昔　むかし、ひとりの女の人がいました。この人には、三人の<ruby><rb>娘</rb><rt>むすめ</rt></ruby>がありました。

いちばん上の娘は、ひたいのまんなかに、目がひとつしかありませんでした。それで、みんなから、ひとつ目、とよばれていました。

二番めの娘は、ふつうの人間とおなじように、ふたつの目をもっていました。それで、ふたつ目、とよばれていました。

いちばん下の娘は、目が三つありました。それで、三つ目、とよばれていました。この娘の三番めの目は、やっぱり、ひたいのまんなかにくっついていました。

さて、ふたつ目だけは、ちょっと見たところ、ほかの人間とすこしもかわりありません。それで、きょうだいからも母親からも、きらわれていました。みんなは、ふたつ目に<ruby><rb>向</rb><rt>む</rt></ruby>かって、しょっちゅう、こういうのです。

「おまえは、なんだい。目がふたつあって、まるで、いやしい人間どもとおんなじじゃないの。あたしたちのなかまじゃないよ。」

こういっては、みんなで、ふたつ目をいじめるのです。<ruby><rb>着</rb><rt>き</rt></ruby>るものも、ひどい<ruby><rb>服</rb><rt>ふく</rt></ruby>しかやりませんし、食べるものも、自分たちの食べのこしたものしか、やらないのです。こうして、みんなは、ふたつ目にひどいことばかりしました。

あるときのことです。ふたつ目は、野原にでてやぎの番をするように、いいつかりました。けれども、おなかがすいてたまりません。むりもないのです。姉さんも妹も、ほんのわずかの食べものしかやらないのですからね。

ふたつ目は畑の<ruby><rb>畦</rb><rt>あぜ</rt></ruby>にすわって、しくしく　<ruby><rb>泣</rb><rt>な</rt></ruby>きだしました。ふたつの目から、<ruby><rb>涙</rb><rt>なみだ</rt></ruby>があふれてきました。やがて、涙はふたつの小川となって、ながれ<ruby><rb>落</rb><rt>お</rt></ruby>ちました。泣き<ruby><rb>悲</rb><rt>かな</rt></ruby>しみながら、ふたつ目は、ふと　目をあげてみました。すると、すぐそばに、ひとりの女の人が立っています。

「ふたつ目や。おまえ、なにを泣いているの。」と、その女の人がたずねました。

ふたつ目は答えました。

「だって、泣かずにはいられませんもの。あたしはふつうの人間とおなじように、目がふたつあります。それで、姉さんからも妹からも、お母さんからもきらわれて、みんなにいじめられてばかりいるんです。それに、<ruby><rb>着</rb><rt>き</rt></ruby>るものもお古しかもらえませんし、食べるものだって、みんなの食べのこしたものしかもらえないんです。今日なんて、あんまりすこしでしたから、おなかがすいてすいてたまらないんです。」

すると、その女の人がいいました。

「ふたつ目や、<ruby><rb>涙</rb><rt>なみだ</rt></ruby>をおふきなさい。わたくしがいいことを教えてあげますから、これからは、そんなに、おなかがすいてたまらないようなことはないでしょう。

おまえのやぎに、こういいなさい。『メエメエ　やぎさん、テーブルだして』。

そうすれば、きれいな布のかかったテーブルが、すーっと、おまえのまえにでてきますよ。テーブルの上には、びっくりするほどおいしいごちそうが、たくさんたくさん、ならんでいます。おまえは、それをおなかいっぱい、食べていいんですよ。そして、食べ<ruby><rb>終</rb><rt>お</rt></ruby>わったら、『メエメエ　やぎさん、テーブルさげて』と、いいなさい。

そうすれば、テーブルは、すーっと<ruby><rb>消</rb><rt>き</rt></ruby>えてなくなりますからね。」

こういい終わると、女の人の<ruby><rb>姿</rb><rt>すがた</rt></ruby>は消えてしまいました。

（あの女の人のいったことは、ほんとかしら。まあ、いいわ。ためしてみよう。だって、おなかがすいてたまらないんですもの。）

ふたつ目はこう考えて、女の人のいったとおりに、いってみました。

「メエメエ　やぎさん、テーブルだして」

と、どうでしょう。こう、いい終わるかいい終わらないうちに、もう、白い布のかかったテーブルが、目のまえにあらわれたではありませんか。テーブルの上には一枚のお<ruby><rb>皿</rb><rt>さら</rt></ruby>がのっていて、それに、ナイフと、フォークと、<ruby><rb>銀</rb><rt>ぎん</rt></ruby>のスプーンがついています。そして、そのまわりには、見たこともないようなすてきなごちそうが、どっさりならんでいます。そのごちそうはまだあたたかで、ホカホカと<ruby><rb>湯気</rb><rt>ゆげ</rt></ruby>をたてています。まるで、たった今、台所からもってきたみたいです。ふたつ目は、自分の知っているお<ruby><rb>祈</rb><rt>いの</rt></ruby>りのなかで、

「神さま。いつでも、わたしたちのお<ruby><rb>客</rb><rt>きゃく</rt></ruby>さまになってくださいませ。アーメン。」

という、いちばん<ruby><rb>短</rb><rt>みじか</rt></ruby>いお祈りを、おおいそぎでとなえました。

そして、さっそく、そのごちそうにかぶりつきました。

おなかがいっぱいになると、ふたつ目は、女の人におそわったとおり、

「メエメエ　やぎさん、テーブルさげて」

と、いいました。

とたんに、テーブルも、それから、テーブルの上にのっていたものも、すーっと<ruby><rb>消</rb><rt>き</rt></ruby>えてしまいました。（まあ、なんて、すてきなお<ruby><rb>給仕</rb><rt>きゅうじ</rt></ruby>ぶりでしょう。）と、ふたつ目は思いました。もう、うれしくてうれしくて、にこにこしていました。

日が<ruby><rb>暮</rb><rt>く</rt></ruby>れてから、ふたつ目は、やぎをつれて帰ってきました。せともののお<ruby><rb>皿</rb><rt>さら</rt></ruby>に、ふたつ目の食事がはいっていました。姉さんと妹がいれておいてくれたのです。でも、今日は、ふたつ目は、それに手をつけませんでした。

あくる日も、ふたつ目は、また、やぎをつれて野原にでました。お<ruby><rb>弁当</rb><rt>べんとう</rt></ruby>にもらってきた、パンのきれっぱしには手をつけないで、そのままにしておきました。

いちどめも、二どめも、姉さんと妹は気がつきませんでした。でも、そういうことがたびたび<ruby><rb>重</rb><rt>かさ</rt></ruby>なると、とうとう、みんなも気がついて、

「ふたつ目ったら、へんねえ。ごはんにちっとも手をつけないわ。今までは、やったものは、なんでも食べてしまったのに。なにかいいものを見つけて、どこかで食べてるのにちがいないわ。」

と、いいました。

こう思うと、ふたりとも、ほんとうのことを知りたくてなりません。

「そうだわ。ふたつ目が、こんど、やぎを野原につれていくとき、あたしがいっしょについていく。」と、ひとつ目がいいました。

ひとつ目は、よく見はっていて、野原でふたつ目がなにをするか、そしてだれか、<ruby><rb>飲</rb><rt>の</rt></ruby>みものや食べものを、もってきてくれる人がありはしないか、見ていようというのです。

ふたつ目が、いつものように野原にでかけようとすると、ひとつ目がそばによってきて、

「あたしも、野原へいっしょに行くよ。おまえがちゃんとやぎの番をして、草をたくさん食べさせているかどうか、見ていてやるよ。」と、いいました。

けれども、ひとつ目がおなかのなかでなにを考えているかは、ふたつ目には、ちゃんとわかっていました。それで、ふたつ目は、やぎを、たけの高い草むらのなかに<ruby><rb>追</rb><rt>お</rt></ruby>いこんでおいてから、

「ねえ、ひとつ目姉さん。ここにすわりましょうよ。あたし、なにか歌をうたってあげるわ。」

と、いいました。

ひとつ目は<ruby><rb>腰</rb><rt>こし</rt></ruby>をおろしました。なれない道を歩いたうえに、お日さまにかんかん<ruby><rb>照</rb><rt>て</rt></ruby>りつけられたので、すっかりくたびれて、ねむくなっていました。ふたつ目は、

「ひとつ目ねえさん、おきてるの。

ひとつ目ねえさん、ねているの」

と、くりかえしくりかえし、うたいました。そのうちに、ひとつ目は、たったひとつしかない目をとじて、ぐうぐう　<ruby><rb>寝</rb><rt>ね</rt></ruby>てしまいました。こうなれば、もうなにをしても、見つけられる<ruby><rb>心配</rb><rt>しんぱい</rt></ruby>はありません。そこで　ふたつ目は、

「メエメエ　やぎさん、テーブルだして」

と、いいました。そして、でてきたテーブルの上のごちそうを、おなかいっぱい、食べたり<ruby><rb>飲</rb><rt>の</rt></ruby>んだりしました。それから、

「メエメエ　やぎさん、テーブルさげて」

と、いいました。すると、あっというまに、なにもかも<ruby><rb>消</rb><rt>き</rt></ruby>えてしまいました。

そこで、ふたつ目は、ひとつ目を<ruby><rb>起</rb><rt>お</rt></ruby>こして、いいました。

「ひとつ目姉さん、あなたはやぎの番をするっていってたのに、ねむってしまったのね。これじゃ、やぎはどこへでもにげられるわよ。もう　ぼつぼつ、うちへ帰りましょうよ。」

それから、ふたりはうちへ帰りました。ふたつ目は、今日も、お<ruby><rb>皿</rb><rt>さら</rt></ruby>には手をつけませんでした。でも、ひとつ目には、ふたつ目がどうしてごはんを食べようとしないのか、わけがわかりません。ですから、ひとつ目は、母親になんにも話すことができませんでした。それで、いいわけをして、

「あたし、野原でねむってしまったの。」と、いいました。

あくる日、母親は、こんどは三つ目にむかって、

「今日は、おまえがいっしょにお行き。ふたつ目が、外でなにか食べるかどうか、そうして、だれか食べものや飲みものをもってきてやるかどうか、よく気をつけて見ているんだよ。こっそり食べたり飲んだりするのに、きまっているんだから。」と、いいました。

そこで、三つ目は、ふたつ目のところへ行って、

「今日は、あたしがいっしょに行くわ。あんたがちゃんとやぎの番をして、草をたくさん食べさせているかどうか、見ているわ。」と、いいました。

けれども、三つ目がおなかのなかで考えていることぐらい、ふたつ目には、ちゃんとわかっています。それで、やぎを、たけの高い草むらのなかに<ruby><rb>追</rb><rt>お</rt></ruby>いこんでおいてから、

「ねえ、三つ目ちゃん。ここにすわろうよ。あたし、なにかうたってあげるわ。」と、いいました。

三つ目は<ruby><rb>腰</rb><rt>こし</rt></ruby>をおろしました。うんと歩いたうえに、お日さまに<ruby><rb>照</rb><rt>て</rt></ruby>りつけられたので、すっかりくたびれて、ねむくなっていました。

ふたつ目は、また、このまえとおなじ歌をうたいはじめました。

「三つ目ちゃん、おきてるの」

ところが、そのつぎに、

「三つ目ちゃん、ねているの」

と、うたわなければいけないのに、つい、うっかりして、

「ふたつ目ちゃん、ねているの」

と、うたってしまいました。そして、それを、なんどもなんども、くりかえして、

「三つ目ちゃん、おきてるの。

ふたつ目ちゃん、ねているの」

と、うたいつづけました。

それを聞いているうちに、三つ目の、三つある目のうち、ふたつはまぶたが<ruby><rb>合</rb><rt>あ</rt></ruby>わさって、ねむってしまいました。ところが、三番めの目だけは、おまじないをかけられなかったものですから、ねむりませんでした。けれども、三つ目は、この目もつぶって、ねむっているようなふりをしました。でも、それは三つ目のはかりごとだったのです。ほんとうは<ruby><rb>細</rb><rt>ほそ</rt></ruby>く目をあけて、なにもかも、ちゃんと見ていたのでした。

ふたつ目のほうでは、三つ目が、ぐっすり<ruby><rb>寝</rb><rt>ね</rt></ruby>てしまったものと思いました。そこで、いつもの<ruby><rb>文句</rb><rt>もんく</rt></ruby>をとなえました。

「メエメエ　やぎさん、テーブルだして」

ふたつ目はテーブルに<ruby><rb>向</rb><rt>む</rt></ruby>かって、すきなだけ、食べたり<ruby><rb>飲</rb><rt>の</rt></ruby>んだりしました。それから、こんどは、テーブルが<ruby><rb>消</rb><rt>き</rt></ruby>えてなくなるように、

「メエメエ　やぎさん、テーブルさげて」

と、いいました。

ところが　三つ目は、なにからなにまで、すっかり見ていたのです。それから、ふたつ目は、三つ目のところへ行って、三つ目を<ruby><rb>起</rb><rt>お</rt></ruby>こして、いいました。

「まあ、三つ目ちゃんたら、<ruby><rb>寝</rb><rt>ね</rt></ruby>てしまったの。さぞ、いい番ができたでしょうねえ。さあ、もううちへ帰りましょうよ。」

こうして、ふたりは家に帰りました。ふたつ目は、今日もまた、なんにも食べません。それを見て、三つ目は母親にいいました。

「あのなまいきなやつが、どうして、なんにも食べないのかわかったわ。あいつったら、野原へ行くとね、やぎにむかって、『メエメエ　やぎさん、テーブルだして』っていうのよ。そうすると、すーっとテーブルがあらわれてくるわ。そのテーブルには、びっくりするくらいのごちそうが、いっぱいならんでるのよ。うちで食べるものなんか、くらべものにもならないわ。

それから、おなかがいっぱいになると、こんどは、『メエメエ　やぎさん、テーブルさげて』っていうの。そうすると、みんな<ruby><rb>消</rb><rt>き</rt></ruby>えてなくなっちまうわ。あたし、ちゃあんと見たんだから。

あいつにおまじないをかけられて、ふたつの目はねむったの。でも、いいぐあいに、ひたいのまんなかの目だけは、ねむらずにいたのよ。」

それを聞くと、母親はねたましい気持ちでいっぱいになりました。で、思わず、

「おまえって子は、あたしたちよりも<ruby><rb>楽</rb><rt>らく</rt></ruby>をしようってのかい。そんなお楽しみをいつまでもさせるもんか。」と、どなりつけました。

母親は、すぐさま、牛や<ruby><rb>羊</rb><rt>ひつじ</rt></ruby>をころす<ruby><rb>包丁</rb><rt>ほうちょう</rt></ruby>をもってきて、やぎの<ruby><rb>心臓</rb><rt>しんぞう</rt></ruby>めがけて、ぐさりとつきさしました。やぎはばったりたおれて、<ruby><rb>死</rb><rt>し</rt></ruby>んでしまいました。それを見ると、ふたつ目は、<ruby><rb>悲</rb><rt>かな</rt></ruby>しくて悲しくてたまりません。<ruby><rb>表</rb><rt>おもて</rt></ruby>にでていって畑の<ruby><rb>畦</rb><rt>あぜ</rt></ruby>にすわって、わあわあ　<ruby><rb>泣</rb><rt>な</rt></ruby>きだしました。

すると、いつかの女の人が、ふいに目のまえにあらわれてきて、

「ふたつ目や。なにを泣いているの。」と、たずねました。

「だって、泣かずにはいられませんもの。あなたの教えてくださった<ruby><rb>文句</rb><rt>もんく</rt></ruby>をとなえますと、あのやぎさんは、毎日　毎日、おいしいごちそうをだしてくれたんですよ。それなのに、そのやぎさんが、お母さんにころされてしまったんですもの。あたし、これからはまた、おなかがすいてすいて、つらい思いをしなくちゃなりません。」

と、ふたつ目は答えました。すると、女の人がいいました。

「ふたつ目や。それでは、あたしがいいことを教えてあげましょう。姉さんと妹にたのんで、ころされたやぎの<ruby><rb>腹</rb><rt>はら</rt></ruby>わたをもらっておいで。そして、それを、門のまえの<ruby><rb>地面</rb><rt>じめん</rt></ruby>のなかにうめなさい。そうすれば、今に、しあわせになれますよ。」

こういうと、女の人の<ruby><rb>姿</rb><rt>すがた</rt></ruby>は消えてしまいました。

そこで、ふたつ目はうちに帰ると、姉さんと妹にむかって、

「ねえ、お<ruby><rb>願</rb><rt>ねが</rt></ruby>い。あたしのやぎのどんなところでもいいから、すこしわけてちょうだい。いいところでなくてもいいわ。腹わただけでいいのよ。」と、いいました。

それを聞くと、姉さんも妹も、にやにやわらって、

「そんなものだけでいいんなら、やるよ。」と、いいました。

こうして、ふたつ目は腹わたをもらいました。そして、夜になると、女の人から<ruby><rb>教</rb><rt>おそ</rt></ruby>わったとおりに、こっそり門のまえにうずめました。

あくる朝、みんないっしょに<ruby><rb>起</rb><rt>お</rt></ruby>きました。みんなで門の外へでてみますと、これはまた、どうしたというのでしょう。それはそれはふしぎな<ruby><rb>美</rb><rt>うつく</rt></ruby>しい木が一本、はえているではありませんか。<ruby><rb>銀</rb><rt>ぎん</rt></ruby>の<ruby><rb>葉</rb><rt>は</rt></ruby>がしげっていて、葉のあいだからは、金のりんごが、キラキラ　光っています。きっと、世界じゅうさがしてみても、こんなに美しくて、<ruby><rb>尊</rb><rt>とうと</rt></ruby>いものはないでしょう。

けれども、こんなところに、こんなりっぱな木が、どうして、ひと<ruby><rb>晩</rb><rt>ばん</rt></ruby>のうちにはえたのでしょう。だれにも、わけがわかりませんでした。ただ、ふたつ目だけは、その木がやぎの<ruby><rb>腹</rb><rt>はら</rt></ruby>わたからはえでたのに、気がつきました。なぜって、その木のはえているところは、ちょうど　ふたつ目が、腹わたをうずめたところでしたもの。そのとき、母親がひとつ目に<ruby><rb>向</rb><rt>む</rt></ruby>かって、

「おまえ、ちょっとのぼって、あの<ruby><rb>実</rb><rt>み</rt></ruby>をとってきておくれ。」と、いいました。

ひとつ目は、さっそく、木にのぼっていきました。ところが、その金のりんごをつかもうとすると、<ruby><rb>枝</rb><rt>えだ</rt></ruby>が、するっと　手からにげていってしまいました。なんどもなんども、やってみましたが、いくらやってもおんなじです。どんなに体をひねってみても、手をのばしてみても、どうしても、りんごはひとつもとれないのです。

そのようすを見ると、母親は、こんどは三つ目に向かって、

「三つ目や。こんどは、おまえがのぼってごらん。おまえなら目が三つもあるから、ひとつ目よりは、まわりがよく見えるだろう。」と、いいました。

そこで、ひとつ目がすべりおりてきて、かわりに、三つ目がのぼっていきました。でも、三つ目も、やっぱり　うまくいきません。三つ目が、どんなにねらいをつけても、金のりんごは、にげていってしまうのです。

とうとう、母親はがまんできなくなって、自分で木にのぼっていきました。けれども、母親も、ひとつ目や三つ目とおんなじです。どうしても、りんごをつかむことができません。

そのとき、そばから、ふたつ目が、

「こんどは、あたしがのぼってみるわ。もしかすると、うまくいくかもしれないから。」

と、いいました。

それを聞くと、姉さんと妹は、

「ふたつ目のおまえなんかに、なにができるもんかい。」と、大きな声でいいました。

でも、ふたつ目は、かまわずにのぼっていきました。と、どうでしょう。金のりんごは、にげるどころではありません。向こうからひとりでに、ふたつ目の手のなかに、はいってくるではありませんか。ふたつ目は、それをつぎつぎともぎとりました。そして、まえかけをいっぱいにして、おりてきました。ところが、母親は、それをみんなとりあげてしまいました。

ほんとうなら、これだけのことをしたのですから、母親もひとつ目も三つ目も、みんなで、このかわいそうなふたつ目を、まえよりも、<ruby><rb>大事</rb><rt>だいじ</rt></ruby>にしてやらなければなりません。それなのに、ふたつ目だけが、りんごをうまくとることができたものですから、ねたましくてたまらないのです。それで、みんなは、まえよりももっと、ふたつ目をいじめるようになりました。

ある日、みんながいっしょに、この木のそばに立っていました。すると、ひとりの<ruby><rb>若</rb><rt>わか</rt></ruby>い<ruby><rb>騎士</rb><rt>きし</rt></ruby>が、通りかかりました。

「ふたつ目、早く　早く、その下におはいり。おまえがいると、あたしたちが<ruby><rb>恥</rb><rt>はじ</rt></ruby>をかくじゃないの。」

ふたりのきょうだいは、こうさけぶと、木のそばにあった<ruby><rb>空</rb><rt>あ</rt></ruby>きだるを、おおいそぎで、ふたつ目の頭の上に、すっぽりとかぶせてしまいました。そして、ふたつ目がもいでおいた金のりんごも、いっしょに　そのなかへおしこみました。

まもなく、騎士が近づいてきました。見ると、それはそれはりっぱな人でした。騎士は馬をとめて、金と<ruby><rb>銀</rb><rt>ぎん</rt></ruby>とでキラキラしている<ruby><rb>美</rb><rt>うつく</rt></ruby>しい木を、うっとりとながめていました。それから、ふたりのきょうだいに<ruby><rb>向</rb><rt>む</rt></ruby>かって、

「この美しい木はだれのものかね。わたしに、これをひと<ruby><rb>枝</rb><rt>えだ</rt></ruby><ruby><rb>折</rb><rt>お</rt></ruby>ってくれれば、ほしいものをなんでも、お<ruby><rb>礼</rb><rt>れい</rt></ruby>にあげよう。」と、いいました。

すると、ひとつ目と三つ目は、すぐに、

「この木はあたしたちのものでございます。ひと枝折ってさしあげましょう。」と、答えました。

ふたりは、すぐに枝を折ろうとしました。ところが、ふたりが、いっしょうけんめい、枝やりんごをつかまえようとしても、そのたびに、枝もりんごもにげていってしまうのです。どうしても、折りとることができません。そのようすを見て、

「この木は、おまえたちのものだということだが、おまえたちに、枝ひとつ折れないというのは、まことにふしぎだな。」と、騎士はいいました。

それでも、ふたりのきょうだいは、

「この木はあたしたちのものでございます。」と、いいはりました。

ところが、ふたりがこんなことをいっているとき、ふたつ目が、たるの下から、金のりんごをふたつ、三つ、外へころがしました。りんごは、騎士の足もとへ、ころころと　ころがっていきました。ひとつ目と三つ目がうそばかりついているので、ふたつ目がおこって、こんなことをしたのです。

りんごを見ると、騎士はびっくりして、たずねました。

「そのりんごは、どこからころがってきたのかね。」

ひとつ目と三つ目は、

「じつは、あたしたちには、もうひとり　きょうだいがおります。ただ、そのものは、ほかのいやしい人間とおなじように、目がふたつしかございません。それで、お目にかけるわけにはまいらないのです。」と、答えました。

けれども<ruby><rb>騎士</rb><rt>きし</rt></ruby>は、そのふたつ目に、ぜひ<ruby><rb>会</rb><rt>あ</rt></ruby>いたいと思いました。それで、

「ふたつ目や。でてきなさい。」と、よびました。

その言葉を聞くと、ふたつ目は<ruby><rb>安心</rb><rt>あんしん</rt></ruby>して、たるのなかからでてきました。

騎士は、ふたつ目がたいそう<ruby><rb>美</rb><rt>うつく</rt></ruby>しいのにびっくりして、

「ふたつ目、おまえなら、この木の<ruby><rb>枝</rb><rt>えだ</rt></ruby>を、<ruby><rb>折</rb><rt>お</rt></ruby>ってくれることができるだろうね。」と、いいました。

「はい、折ってさしあげることができると思います。この木はあたくしのものでございますから。」と、ふたつ目は答えて、木にのぼりました。

そして、美しい<ruby><rb>銀</rb><rt>ぎん</rt></ruby>の<ruby><rb>葉</rb><rt>は</rt></ruby>と、金の<ruby><rb>実</rb><rt>み</rt></ruby>のついている枝を一本、折ってきて、騎士にわたしました。

そこで、騎士はいいました。

「ふたつ目や。お<ruby><rb>礼</rb><rt>れい</rt></ruby>には、なにをあげようかね。」

「あたくしは、朝早くから夜おそくまで、おなかがすいて、のどがかわいてたまりません。そのうえ、<ruby><rb>苦</rb><rt>くる</rt></ruby>しみと<ruby><rb>悲</rb><rt>かな</rt></ruby>しみの、<ruby><rb>絶</rb><rt>た</rt></ruby>えたことがございません。もしも、あなたさまがあたくしをおつれくださって、この苦しみからすくってくださいますなら、どんなにかうれしゅうございます。」

と、ふたつ目は答えました。

そこで、騎士はふたつ目をだきあげて、自分の馬にのせ、父親のお<ruby><rb>城</rb><rt>しろ</rt></ruby>につれて帰りました。

騎士は、ふたつ目に美しい<ruby><rb>服</rb><rt>ふく</rt></ruby>を<ruby><rb>着</rb><rt>き</rt></ruby>せ、すきなだけ、食べたり<ruby><rb>飲</rb><rt>の</rt></ruby>んだりさせました。そればかりではありません。ふたつ目を、すっかり　すきになりましたので、ふたつ目と<ruby><rb>結婚</rb><rt>けっこん</rt></ruby>することにしました。やがて、ふたりのご<ruby><rb>婚礼</rb><rt>こんれい</rt></ruby>の<ruby><rb>式</rb><rt>しき</rt></ruby>があげられました。だれもかれも　おおよろこびでした。

さて、ふたつ目が、美しい騎士につれられていったのを見ると、姉さんと妹は、もう、ふたつ目のしあわせがうらやましくてなりません。

（でも、いいわ。まだ、あのふしぎな木がのこっているんだもの。あの金の実をとることはできないけれど、みんながあの木のまえに立ちどまって、それから、あたしたちのところへやってきて、ほめてくれるわ。今に、あたしたちにだって、<ruby><rb>運</rb><rt>うん</rt></ruby>が<ruby><rb>向</rb><rt>む</rt></ruby>いてくるかもしれないわ。）と、ふたりは考えました。

ところが、あくる朝になってみますと、どうでしょう。その木はかげもかたちもないのです。これで、ふたりののぞみは、だめになってしまいました。

<ruby><rb>一方</rb><rt>いっぽう</rt></ruby>、ふたつ目は、自分の小さな<ruby><rb>部屋</rb><rt>へや</rt></ruby>から、<ruby><rb>表</rb><rt>おもて</rt></ruby>をながめました。と、その木が、お部屋のまえにはえているではありませんか。ふたつ目は、うれしくて、思わずとびあがりました。その木は、ふたつ目のあとに、ついてきたのでした。

ふたつ目は、ながいこと、しあわせに<ruby><rb>暮</rb><rt>く</rt></ruby>らしました。

あるとき、みすぼらしい女がふたり、ふたつ目のお<ruby><rb>城</rb><rt>しろ</rt></ruby>へやってきました。女たちは、

「なんでも、けっこうです。どうか、おめぐみください。」と、お<ruby><rb>願</rb><rt>ねが</rt></ruby>いしました。

ふたつ目は、ふと、その顔をながめました。と、どうでしょう。自分の姉さんのひとつ目と、妹の三つ目ではありませんか。ふたりは、今は、すっかり<ruby><rb>落</rb><rt>お</rt></ruby>ちぶれていました。そこらを歩きまわっては、人の家のお<ruby><rb>勝手</rb><rt>かって</rt></ruby>で、食べものを、めぐんでもらわなければならない<ruby><rb>身</rb><rt>み</rt></ruby>の上に、なっていたのです。

でも、心のやさしいふたつ目は、ふたりを、よろこんでむかえました。そして、いろいろと<ruby><rb>親切</rb><rt>しんせつ</rt></ruby>に、<ruby><rb>世話</rb><rt>せわ</rt></ruby>をしてやりました。ですから、姉さんも妹も、<ruby><rb>若</rb><rt>わか</rt></ruby>いころ、ふたつ目に、さんざんひどいことをしたのを、心から<ruby><rb>後悔</rb><rt>こうかい</rt></ruby>しました。