ある日、お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちのお<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんが　<ruby><rb>庭</rb><rt>にわ</rt></ruby>にでて、じぶんの<ruby><rb>麦</rb><rt>むぎ</rt></ruby>ばたけや　くだものばたけを、ながめていました。

<ruby><rb>麦</rb><rt>むぎ</rt></ruby>は、すくすく　のびています。くだものは、木に　すずなりになっています。やねうらのものおきには、きょねん　とりいれた<ruby><rb>麦</rb><rt>むぎ</rt></ruby>が、山のようにつまれています。はりが、ささえきれないくらいです。

お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうは、こんどは　かちく<ruby><rb>小屋</rb><rt>ごや</rt></ruby>にはいっていきました。なかには、よくふとったお<ruby><rb>牛</rb><rt>うし</rt></ruby>もいます。あぶらののっため<ruby><rb>牛</rb><rt>うし</rt></ruby>もいます。かがみのように　つやつやした<ruby><rb>馬</rb><rt>うま</rt></ruby>もいます。

おしまいに、お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうは、じぶんのへやにもどってきました。こんどは、そこに、いくつもおいてある　<ruby><rb>鉄</rb><rt>てつ</rt></ruby>のはこをながめました。そのはこのなかには、お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>がはいっているのです。

お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうが、こうして　そこにたって、じぶんのもっているものを、うれしそうにながめていたときです。きゅうに、とんとんと、はげしく　<ruby><rb>戸</rb><rt>と</rt></ruby>をたたく<ruby><rb>音</rb><rt>おと</rt></ruby>がきこえました。

でも、それは、へやの<ruby><rb>戸</rb><rt>と</rt></ruby>を　たたく<ruby><rb>音</rb><rt>おと</rt></ruby>ではありません。お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうの<ruby><rb>心</rb><rt>こころ</rt></ruby>の<ruby><rb>戸</rb><rt>と</rt></ruby>を、たたく<ruby><rb>音</rb><rt>おと</rt></ruby>だったのです。<ruby><rb>心</rb><rt>こころ</rt></ruby>の<ruby><rb>戸</rb><rt>と</rt></ruby>は、すぐに　あきました。

おやっ、だれかが　お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうによびかける<ruby><rb>声</rb><rt>こえ</rt></ruby>が、きこえます。

「おまえは、そんなに　たくさんのものをもっていながら、それをつかって、うちのものに　しんせつにしてやったことがあるかね。

まずしい人たちがこまっているときに、たすけてやったことがあるかね。おなかのへっている人に、じぶんのパンを　わけてやったことがあるかね。

おまえは、じぶんのもっているものだけで、まんぞくしていたかね。それとも、もっともっと　ほしいと、おもったかね。」

お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちの<ruby><rb>心</rb><rt>こころ</rt></ruby>は、たちどころに、こう　こたえました。

「わたしは、なさけしらずの　ひどい男でした。うちのものにも、いちども　よいことをしてやったことは、ありません。まずしい人がくると、そっぽをむいてしまいました。

<ruby><rb>神</rb><rt>かみ</rt></ruby>さまのことは、かんがえたこともありません。ただ、じぶんのものをふやそうとして、むがむちゅうでした。この<ruby><rb>世</rb><rt>よ</rt></ruby>の中のものが、ぜんぶ、わたしのものだったとしても、まだまだ　たりないような<ruby><rb>気</rb><rt>き</rt></ruby>もちだったでしょう。」

お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうは、この<ruby><rb>心</rb><rt>こころ</rt></ruby>のへんじをきくと、すっかり　こわくなりました。ひざが、がたがた　ふるえてきました。もう、たってはいられません。その<ruby><rb>場</rb><rt>ば</rt></ruby>に、べったり　すわりこんでしまいました。

そのとき、またもや、とんとんと　<ruby><rb>戸</rb><rt>と</rt></ruby>をたたく<ruby><rb>音</rb><rt>おと</rt></ruby>がしました。

でも　こんどは、へやの<ruby><rb>戸</rb><rt>と</rt></ruby>をたたく音でした。

おとなりの人がやってきたのです。その人はびんぼうでした。ところが、子どもがたくさんいるので、<ruby><rb>今</rb><rt>いま</rt></ruby>は、その子どもたちに、ごはんも　ろくろく　たべさせてやることができない　ありさまでした。

（おとなりは<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちだ。しかし、なさけをしらない男だ。それは、おれも　ちゃんと　しっている。たぶん、おれをたすけてはくれないだろう。しかし、うちの子どもたちは、パンをほしがって　ないている。しかたがない。おもいきって　たのんでみよう。）

びんぼうな人は、こう　かんがえて、お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちのところへ　やってきたのです。

「あなたは、ごじぶんのものを、そうかんたんには　くださらないかたです。しかし、わたしは、もう、どうにも　ならなくなっているのです。子どもたちは　はらぺこでいます。どうか、<ruby><rb>麦</rb><rt>むぎ</rt></ruby>を六キログラムばかり、かしてください。」

と、びんぼうな人はたのみました。

お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちは、ながいこと、まずしい男の<ruby><rb>顔</rb><rt>かお</rt></ruby>をみつめていました。

そのうちに、お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちの<ruby><rb>心</rb><rt>こころ</rt></ruby>のなかに、ようやく　やさしいお日さまのひかりが、さしてきました。けちんぼでかたまっていた　<ruby><rb>心</rb><rt>こころ</rt></ruby>のこおりが、ひとしずくずつ　とけはじめたのです。

「おまえに、たった　六キログラムばかりかすのは、ごめんだよ。十二キログラムなら、ただであげよう。そのかわり、ひとつ　たのみがあるがね。」

と、お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちはこたえました。

「どんなことをすれば　いいんですか。」

と、まずしい男はたずねました。

「わたしが<ruby><rb>死</rb><rt>し</rt></ruby>んだら、わたしのおはかで、三ばんのあいだ　<ruby><rb>番</rb><rt>ばん</rt></ruby>をしてもらいたいんだよ。」

お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちから、こう　いわれると、びんぼうなお<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんは、なんだか　うすきみわるくなりました。でも、<ruby><rb>今</rb><rt>いま</rt></ruby>は、こまりきっているのです。なんでも　しょうちするよりほか、ありません。

びんぼうなお<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんは、お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちのいうとおりに　やくそくをして、<ruby><rb>麦</rb><rt>むぎ</rt></ruby>をもらって、<ruby><rb>家</rb><rt>いえ</rt></ruby>にかえりました。

お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちは、まるで、さきにおこることを、ちゃんと　しっていたみたいです。

<ruby><rb>三日</rb><rt>みっか</rt></ruby>たつと、ぽっくり　<ruby><rb>死</rb><rt>し</rt></ruby>んでしまったのです。どうして、そんなに　きゅうに　<ruby><rb>死</rb><rt>し</rt></ruby>んだのかは、だれにもわかりませんでした。でも、お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちのために　かなしむ人は、ひとりもありませんでした。

お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちが　おはかにうめられたとき、びんぼうな男は、あのやくそくのことをおもいだしました。できれば、そんなやくそくは　とりけしにしてもらいたいところです。

でも、まずしい男は、こう　かんがえました。

（あの人は、わたしには　しんせつにしてくれた。あの人が<ruby><rb>麦</rb><rt>むぎ</rt></ruby>をくれたから、はらぺこの子どもたちも、おなかいっぱい　たべられたんじゃないか。それに、そういうことがなくても、いったん　やくそくしたことは、どこまでも　まもらなくちゃいけない。）

日がくれると、びんぼうな男は、ぼちへでかけていきました。そして、土をまるくもった　おはかの上に、こしをおろしました。あたりは、しーんと　しずまりかえっています。ただ、お<ruby><rb>月</rb><rt>つき</rt></ruby>さまが、おはかをてらしているばかりです。

ときどき、ふくろうが　そばをとんでは、かなしそうな<ruby><rb>声</rb><rt>こえ</rt></ruby>でないています。

お日さまがのぼると、まずしい男は、なにごともなく　ぶじに　<ruby><rb>家</rb><rt>いえ</rt></ruby>にかえってきました。

<ruby><rb>二日</rb><rt>ふつか</rt></ruby>めのばんも、おなじように、おだやかにすみました。

<ruby><rb>三日</rb><rt>みっか</rt></ruby>めのばんは、おはかへいかないうちから、なんだか、<ruby><rb>気</rb><rt>き</rt></ruby>にかかってしかたがありません。どうも、なにか　わるいことがおこりそうなのです。

おはかにいってみると、ぼちのへいのところに、みたこともない男が　ひとり、たっていました。男は、もう　わかくはありません。<ruby><rb>顔</rb><rt>かお</rt></ruby>には、きずあとがいっぱいあります。目はするどく、火のようにもえていて、あたりを　ぎろぎろ　にらみまわしています。男は、ふるいマントを　すっぽり　かぶっています。<ruby><rb>足</rb><rt>あし</rt></ruby>にはいている、<ruby><rb>馬</rb><rt>うま</rt></ruby>にのるときの　ながぐつだけしかみえません。

「おまえさん。そんなところで、なにをさがしているんだね。こんな　さびしいぼちにいて、こわくはないのかい。」

と、びんぼうなお<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんは、その男にはなしかけました。

「なにもさがしちゃいない。だが、なにもこわくもない。ほれ、わかい男が、ぞっとすることをおぼえたくて　たびにでたが、けっきょくは　むだだったって　はなしがあるだろ。おれは、そのわかい男みたいなもんさ。

もっとも、そのわかいのは、<ruby><rb>王</rb><rt>おう</rt></ruby>さまのおひめさまを　およめさんにもらって、おまけに、ものすごくたくさんの<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>も　手にいれたが、おれのほうは、<ruby><rb>年</rb><rt>ねん</rt></ruby>から<ruby><rb>年</rb><rt>ねん</rt></ruby>じゅう　びんぼうさ。じつをいや、おれは、これでも、もとは　へいたいだった。こんやは、よそへいってもとまるところがないから、ここで　<ruby><rb>夜</rb><rt>よ</rt></ruby>をあかそうってわけさ。」

と、その　へいたいだったという男は、こたえました。

「おまえさん。こわくないんなら、おれは、これから　あのおはかの<ruby><rb>番</rb><rt>ばん</rt></ruby>をするところだが、そばにいて　手つだってくれないかい。」

と、まずしいお<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんはいいました。

「<ruby><rb>番</rb><rt>ばん</rt></ruby>をするのは　へいたいのやくめだ。ようし、いいことだろうと　わるいことだろうと、たとえ　なにがおこっても、ふたりでいっしょに　ひきうけようぜ。」

と、へいたいはこたえました。

「たのんだぜ。」

びんぼうなお<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんは、こう　いって、へいたいといっしょに、おはかの上にこしをおろしました。あたりは、しーんと　しずまりかえっていました。

ところが、まよなかになると、きゅうに、ヒューヒュー　という　すさまじい<ruby><rb>音</rb><rt>おと</rt></ruby>が、<ruby><rb>空</rb><rt>そら</rt></ruby>になりひびきました。と、おもうまもなく、<ruby><rb>番</rb><rt>ばん</rt></ruby>をしているふたりの目のまえに、あくまが、すがたをあらわしました。

「やい。そこをどけ　ごろつきども。そのはかのなかにいるやつは　おれのものだ。おれは、そいつをつれにきたんだ。どかないと、きさまの<ruby><rb>首</rb><rt>くび</rt></ruby>ったまを　ねじるぞ。」

と、あくまは、ふたりに　どなりつけました。

「おっと　まった。<ruby><rb>赤</rb><rt>あか</rt></ruby>い<ruby><rb>羽</rb><rt>はね</rt></ruby>のだんなよ。あんたは、おれの<ruby><rb>隊長</rb><rt>たいちょう</rt></ruby>じゃあない。だから、あんたのいうことなんか　きかなくってもいいのさ。いいか、おれはな、こわいってことをしらない男だ。さあ、とっとと　かえんな。おれたちゃ、ここにすわったがさいご、うごかないんだからな。」

と、へいたいはいいました。

（こいつらみたいな　くずどもには、<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>をやるのがいちばんいい。）

と、あくまはかんがえました。そこで、きゅうに、ことばをやさしくして、いかにもなれなれしそうに　さそいかけました。

「おまえさんたち。さいふにいっぱい　<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>をいれてあげるから、それをもらって、うちへかえったら　どうだい。」

「ふん、なるほど。だが、さいふにいっぱいの<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>くらいじゃ　しようがない。おれのながぐつのかたっぽうに　はいるだけの<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>を、くれるっていうんなら、おとなしく　ひきあげてもいい。」

と、へいたいはこたえました。

「そんなに　たくさんの<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>は、<ruby><rb>今</rb><rt>いま</rt></ruby>、ここにもっていない。しかし、とってこよう。となりの<ruby><rb>町</rb><rt>まち</rt></ruby>に、<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>をとりかえるのを　しょうばいにしている男がいる。そいつは、おれの<ruby><rb>友</rb><rt>とも</rt></ruby>だちで　なかよしだから、きっと、それくらいの<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>なら　だしてくれるだろう。」

と、あくまはいいました。

あくまが　すがたをけすと、へいたいは、<ruby><rb>左</rb><rt>ひだり</rt></ruby>のながぐつをぬいで、いいました。

「おい、あの<ruby><rb>炭</rb><rt>すみ</rt></ruby>やきやろうを　うまく　やっつけてやろうぜ。とっつぁん、おまえさんのナイフを　かしてくれよ。」

へいたいは、ながぐつのそこを　ナイフできりとりました。それから、ながぐつを、おはかのそばの、草ぼうぼうの　みぞのふちにおきました。

「これで　よしと。さあ、えんとつそうじやろうめ。いつでもこい。」

と、へいたいはいいました。

ふたりは、そこに　こしをおろして、まっていました。まもなく、あくまがやってきました。みると、<ruby><rb>手</rb><rt>て</rt></ruby>に、<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>をいれた　小さなふくろをもっています。

「さあ、このなかに、ざーっと　あけてくれよ。」

へいたいは、こう　いいながら、ながぐつを、ちょっと　もちあげました。そして、

「だがな、それだけじゃ　たりないだろうぜ。」と、つけたしました。

あくまは、ふくろがからになるまで、<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>を　ながぐつのなかにあけました。ところが、<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>は、ながぐつをするりとぬけて、どんどん　下におっこちてしまいます。ながぐつは、いつまでたっても　からっぽです。

「まぬけあくまめ。そうれ　たりない。たった<ruby><rb>今</rb><rt>いま</rt></ruby>、おれがいったばかりじゃないか。もういっぺん　ひきかえして、もっと　たくさん　とってきな。」

と、へいたいはどなりつけました。

あくまは、へんだなあ　というように、<ruby><rb>頭</rb><rt>あたま</rt></ruby>をふりました。けれども、また、どこかへいきました。一じかんばかりして、あくまはもどってきました。みると、こんどは、さっきのよりも　ずっと　大きなふくろを、うでにかかえています。

「さあ、いっぱいいれな。だが、それだけじゃ、ながぐつはいっぱいになるまいよ。」

と、へいたいはどなりました。

<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>は、チャリン　チャリン　<ruby><rb>音</rb><rt>おと</rt></ruby>をたてて、ながぐつのなかにながれこみました。ところが、ながぐつは、いつまでたっても　からっぽです。あくまは、火のような目を　ギョロギョロさせて、じぶんで、ながぐつのなかをのぞいてみました。

と、どうでしょう。ほんとうに　からっぽです。

「おまえは、とんでもなく　でかい<ruby><rb>足</rb><rt>あし</rt></ruby>をしているんだなあ。」

と、さけんで、口をゆがめました。

「それじゃ　おまえは、おれも、じぶんとおんなじに　<ruby><rb>馬</rb><rt>うま</rt></ruby>の<ruby><rb>足</rb><rt>あし</rt></ruby>をしている、とおもってるのか。いったい　おまえは、いつから　そんなに　けちんぼになったんだ。さあ、もっと<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>をもってきな。でなきゃ、このとりひきはやめにするぞ。」

と、へいたいはいいました。

あくまは、またも、ちょこちょこ　はしっていきました。こんどは、なかなか　もどってきません。ようやく、すがたをあらわしました。おもそうなふくろを　かたにかついで、はーはー　いきをきらしています。

あくまは、ふくろのなかの<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>を、またまた　ながぐつのなかにあけました。けれども、ながぐつは、やっぱり　まえとおんなじで、ちっとも　いっぱいにはなりません。あくまは、かんかんに　おこりました。いきなり、へいたいの<ruby><rb>手</rb><rt>て</rt></ruby>から、ながぐつをひったくろうとしました。

ちょうど　そのとき、<ruby><rb>朝</rb><rt>あさ</rt></ruby>のお日さまのひかりが、<ruby><rb>空</rb><rt>そら</rt></ruby>に　ぱっと　さしました。と、あくまは、きゃっ　とさけんだかとおもうと、いちもくさんに　にげていってしまいました。おかげで、おはかのなかの　お<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>もちのあわれなたましいは、あくまに　とられないですんだのです。

まずしいお<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんは、山のような<ruby><rb>金貨</rb><rt>きんか</rt></ruby>を　へいたいとわけようとしました。ところが、へいたいは、こう　いいました。

「おれのぶんは、びんぼうな人たちに　やってくれ。おれは、おまえさんのうちへ　いくよ。おれたちは、のこりの<ruby><rb>金</rb><rt>かね</rt></ruby>で、<ruby><rb>神</rb><rt>かみ</rt></ruby>さまの　きめてくださったあいだだけ、なかよく　のんびり、くらそうじゃないか。」