発達していたものでしたから、あたりには黒山のお客がいるというのに、おかまいなく右門を粗略に扱いながら、あけすけとやりだしました。

「ちぇッ、あきれるな。いくらべっぴんだからって、男のべっぴんじゃ、おかしくもおもしろくもねえじゃござんせんか。どんな帯をお買い上げだか知らねえが、買うなら早いことおしなせえよ」

その声がつつぬけに聞こえたとみえて、若主人陽吉がふとこちらを向きましたので、右門の視線と陽吉の視線とが、はしなくもそこでぱたりとぶつかりました。と同時に、どうしたことか、陽吉の両ほおがぱっと首筋のあたりまでまっかになりました。その赤らみ方というものが、また、まるで男とは見えないほどにいかにもういういしく娘々していたものでしたから、右門もちょっとそれにはめんくらったようでしたが、ちょうどそのとき手すきとなった店員が腰低くやって来て、注文の品を尋ねましたので、気がついてぶっきらぼうに答えました。

「女の子の丸帯じゃ――」

「えッ? じゃ、冗談でなくてほんとうですかい」

出がけにああはいっても、右門にかぎって、あの子やこの子が自分の知らないまにできようとは思いませんでしたから、当然のごとくに伝六はお株を始めましたが、右門は取り合おうともしないで店員に命じました。

「なるべく、はで向きで、それもごく上等を見せてもらおうかな」

「へえ、かしこまりました。こちらは繻珍しゅちん、こちらの品はつづれ織りでございます」

声と同時に十八、九ごろから二十がらみのはで向きを、ずらずらとそこへ並べましたので、さあ一大事とばかりに伝六がいっそう目を丸くしていると、だが、買うものは余人ならぬわれわれのむっつり右門です。たとえ、はで向きといったにしても、店員の持ち出したようなそんな年ごろの、聞きずてならぬ隠し人や届け先がいつのまにかできていたとしたら、いち伝六の問題ばかりではなく、やがて江戸に女一揆いっきの起きるやも計られない大問題でしたから、右門はあわてて手を振ると、にが笑いしいしいいいました。

「いや、違うよ違うよ。もっとずっと若い、十二、三の子どもものじゃよ」

「ちぇッ」

みごとにまた右門得意の肩すかしに出会って、伝六はちぇッと舌を鳴らしながらそっぽを向きましたが、反対に右門はおおまじめでありました。店員が新しくそこに並べ直したがらものの中から、緞子どんすのすばらしい一本を選び出すと、宝の小づちを背負ってでもいるような顔つきで尋ねました。

「三十両がほどもするかね」

「いいえ、十八両でございます」

「ああ、そうか。ちっと物足らないが、では、これをいただきましょうかな」

まだ慶長小判が流通している時代の十八両なんだから、いいかげんなかど地面が買えるほどの金高ですが、しかるに右門は、ちっと物足らないが、といたって大きく出ながら、ちゃりちゃりとそこへ山吹き色を惜しげもなく並べると、念をおすように尋ねました。

「むろん、届けてくださるだろうね」

「へえい、もうすぐと伺わせまするでござります。おところはどちらさまで――」

ことごとくもみ手をしたのを見ると、伝六というやつはうるさいといえばうるさいが、一面また実にかわいらしいあいきょう者でありました。

「どちらさまとはなんでえい、なんでえい、江戸っ子にも似合わねえ、おらが自慢のだんなを知らねえのか、右門のだんなさまだよ、八丁堀の右門のだんなさまだよ」

いらざるところにいらざる自慢の名のりをあげたものでしたから、

「おいこら、伝六ッ――」

あわててしかっておくと、右門は届け先を告げました。

「松平伊豆守いずのかみ様のお屋敷に、静と申すお腰元がいるはずじゃからな。こちらの名まえをあかさずに届けなよ」

言いおくと、右門と知って目引きそで引きしながら、いっせいにどよめきたったお客たちの視線をのがれるようにして表へ出ていきました。――お記憶のよいかたがたはいまだにお忘れないことと存じますからあらためて説明するまでもないことですが、右門がゆかしくも贈り主の名まえをかくして、かく高価な丸帯を惜しげもなくお歳暮に届けろと、店員に命じた相手のその静というのは、すでにお紹介しておいた六番てがらの継母ままはは事件で、右門に生まれてたった一度のごとき男涙をふり絞らしたあの孝女静のことです。その節、右門が声明しておいたとおり、世にも可憐かれんな孝女の孤児は、その後右門が親もととなって、伊豆守様のお屋敷奉公に上がっていますので、義を見てはだれより強く、情に会っては何びとより涙もろい人情家のむっつり右門は、年の瀬が迫ってきても、だれひとり人の世の親身な暖かさを与え知らすもののないこの可憐な孤児に、かくもゆかしく名まえをかくして、至愛の一端を示したのでありました。

「えれえッ、えれえッ。なにをなさっても、だんなのやることにゃ、そつがねえや。あの丸帯をお静坊に贈るたあ気がつきませんでしたよ。このとおり、あっしゃうれし涙がわきました――」

伝六にも右門のゆかしさがわかったとみえて、がらッ八はがらッ八であっても、こやつがまた存外の人情家でしたから、ほんとうに往来なかで、栃とちのようなのをぽろぽろとやっていましたが、右門はべつにほめられるほどがものでもないといったような面持ちで、さっさと八丁堀はっちょうぼりのほうへ引き揚げていきました。

2

と――、帰ろうとしたその道の途中で、はしなくも右門の第十一番てがらとなるべき事件の発端が、突如として勃発ぼっぱつしたのです。いや、道の途中でというよりも、正確にいえば伝六が生島屋の店先で、あのとき、右門にしかられるような不必要と見える名のりをあげたからこそ、事件が向こうから右門のふところに飛び込んできたんですが、かどを曲がった近道伝いに八丁堀のほうへ帰ろうとすると、あわただしく追いかけてきて呼ぶ声がうしろにありました。

「そこのだんなさま! おふたり連れのだんなさま!」

振り返ってみると、呼び手は先ほど右門に丸帯を見せてくれた生島屋のあの店員でしたから、いぶかって待っていると、店の者は息せき切りながら追いついて、遠慮深げにきき尋ねました。

「先刻店先でこちらのかたがおっしゃいましたようでしたが、そちらのだんなさまは、八丁堀の右門様でござんすね」

「そうじゃよ」

「では、あの、うちの大だんなさまが、大至急で、ご内聞にちょっとお目にかかりたいと申してでござりますゆえ、ご足労ながらお立ち寄り願えないでござりましょうか」

「用は何でござる」

「詳しゅうは存じませぬが、いましがただんなさまがたが店先にお越しのさいちゅう、奥でなにやら妙なことが起きたそうでござります」

いるさいちゅうに事が起きたといったものでしたから、事件のいかんを問わず聞きずてならじと思いまして、ただちに右門は伝六に目くばせしながら生島屋へ引きかえしてまいりました。

「どうぞ、こちらから――」

言いつつ先にたって内玄関のほうへ案内しましたので、通されるままに上がっていくと、いかさま何か珍事が勃発したとみえまして、そこにうろうろしていたものは、生島屋の大だんな七郎兵衛しちろうべえでありました。うち見たところまだ五十そこそこの年配でしたから、せがれの陽吉に跡めを譲って隠居するにはまだ少し早いくらいに思いましたが、今の場合はそんな不審の穿鑿せんさくよりも、事の何であるかが第一でしたので、一礼するとただちに事件の顛末てんまつの聴取にかかりました。

「何ぞ出来しゅったいいたしたそうじゃが、どんなことでござる」

「あっ、ご苦労さまに存じます。あの、妙なことをしちくどく念押しするようでござりまするが、ほんとうに右門のだんなさまでござんしょうか」

すると、奇妙なことには、七郎兵衛がまた、右門であるかどうか、改まって念押ししたものでしたから、いぶかしく思って尋ねました。

「先ほど、お店のかたも念を押されたようじゃが、もしてまえが右門でなかったならば、なんと召さる?」

「おふたりさまを前にして、変なことを申すようでござりまするが、もし右門のだんなさまでござりませなんだら、なまじ事を荒だててもどうかと存じますので、差し控えようかと思うているのでござります」

「すると、なんじゃな、右門なら事をまかしても安心じゃというのじゃな」

「へえい、ま、いってみればさようでござります」

「いや、なかなか味のありそうな話じゃ。いかにも拙者が右門でござるよ」

「あっ、さようでござりまするか。では、ちとご内聞に申し上げとうござりますので、そちらのかたをお人払いを願いとうござりまするが、いかがなものでござりましょう」

「だいじょうぶ、ご心配無用じゃ。これはてまえの一心同体のごとき配下じゃから、なんでも申されよ」

「さようでござりまするか。では申し上げまするが、実は今これなる座敷で、ふいっと軸が紛失いたしましてな」

「軸と申すと、書画のあの軸でござるか」

「へえい」

「品物は何でござる」

「雪舟の絹本でござりました」

「雪舟と申すとなかなか得がたい品じゃが、家宝ででもござったか」

「へえい。代々家に伝わりました、二幅とない逸品でござりますので、かくうろたえているしだいでござります」

「いつごろでござった」

「ほんのただいま、それもまだだんなさまがたがお買い物中のことでござります」

「聞き捨てならぬことじゃな。場所はどこでござった」

「その床の間に掛けてあったのでござりまする」

「でも、この床には現在なにやらめでたそうな新画が掛かっているではないか」

「いいえ、それが不思議の種なんでござりまするよ。実は、いましがた出入りの鳶頭とびがしらが参りましてな、つい十日ほどまえにてまえのせがれが嫁をめとりましたので、その祝儀じゃと申しまして、この新画の幅をくれたものでござりますから、さっそくこれと雪舟とを掛け替えて鳶頭とふたりでながめておりましたら、そのまに取りはずしておいた雪舟が、いつか消えてなくなったのでござりまするよ」

「ほほう。では、その間だれもこのへやへははいらなかったというのじゃな」

「ええ、もうはいるどころではござんせぬ。てまえと鳶頭がちゃんとここについていましたのに、あとで気がつきましたら、雪舟だけがなくなっていたのでござります」

「なに、あと……? あとと申すと、鳶頭が帰ってからのことじゃな」

「へえい。いつも気ぜわしげな男で、すぐに帰りましたゆえ、うちのものに玄関まで送らせまして、ふと気がつくと、もう雪舟が消えてなくなったのでござります」

「すると、なんじゃな、もし疑いをかけるなら、その鳶頭とやらが怪しいわけじゃな」

「ところが、それが大違いでござります。に組の金助といや古顔の鳶頭でござんすから、だんながたもご存じだろうと思いまするが、てまえの家はもう先代からの出入りで、今年七十になるまでただの一度も人からうしろ指さされたことのないっていうりちぎ一方の江戸っ子なんでござりますから、疑うどころか、怪しい節一つないんでござりまするよ。それに、てまえがその間座をはずしたとか、ご不浄にでも立ったとか申しますなら、鳶頭にも疑いがかかるんでござりますが、なんしろ来るから帰るまで、ちゃんとてまえがこの二つの目で見張っていましたのに、雪舟だけが消えてなくなったんでござんすから、どうにも解せないのでござります」

――事実としたら、いかにもこれは奇怪至極な盗難事件というべきでした。紛失した雪舟の名画が、まるめてふところにでもはいる品だとか、あるいはちょいとたもとの中へでも失敬できるような小さな品でしたら、ずいぶんとまだ疑いようもあるわけなんですが、なにをいうにも、たった今しがたまで床に掛けてあった幅物の、いたってかさばる品なんですから、いかさまこれは不思議千万な話というべきでした。しかも、唯一の容疑者というべきそれなる鳶頭の金助なる者が、いうとおりのりちぎ一方な江戸っ子で、あまつさえ先代からの古い出入りだったというにおいては、だれかキリシタン・バテレンの密法でも使う者が忍び込んで持ち出さないかぎり、あるいは雪舟の名画に足がはえて、自分からひとりでにどこかへ姿をかくしてしまわないかぎり、まことに奇怪至極、不思議千万な盗難事件というべきでした。

けれども、このくらいな盗難事件に出会って、たわいなくあわを吹くようなむっつり右門だったら、だいいち伝六の、おらのだんな、おらのだんなと称して、ああも人に自慢するはずはないわけです。さればこそ、右門は例の秀麗きわまりない眉目びもくに、観察の深さを物語る一文字のくちびるをきりりと引き締めて、しきりとそこに掛けられてある床の新画を見ながめていましたが、ふふん、というような微笑をみせると、やぶからぼうに尋ねました。

「見れば、この新画の落款には栄湖としてあるようじゃが、栄湖というのはあの四条派の久和島栄湖であろうな」

「へえい。新画番付では三役どころの画工だそうにござります」

「すると、相当な値ごろのものじゃな」

「へえい。よそから祝儀にいただいて値ぶみをするのも変なものでござりまするが、安い品ではござりませぬ」

「では、箱ぐらいついていそうなものじゃが、どうしたことか、これは無箱のようではないか」

「いいえ、無箱ではござりませぬ。ちゃんと箱に入れて持ってきてくれたのでござりまするが、途中でまにあわせに買いととのえたもので、まだ箱書きがしてございませんからと申しまして、鳶頭が箱だけを――持ち帰ったのでござりまするよ」

と、――聞くや同時に、右門のまなこが、期したる答えに接したもののごとく、きらきらと輝きを帯びてまいりました。いや、ただにまなこが輝きを帯びてきたばかりではなく、すでにいっさいの解法がついたかのごとくに、莞爾かんじとうち笑えんでいましたが、ややことばを強めると、七郎兵衛をおどろかすように尋ねました。

「盗まれた雪舟は、たぶん尺二でござったろうな」

「へえい、そ、そうでござりまするが、どうしてまた、そんなことがおわかりでござりまするか」

ぎょっとなったように七郎兵衛がきき返しましたので、右門はふたたび莞爾かんじとうち笑んでいましたが、がらりと調子を変えると、ようやくむっつり右門本来の面目に立ち返ったといわんばかりで、おそろしく伝法に、おそろしく切れ味のよろしい啖呵たんかをずばりときりました。

「おれの名は、二度も三度も念を押して聞いているじゃねえか。むっつり右門はただのできあいじゃねえや、知恵の出どころがちっと違わあ。――さ、伝六、また少し忙しくなったぜ」

のみならず、ゆうゆうとして蝋色鞘ろいろざやを腰にすると、ぱんぱんひざがしらをはたきながら、おちついて帰りじたくを始めましたものでしたから、どこにどう犯人のめぼしがついたものか、まるでまだ五里霧中の七郎兵衛があわをくって尋ねました。

「では、あの、雪舟の行くえはもうおわかりになったのでござりまするか」

「わかったからこそ、こうして帰りじたくをしているんじゃねえか。ねこごたつにでもはいって、金の勘定でもしていなよ」

言い捨てるや、迫らずに表へ出ていったようでしたが、ふと伝六をかえりみると、述懐するようにいいました。

「思うに、あのおやじ、少し握り屋らしいな」

伝六にはその突然な述懐がよくわからなかったとみえて、ぼけぼけしながら、いぶかしそうにきき返しました。

「とおっしゃると、だんなは、あのおやじの握り屋らしいところに、なんかこの事件あなの糸口があるっておっしゃるんですかい」

「あたりめえよ。ひと口にいや、小欲が深すぎるんだよ。だから、あの軸物をもらったんで、もらうものならなんでもござれとばかり、ほくほくもので有頂天になっているすきを、ちょろりと雪舟に逃げられてしまったんだ」

「じゃ、やっぱり、あの鳶頭の金助とやらが怪しいとおっしゃるんですね」

「決まってらあ。あのおり、ほかにだれもあの座敷へ来たものがねえとすりゃ、雪舟の絵に足がはえてでも逃げ出さねえかぎり、金助よりほかに盗んだやつあねえじゃねえか」

「でも、先代からのお出入りで、評判の正直者だといったじゃござんせんか」

「だから、なおのこと、あのおやじ小欲が深すぎるにちげえねえっていうんだよ。相手が正直者だから安心しきって、もらいものに有頂天となっているすきを、ちょろりと細工されちまったんだ。また、鳶頭のほうからいや、日ごろ正直者として信用されているのをさいわい、そこをつけ込んで裏かいたのさ」

「いかにもね。そうすると、やっぱり、箱書きをするといって、あの箱を持ちけえったことがなんか細工の種ですかね」

「ほほう。じゃ、おまえもやっぱり箱書きが怪しいとにらんだかい」

「だって、考えてみりゃおかしいじゃござんせんか。お祝儀の進物に持ってくるくれえなら、箱書きなんぞまえからちゃんと用意してくるのがあたりめえなんだからね。しかも、きいてみりゃ、盗まれた雪舟がやっぱり尺二で、さっきあそこに掛かっていた新画のほうも同じ尺二じゃござんせんか。だから、思うに、あれと雪舟とを掛け替えるとき、うまいこと目をちょろまかして、持ってきた箱の中へ雪舟を盗み入れたうえで、箱書きを口実に、まんまと持ち帰ったんじゃござんせんかね」

「偉い! そのとおりだよ。そのとおりだよ。きさまもだいぶこのごろ修業が積んだな」

「ちぇッ、つまらないことを、めったにほめてもらいますまいよ。あっしだって、三年たちゃ三つになりますからね。それに、でえいち、盗まれた品物が品物ですからね。あんなかさばるものを、おやじの見ている前でどうして持ち出したろうと不審をうっているとき、ひょっくりとだんなが箱のことを尋ねなすったものだから、さてはそいつが急所だなと思って、いっしょうけんめい聞いていたところへ、箱書きうんぬんのことを申し立てたので、こいつ鳶頭が細工したなと気がついたまでのことでさ」

「いや、偉いよ。どっちにしても、それを気がつくようじゃ、きさまもめっきり腕をあげたよ。――だが、こいつ、ぞうさなさそうに見えて、存外根が深いかもしれねえぜ」

「とおっしゃいますと、なんですかい。盗み手のめぼしはついたが、肝心の雪舟はちょっくらちょいとめっからないとでもおっしゃるんですかい」

「いいや、そんなものの行くえやありかは、このおれが出馬するとなりゃまたたくまだがね。とかくこういうふうにぞうさがなさそうに見える事件あなってものが、思いのほかに根の深いもんだよ。ついこないだの達磨だるまさんの捕物とりものでもそうなんだが、うわべに現われているたねの小さいものほど、底が深いものさ」

「だって、雪舟が人の見ている前で、ひゅうどろどろと消えてなくなるなんて、ちっとも小さかねえじゃござんせんか」

「そりゃ、きさまが雪舟という絵の値うちに目がくらんでいるからだよ。そいつをとりのけてみりゃ、ただの盗難さ。けれども、その盗んだやつが七十近い老人のりちぎ者だっていうんだからな。根が深いかもしれねえっていうなあ、そのりちぎ者のとったってことそのことさ」

「大きにね。だんなの目のつけどころは、いつも人と違うからね」

「それに、あの生島屋のおやじが、二度も三度もおれに右門だかどうだか念を押したのが、ちっと気に入らねえじゃねえか」

「いかにもさよう。あっしもあの一条がいまだに気持ちがわるいんですがね。右門のだんなならお頼みするが、ほかの八丁堀衆なら頼むまいっていわんばかりのことを、変に気を持たせてぬかしゃがったからね」

「だから、こいつちっと大物かと思っているのさ。それに、時が時だからな……おっと、いけねえ、いけねえ。話に夢中になっているうちに、とんでもねえほうへ来ていらあ。ここをいっちゃ深川へ出てしまうじゃねえか。に組っていや、たしか神田だったろ」

「へえい、さようでござんす。連雀町れんじゃくちょうあたりに火の見があったはずでござんすよ」

「じゃ、めんどうくせえや。ひと飛びにまた例の駕籠かご「駕籠」は底本では「駕駕」と誤記にしようよ」

「そらッ、おいでなすった。もう出るか、もう出るかと待っていましたっけが、だんなの口から駕籠っていうお声がかかりゃ、槍やりが降ろうと、火の玉が舞おうと、もうおれが天下だ。――おいそこの裸虫! 大急ぎ二丁ご用だぜ」

この師走空しわすぞらにしり切れじゅばん一枚きりで、そこの橋たもとにふるえていた裸人足を見かけると、景気よく伝六が呼び招きましたので、右門はむっつりとくちびるを引き締めながら、いよいよこれより右門流の水ぎわだった捕物にかかろうといわんばかりで、筑波つくばおろし吹きしきる大江戸の昼日中町を、神田連雀町目ざして駆けさせました。

3

目じるしが火の見やぐらというのっぽの背高でしたから、に組の火消し番所は労せずしてすぐと見つかりました。火消し番所が見つかった以上、鳶頭とびがしらの金助はさらに手間暇を要せず居どころが判明したものでしたから、右門はまず在否を尋ねました。

しかし、居合わした若い者の答えによると、金助は一度帰宅したが、その足でただちにまたいずれかへ他出したということでありました。だから、普通の者ならば、少しうろたえて他出先とか立ちまわり先を、目の色かえながらききただすところでしたが、しかるに右門は、いたっておちつきはらいながら、さようか、では、引き揚げようとばかりに、ろくろく出先もきこうとしないで、さっさと帰りだしたものでしたから、いつもながら、ことごとく首をひねってしまったのはおしゃべり屋伝六です。

「ね、どうしたんですかい。野郎品物を持ってどこかへこかしに行ったとするなら、すぐと足を洗わなくちゃなりませんが、いやにおちつきはらっていなさるところをみると、急にここまでやって来てほしが狂ったんですかい」

すると、右門がうるさいといわんばかりに、ずばりと答えました。

「人を見て法を説けというやつだよ。かりそめにも、に組の鳶頭っていや、侍にしたら城持ち大名ほどの格式じゃねえか。高飛びすりゃしたで顔がきいているからすぐにわかるし、また江戸っ子のちゃきちゃきが、そんなぶざまなまねもしめえじゃねえか。大船に乗った気で、晩のおかずの心配でもしなよ」

女もいらじ、金もいらじ、ただのぞむものはおいしいものばかりといいたげに、ごくおちついていたものでしたから、伝六もそれっきりむだな問いを発しませんでしたが、しかし、そう見えながらむっつりとおし黙って、例のおなじみのあごひげをまさぐりまさぐり、不断になにごとかを考案くふうしているのが、いつもながら捕物名人の癖です。果然、なにごとかくふうがついたとみえて、その夜のかれこれもう二更すぎたころでした。

「さ、伝六! お出ましだッ」

むくりとこたつからはい出ると、おおかた人々が寝に就こうというそんな夜ふけに、ふいっと外出のしたくを始めましたものでしたから、ぎょうてんしたのはいうまでもなく伝六です。

「この寒いのに、正気ですかい」

「正気でなくてどうするかい。火事は、寒い暑いにかかわらず、燃えるときが来りゃ燃えるんだよ」

「えッ? どっかで今、半鐘でも聞こえるんですか」

「あいかわらずどじを踏みだすと、感心してえほど連発するな。いま半鐘が鳴っているっていうんじゃねえんだよ。このからッ風じゃいつ火事を出すかわからねえから、そろそろ出かけようっていってるんだ」

「禅の問答みたいなことおっしゃいますね。よしんばからッ風が吹いているにしても、だんなやあっしが火の番でもねえのに、なにもうろうろするにゃ当たらねえじゃござんせんか」

「決まってらあ。おれたちが火事見回りに行くんじゃねえんだよ。火事が出そうなこんな晩にゃ、火消しや鳶とび人足はうちをあけずに寝ず番で起きているから、おおかた金助ももう外出から家へけえっているにちげえねえっていってるんだ」

「な、なるほどね。目のつけどころが凝ってらあ。いかにも金助め、この風じゃ心配になって、うちにいるにちげえねえでがしょう。では、また駕籠かごですかい」

「寒い風に当たるのも一つの修業じゃ。歩いて参ろう」

いうや雪駄せったをうがって、ゆうぜんとふところ手をしながら、いっそうひゅうひゅうとこがらしの吹きつのりだした往来へ歩きだしましたので、伝六も負けずにあとを追いました。

年の瀬近い江戸の大路の屋並みは、すでにまったく大戸をおろして、まこと名物の江戸の花が、いまにもそこらあたりからじゃんじゃんぼうとやりだしそうな夜ふけでした。

行きついてみると、案の定金助は出先からもどりかえって、そこの長火ばちの向こうに古稀こきの老体とは見えぬがんじょうな体躯たいくをどっしりと横すわりにさせていたものでしたから、右門はごめんとばかり上がっていきました。

しかし、金助のそのつらだましいをしげしげと見て、右門はちょいと、二の足を踏んだかたちでありました。生まれおちるから火事の中に育って、この世にこわいものは一つもないといいたげな、不敵無類の面貌めんぼうをしていましたものでしたから、人を見て術を施すにさとい右門は、はて、いかにして口をあかしたものかというように、ややしばしためらっていたようでしたが、そのときはからずもかれの目にとまったものは、そこのへやの境に使われている四本のからかみふすまです。ふすまは家につきものの造作ですから、いっこう不思議でも不審でもなかったが、いぶかしかったことは、その四本だけが他のへやの古すぎるほど古いのに比べて、特別の新しさを備えていることでした。それも尋常一様の新しさではなく、のりのしめりぐあい、紙のかわきぐあいなぞから推しはかってみると、つい一、二刻まえあたりに張り替えたらしいような点が見うけられましたものでしたから、早くも右門の特別仕立ての明知が、ピカピカとさえ渡ったもののごとくでありました。いや、同時にもうその盗難品の隠匿場所も、どうしてそれを完全に看破したらいいか、その方法も、すでにいっさいのくふうがついたもののごとく、突然にやりと笑っていたようでしたが、はじめからこの家を目ざして来たというのに、ぽつりと妙なことをいいました。

「失礼失礼。ついお隣とまちがえて、とんだ無作法をつかまつった。あしからずごめん――」

いうと、そのまま表へ出ていってしまいました……そろそろ右門流が始まったなと、伝六が次の行動を待っていると、果然右門が奇怪至極な命令を発しました。

「一二三の合い図をするから、きさまもいっしょに、この家の前で、お隣が火事だと大声で叫べ!」

「だって、火事でもねえのに、そんな人騒がせのことを叫んだら、のされちまいますぜ」

「八丁堀の右門様がどなれとお命じになってるんだ。――いいか、そら、一二三!」

なにごとか成算のあるもののごとく、右門が一二三と合い図をしたものでしたから、そういうこととなると特別大好物な伝六です。

「火事だア。火事だア。お隣が大火事だア」

右門の叫ぶ声に合わせて、必死と伝六も叫びました。なにしろ、宵よいのうちからひゅうひゅうとからッ風が吹き荒れて、今晩あたり出火したら、と大びくびくのところへ、場所もあろうに鳶頭とびがしら金助の家の前で、お隣が大火事だア、とばかり大声でどなったものでしたから、なんじょうあわてないでいられましょう! 刺し子をまとって用意をしていたいなせの若者が、どやどやと金助の家から飛び出しました。

と――、そのあとから商売がらにも似合わずに大狼狽だいろうばいで、血色を失いながら駆けだしたものは、だれあらぬ鳶頭の金助自身でありました。けれども、飛び出しながら金助のけんめいにひっかついでいたものは、なにかとおぼしめす?――これぞ、笑止というか、こっけいというか、それとも当然なことというか、あの先ほど右門が不審を打った、四本の新しいからかみふすまの一本でありました。――まことにいつもながら捕物名人の、いわゆる右門流は、人の意表をつくことかくのごとく、また、水ぎわだってあざやかなことかくのごときものばかりでしたから、三嘆これ久しゅうしてもほめきれないぐらいでしたが、隣が火事とききつけ、まっさきにふすまをかつぎ出したことは、いうまでもなくそのものが第一番に貴重な品であることを問わず語りに物語っていましたので、最初から四本のふすまを怪しとにらみ、そのうちのいずれに秘密の細工をしてあるか労せずしてそれを看破しようと、かく奇計をめぐらしてその思うつぼに相手をおとしいれた右門は、早くもそれと知るや、例の十八番草香流やわらの一手で、ぐいと金助の腕をねじあげておきながら、莞爾かんじとうち笑みうち笑みいいました。

「火事に慣れないものなら、仏壇と石うすをまちがえてかつぎ出すということもあるが、おあいにくさまにきさまは鳶頭だったんで、あわてましたと申し開きのできないことがおきのどくだな。――苦心して罪を隠そうとしたてめえの手品の種をあかしてやるから、さ、来い!」

ぐいぐい家の内へひきずっていくと、いきなり小柄こづかをぬいて、おらがだんなの知恵はどんなものじゃい、というように大得意で伝六が持ち運んできたそれなるふすまを、ばりばりと注意深く引きさきました。といっしょで、果然上張りの一枚下からにょっきりと正体を現わしたものは、画面だけを切り抜いた名画雪舟の一幅でした。

「それみろッ。これがバカの小知恵というやつじゃ。なまじりこうぶって、こんなものの下張りに張り込んでおくから、余人は知らず右門の目にかかっては、隠しきれなかったのじゃ。さ! 神妙に申し立てろッ」

だが――、かく歴然と現品は剔発てきはつされているのに、この期に及んで鳶頭の金助は、その不敵無類なつらだましいが物語っているごとく、がんとして口をとじたままでした。それも犯行を自白しなかったばかりでなく、何がゆえにかような品を盗み出すにいたったか、石のごとくに無言でありました。

「たとえ口がさけても、このことばかりは断じて申されませぬ!」

ただひとこといったきり、江戸っ子魂の意地の強さを眉宇びうにみなぎらしながら、厳として緘黙かんもくしたきりでしたから、当然の帰結としてなんびとにもただちに想起される問題は、拷問火責めの道具ばかりとなりました。

けれども、余人は知らずわがむっつり右門の得意としたところのものは、拷問火責めの荒道具を用いざるところにあったはずです。そのかわりに、たぐいまれな、安物でない明知という武器が残っていたはずでありました。さればこそ、そのときはからずもかれの胸中に思い出されたものは、生島屋の七郎兵衛が、特に右門ならばというように、念を押したあの一条のいぶかしい記憶でありました。それとともに思い合わされたものは、昼間生島屋を引き揚げる道の途中で、伝六に述懐したごとく、りちぎ者と名をとった公人の鳶頭が盗みを働く以上は、なにか深い根があるだろうといった、その推断でありました。それこれを思い合わしてみるに、案の定ぞうさのなさそうに見えた事件は、ここに及んでがぜん第二のなぞと秘密に包まれた雲霧の中に吸い込まれていきましたので、それみろ、いったとおりだったろう、と言いたげに右門はややしばしなにごとかをうち案じていましたが、それならそれでまた別な吟味方法でとばかり、ふいっと伝六に意表をついた命令を発しました。

「どこか近くの自身番に、座敷手錠があるだろうから、借りてきてはめときな」

「じゃ、ご番所へしょっぴいていくんじゃねえんですかい」

「鳶頭といや、とにもかくにも人の上に立つ人間だ。盗みの罪状は罪状にちげえねえが、これほどの分別ざかりな人間がやるからにゃ、なんぞ子細があるだろうからな。それに、お年寄りがこの寒空に火の種一つねえご牢屋ろうや住まいも身にこたえることだろうから、なるべくいたわってやんな」

「わかりやした。――みろッ、そこら辺のまごまごしているわけえ者、おらのだんなのなさるこたあ、このとおり、いつだってそつがねえんだぞ。後学のため、ちっとだんなのつめのあかでももらって煎せんじて飲みな」

いつも変わらぬ右門のゆかしい一面をここにおいても見せましたので、すっかり伝六がわがことのように大みえをきりながら、さっそく命令どおり近くの自身番へ手錠を取りに駆けだそうとすると、まことに人は意気のものです。いや、げにこそ徳は孤ならずでありました。およそ世のこと人のことは、その人おのずからの心がら人徳によって、きのうの敵もきょうは味方になるとみえ、今まで江戸魂の意地張り強く、死しても口はあけじといわんばかりに、がんとして緘黙かんもくを守っていたそれなる鳶頭金助が、右門のつねに忘れぬいたわりと慈悲の心に、さしも強情の手綱がとけて、ころりと参ったものか、走りだそうとした伝六を呼びとめていいました。

「ちょっと、ちょっとお待ちなせえまし。こればっかりは口が裂けても申しますまいと思ってましたが、慈悲の真綿責めに出会っちゃかなわねえ。おわけえに似合わず、そちらのだんなは、あっぱれ見上げた男っぷりだ。あっしも江戸っ子冥利みょうりに、すっぱりかぶとをぬぎましょうよ」

うって変わって自白するといいだしたものでしたから、右門の喜びはいうまでもないことでした。

「そうか、それでこそそのほうも男の中の男伊達だてじゃ。きいてつかわそう、どんな子細じゃ」

「ちっとこみ入った話でごぜえますから、よっくお聞きくだせえましよ。実は、生島屋のおおだんなに八郎兵衛はちろべえっていうおにいさんがもうひとりごぜえましてね、そのかたが兄でありながら、あんまりおかわいそうなご沈落をしていなさるので、見るに見かねて、あっしがちっとばかり侠気おとこぎを出したんでごぜえますよ」

「なるほど、さようか。ともかくも、人のかしらといわれるほどのそのほうがいたしたことじゃから、ただの盗みではあるまいと存じおったが、では、雪舟を盗みとって金にでも引き換え、ないしょにみつごうというつもりじゃったのじゃな」

「めっそうもござんせんや。だから、よくお聞きなせえましといってるんですよ。あっしががらにもなく侠気を出してこの品を盗みとったなあ、そんなちっぽけな了見からじゃねえんですよ。ピンが出るか、ゾロが出るか、生島屋の身上を目あてに賭かけて張った大勝負でさあ」

「なに、生島屋の身代……? では、なんぞあの一家には秘密な節でもあると申すか」

「ある段じゃござんせぬ。だんなもとっくりお考えになったらおわかりでござんしょうが、唐からや天竺てんじくの国なら知らぬこと、おらが住んでいるこの国じゃ、どこの家へいっても、兄貴があったら兄貴へ身代を譲るのが昔からのしきたりじゃござんせんか」

「しかり、それでこそ豊葦原とよあしはら瑞穂国みずほのくにが、ご安泰でいられると申すものじゃが、そうすると、なにか、あれなる七郎兵衛とか申すのが、兄をさしおいて、なんぞよこしまなことでもいたしおったのじゃな」

「ではないかと存じましてな、あっしが雪舟でちょっと細工してみたんでがすが、どこの家へいったって兄がありゃ兄に家督を譲るのがあたりめえなのに、どうしたことか、あの生島屋っていううちには昔から妙な言い伝えがごぜえまして、子どもがふたり以上生まれたときにゃ、その成人を待って嫁をめとり、そのせがれたちの設けた孫のなかで、男の子を産んだものに、次男だろうと三男だろうと、うちの身代を譲るっていう変なしきたりがあるんですよ。だから、今の大だんなの七郎兵衛さんと、ご沈落しなさっている兄の八郎兵衛さんと、このおふたりが成人なすったときにも、先代の親ごさんていうのがさっそく言い伝えどおり、それぞれむすこさんにお嫁をめとらしたんですがね。するてえと、ご運わるく兄の八郎兵衛さんには女のお子ども衆が生まれ、弟の七郎兵衛さんにはまたご運よくもあの陽吉さんていう男の子どもが生まれたんでね、代々の家憲どおり、七郎兵衛さんが兄をさしおいて、今の生島屋の何万両っていうご身代を、ぬれ手でつかみ取りにしちまったんですよ」

「なるほど、わかったわかった。そうすると、なんじゃな、その七郎兵衛の設けた陽吉っていう男の子どもが少し不審じゃと申すのじゃな」

「へえい。いってみりゃつまりそれなんですが、どうもいろいろとおかしい節がごぜえましてね」

「どのようなことじゃ」

「第一はお湯殿でごぜえますが、男の子ならなにもそんなまねしなくてもいいのに、どうしたことか陽吉さんは昔からひとりきり、別ぶろへへえりなさるんですよ。それも、四方板壁で、のぞき窓一つねえっていう変なお湯殿なんでね。だから、妙だなと思っているやさきへ、今度陽吉さんがおめとりなさった嫁っていうのが、どうもおかしなしろものなんですよ。だんながたはご商売がらもうご存じでごぜえましょうが、日本橋の桧物町ひものちょうに鍵屋かぎや長兵衛ちょうべえっていうろうそく問屋があるんですが、お聞き及びじゃござんせんか」

「ああ、存じおる。名うての書画気違いと聞き及んでいるが、そのおやじのことか」

「さようさよう、その書画気違いのおやじでごぜえますよ。そいつの娘がつまり陽吉さんのお嫁さんになったんですが、奇妙なことに、その鍵屋にはふたり子どもがあっても、みんな男ばかりで女の子はねえはずだったのに、生島屋とのご婚礼まえになってから、ひょっくりと女の子がひとりふえましてね。そのふえ方ってものがまた妙なんで、今まで長崎のほうの親戚しんせきへ預けてあった娘を呼びよせたってこういうんですが、それはまあいいとして、そのかわり今までふたりあった男の子どものうちの、弟むすこってほうが、女の子のふえるといっしょに、ひょっくり消えてなくなったんですよ。長兵衛のいうには、長崎のその親戚へ女の子の代わりに次男のほうを改めてくれてやったと、こういってるんですがね。いずれにしても、男がひとり消えてなくなって、そのかわり女の子がひょっくりとひとりふえてきたんだから、もしや、と思ったんですがね」

「では、なんじゃな、そこに何か細工があって、若主人の陽吉は実際は女であり、嫁に来たろうそく問屋の娘っていうのが、もしやほんとうは男であるまいかと、こういう疑いがわいたと申すのじゃな」

「へえい、あっしだけの推量なんでごぜえますが、陽吉さんの別ぶろのことといい、ろうそく問屋の次男坊の見えなくなったことといい、なんかうすみっともねえ小細工しているんじゃねえかと思うんですよ」

なんぞ深い子細があっての盗みだろうとはすでに見きわめがついていましたが、七郎兵衛一家の上に、陳述のような疑雲がかかっているとするなら、ここに事件は意想外な方向への急転直下を始めかけましたので、捕物名人の全知全身は急激に緊張の度を加えて、見るまに両のまなこがらんらんと活気を帯びてまいりました。と同時に、その記憶の中へ、ぴかりと電光のごとくにひらめき上がったものは、朝ほど買い物にいったとき、生島屋の店先でふとかいま見た若主人陽吉の美男ぶりでした。いや、美男ぶりのその記憶よりも、あのとき、はしなくもみせた陽吉の女にも見まほしいほおの赤らみとはにかみでした。

こりゃ思わぬ色っぽい捕物になりそうだなと思いましたので、右門は語をついで尋ねました。

「しからば、雪舟は何がゆえに盗みとったのじゃ」

「それがあっしの苦心なんですよ。だんなはさっき、バカの小知恵とおっしゃいましたが、あっしとすりゃあれを盗むのがいちばん近道と思いやしたからね。さればこそ、一生一度の盗みもしたんですが、それってものは、あのろうそく屋の長兵衛めがちっと気にいらねえ癖があってね。いま手もとに集めている書画の掛け物はおおかた二、三百幅もあるんでしょうが、一本だっててめえが金を出して買った品はねえんですよ」

「では、いずれも盗みとった品物じゃと申すのか」

「いいえ、もっと根のふけえやり口で巻きあげるんですがね。ひとくちにいや、みんなゆすり取るんですよ。そのゆすり方ってものがまた並みたいていのゆすりようじゃねえんだがね、どこかにいい幅のあることを耳に入れると、しつこくその家をつけまわして、何かそこの家の急所になるような秘密とかあら捜しをやったうえに、うまいこと巻きあげちまうんですよ。だから、生島屋のこの雪舟にしたって、やっぱりその伝でね、こないだ長兵衛がこいつをくれろといって、ゆすりに来たと小耳へ入れたものだから、長兵衛がくれろというからにゃ、何か生島屋の急所となる秘密かあらを握ってからのことだろうと思いやしたので、もしかすると、おれのにらんでいる急所じゃねえかと思ったところから、こいつを盗み取らば、自然事が大きくなって生島屋のほうでもあわてだすだろうし、長兵衛のほうでもゆすりの種をなんかの拍子に明るみへさらけ出さないもんでもあるまいと思って、ちっとまわりくどい方法でしたが、ためしに盗んでみたんですよ」

いっさいのなぞがその陳述によって解きあかされましたものでしたから、右門の全能力はここに戛然かつぜんと音を発せんばかりに奮い起こりました。第一はその侠気おとこぎです。一介の市人鳶頭の金助ですらが、かく侠気からあえて盗みをも働いたというのに、それほどの奇怪至極な秘密を聞き知って、われらの義人むっつり右門が黙視のできる道理はないはずでしたから、凛りんとして言い放ちました。

「よしッ。おれがそのからくりをあばいてやらあ。さ、伝六ッ。ちっとまたおめえには目の毒になることを見せなきゃならなくなったから、しっかりと了見のひもを締めておきなよ……じゃ、参ろう、駕籠かごだッ」

たちまち伝六が二丁をそこにそろえましたので、右門は雪舟をこわきにしながら、時を移さずに、飛びのりました。

4

時刻はすでに四ツを回って、普通ならばとっくに寝ついているべきはずでしたが、昼の大売り出しの勘定がつかないとみえて、まだ生島屋ではいずれもが起きていましたので、右門はかって知った内玄関のほうへ駕籠を乗りつけると、案内も請わずにずかずかと門内へはいっていきました。

と……そのときはしなくも耳を打ったものは、そこの勝手わきの井戸ばたで、じゃぶじゃぶと洗い物をでもしているらしい水の音でした。昼のせんたくならばけっして右門とて不審はいだかなかったが、この夜ふけにないしょがましい洗いすすぎは、いかなる微細なことをも見のがし聞きのがしたことのない捕物名人にふと不審をわかしましたので、突然襲い入るように井戸ばたへ回っていきました。

見ると、洗いすすぎをやっていたものは生島屋の下女でしたから、右門はのぞき込むようにしてきびしく尋ねました。

「品物はなんじゃ」

「えッ、た、たびでございますよ」

「なに、たび……! だれのたびじゃ」

「若だんなさまがたのたびでございます」

「どれ、みせろ」

取りあげてみると奇怪です。男のはくべき黒のほうがわずか八文七分で、女のはくべき白のほうが、なんとばかでかい足のことには十文半もありましたものでしたから、仁王におう様のおつれあいででも用いるたびなら格別、大和やまとながらの優にやさしい女性に十文半の大足は、不審以上に奇怪と思いましたので、右門は時を移さず奥へ通ると、そこにねこぜを丸めながら、しきりと金の勘定に夢中だった七郎兵衛に向かって、こわきの雪舟を投げつけるようにしながら、ずばりといいました。

「そら、のぞみの品じゃ。よく改めろ」

「あっ、たしかに見覚えの雪舟でござりまするが、この変わり方はどうしたのでござります」

「どうしてこんなになったかは、そちの胸に思い当たることがあるはずじゃ。ちと一見いたしたきことがあるから、職分をもって申しつくる。せがれの陽吉夫婦をすぐさまこれへ呼びよせろッ」

「えッ……!」

案の定、七郎兵衛はぎくりとなりましたが、右門のことばは間をおかないで、峻厳しゅんげんそのもののごとくに飛んでいきました。

「八丁堀同心近藤右門が、役儀の名によって申しつくるのじゃ、そうそうに呼びよせろッ」

七郎兵衛がしぶしぶと手を鳴らしながら陽吉夫婦を呼び招きましたので、右門は烱々けいけいとまなこを光らしながら、両名のはいりくるのを待ちうけました。

と――いまにしてはじめてみる、若主人陽吉夫婦は、いかにもいぶかしき一対でありました。夫たるべき陽吉が内輪に歩行を運び、妻たるべき新嫁にいよめは大またに外輪だったのです。しかし、事はいやしくも犯してならぬ性の秘密にかかわっていましたので、念には念を入れるためから、一瞬、――右門は腰をひねって手だれの蝋色鞘ろいろざやをさッと抜いて放つや、そこにはいりきたろうとした陽吉の足もとめがけて、まずきらりとそれなる抜き身をさしつけました。玉散るやいばがおのが足もとに飛んできたんですから、いかで陽吉のいたたまるべき、ついわれを忘れたもののごとくに、あっとすそ前を散らしながら飛びのきました。

そのとたん! まことそれは伝六ならずとも見てならぬ目の毒でしたが、ちらりとすそ前下からさしのぞかれたものは、表こそ男のなりをよそうといえども、やはり大和やまとながらの女性は女性のたしなみを忘れかねるとみえて、見るも悩ましく、知るも目にあざやかな紅の切れでありました。同時に、その赤色にまつわりからんで、雪なす羽二重はだのむっちりとしたふくらはぎが、神秘の殿堂はそこにあるといわぬばかりに、ちらりとさしのぞいたのです。と、いっしょでありました。返すやいばを電光石火の早さで、さッとまた突き出すと、そばに立ちすくんでいた陽吉の新嫁に、きらりさしつけました。一瞬、すそ前下から同じようにさしのぞかれたその足の、むくつけき毛もじゃらさかげんというものは、なんと笑止千万なことでありましたろう! 髪は文金の高島田に結いあげ、召し物帯いっさいが女の服装でありながら、一枚下はあきらかに男性だったのです。

早くもふたりの珍奇な秘密を看破するや、右門の口から鋭いののしりが発せられました。

「バカ者ッ。茶番狂言ではあるまいし、一生それで押し通すつもりじゃったか! ――さ、伝六ッ。駕籠かごをとばして、金助と、おきのどくな八郎兵衛どのとやらを大急ぎにつれてまいれッ」

伝六がまるくなって駆けだしましたものでしたから、右門はそのまに七郎兵衛の口からいっさいの秘密を自白させました。果然、事実は鳶頭金助の陳述したとおり、生島屋の奇妙な家憲に事を発し、七郎兵衛の設けた子どもも、兄の八郎兵衛の子どもと同様女でしたが、根が小欲に深い拝金宗の七郎兵衛はここに悪才を働かし、かく娘を男に仕立てて、名も陽吉と男名まえをつけながら、巧みに生島屋の六万両という大身代を私していたのでありました。

けれども、性の秘密はかく別ぶろをしつらえるほどの苦心をやって、うまうまと男に見せかけることができたにしても、偽りきれぬものは芽ぐみゆく人の春のこころです。女男の陽吉は、肉体の秘密をかくしながらも、自然の理法に従ってその円満な発育をとげましたので、妻ならぬ夫を選ぶことにたちいたりましたが、事は初めから不自然をあえて行なっていたんですから、選ぶべき配偶者にはたと行き詰まって、ついにおろかにも書画気違い長兵衛のせがれを女に仕立てて、かく十日まえに世人のまなこを瞞着まんちゃくしながら、男と女を入れ替えて、夫婦の契りを結ばせたのでありました。それというのも、長兵衛親子が、やはり欲得金づくからで、一生不自由しなければならないことを知りながら、かく窮屈な女に化けて、生島屋の六万両を目あてにこのような不自然きわまる和合を取り結んだのでしたが、そこにはしなくも大きな破綻はたんの原因となったものは、ほかならぬろうそく問屋長兵衛の狂気に近い書画収集癖でありました。鳶頭金助のいったとおり、生島屋七郎兵衛方に古画雪舟の名品が秘蔵されているのを知ったので、例のゆすり手を発揮しながら、せがれたちの秘密をもっけの急所におどしたてて、うまうま雪舟を巻きあげようとしたその一歩手前に、はからずも七十の老侠児ろうきょうじ金助のかぎ知るところとなり、事はさらにわれらの捕物侠者むっつり右門の手に移り渡って、かく今の今このひと間において、はしなくも人々の心をはらはらとさせたごとき、くしくも悩ましき男女鑑別の色模様となったのでありました。

さればこそ、見破られた本人たちの、まっかになって恥じ入ったことはむろんのことで、穴あらば穴にでもはいりたいといいたげに、ふたりともえり首までももみじを散らして、じっとそこにちぢこまったままでした。

かくするところへ、伝六がふうふう息を切りながら、鳶頭金助と兄の八郎兵衛を伴って駆け帰ったものでしたから、右門は莞爾かんじとばかりうち笑えむと、すぐに金助へいったことでした。

「さすがは年の功じゃ。陽吉夫婦は、そちのにらんだとおりじゃぞ」

「えッ、じゃ、やっぱりご亭主が嫁さんで、お嫁さんがご亭主だったんですかい」

「そのとおりじゃ」

「いくら欲の皮がつっ張っていたからのことにしたって、あきれたものだね。この先、もし赤ん坊が生まれるようなことになったら、どうするつもりだったんでしょうね。男で通っていたご亭主の陽吉さんが岩田帯をするなんてことになったら、天下の一大事ですぜ」

金助のこのうえもない急所をついた痛いことばに、男と女と入れ替わっていた若夫婦たちは、さらに首筋までもまっかにしながら、消えてでもなくなりたいといったような様子でしたが、それよりも急ぐことは事件のあとのさばきでしたから、右門はやおらことばを改めると、おごそかに申し渡しました。

「七郎兵衛の罪は良俗を乱し、美風を損じたる点において軽からざるものがあるが、右門特別の慈悲により、お公儀への上申は差し控えてつかわすによって、ありがたく心得ろ。そのかわり、生島屋の身代六万両はこんにちかぎり二分いたし、その一半はこれなるお兄人八郎兵衛どのにつかわせよ。どうじゃ、よいか」

「えッ。では、三万両もの大金をただくれてやるんでござりまするか」

握り屋の握り屋らしい面目を遺憾なく発揮いたしまして、七郎兵衛が不服そうに申し立てたものでしたから、右門のいつにない初雷がその頭上に落下いたしました。

「控えろッ、控えろッ。ただくれてやるとはなにごとじゃッ。そのほうこそ、ただもらっているではないかッ。それとも、六万両みんな八郎兵衛どのにつかわすようお公儀に上申してもさしつかえないかッ」

「め、めっそうもございませぬ。では、三万両さしあげるでござります。さしあげますでござります」

六万両みなつかわそうかといったことばに、ことごとく震え上がりながら、手もなくそこにひれふしましたので、右門は微笑をふくみながら、いとここちよげに立ち上がると、だが、かえりしなに右門らしい揶揄やゆをひとこと、なおはにかみつづけている若夫婦にいってやりました。

「もうそのほうたちも、今宵こよいから天下晴れて、女は女、男は男の勤めができるから、お湯なども人にかくれてはいるには及ばぬぞ」

ふたりはむろんまっかになって、両ほおはいっぱいのもみじでありました。ことに、男となっている陽吉はひとしおの赤らみ方で、それゆえいっそう艶えんにういういしさを増したくらいでありました。

――しかし、表は年の瀬まえのこがらし吹きつのる冷たい夜半よわでした。右門十一番てがらは、かくして冷たい夜半のうちに、めでたくも美しい結果をつげたしだいです。

底本 / Source edition

底本:「右門捕物帖(二)」春陽文庫、春陽堂書店
1982(昭和57)年9月15日新装第1刷発行
入力:tat_suki
校正:はやしだかずこ
1999年12月21日公開
2005年7月1日修正
青空文庫作成ファイル:
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TEI
/works/000579_000111/tei
プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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佐々木 味津三「右門捕物帖──11 身代わり花嫁」(新字新仮名)、底本『右門捕物帖(二)』春陽文庫、春陽堂書店、1982年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 000579_000111, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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