Soranoha

きつねと 馬

きつねと うま

グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール、グリム ヴィルヘルム・カール

あるお百ひゃくしょうが、とても よくはたらく 一とうの馬うまをもっていました。

ところが、馬うまは、だんだん 年としをとって、とうとう はたらくことができなくなりました。すると、しゅじんは、たべものをやるのが、いやになりました。

「おまえは、もう、やくにはたたなくなった。それは、わしにも よくわかっているが、しかし わしは、おまえを かわいくおもっている。だから もしも、おまえが、まだここへ ライオンをつれてくるだけの 力をもっているのなら、かっておいてやることにしよう。だが、ひとまず、この馬小屋うまごやからでていってくれ。」

こう いって、お百ひゃくしょうは、馬うまを、ひろい野原のはらへ おいだしてしまいました。

馬うまは、しょんぼりと、森もりのほうへあるいていきました。森もりへいけば、雨あめや風かぜを、いくらかはふせげるだろう、とおもったのです。

とちゅうで、きつねにであいました。きつねは、馬うまにたずねました。

「おまえさん、なんだって、そんなにうなだれて、さびしそうに あるいてるんだね。」

「ああ、あ。よくばりこんじょうってものは、やりきれんよ。いくら、こっちが、ま心ごころをこめて つくしてきても、どうしようもないんだからなあ。

おれは、なが年ねんのあいだ、しゅじんのいうとおりに、いっしょうけんめい はたらいてきた。

そりゃあ 今いまは、はたけ仕事しごとはできないさ。しかし、しゅじんときたら、おれを、さんざん はたらかせてきたくせに、そのこともわすれちまって、くいものをくれるのがいやで、おれをおいだしちまったんだ。」

と、馬うまははなしました。

「なぐさめてもくれないでかね。」と、きつねがたずねました。

「いんや。そのなぐさめかたが、また ひどいんだ。なにしろ、おれが、しゅじんのところへ、ライオンをつれてくるぐらい つよければ、かっておいてやろうって いうんだからな。おれに、そんなことができっこないぐらい、わかりきってるくせになあ。」

と、馬うまはこたえました。

「ようし、おれが手てだすけしてやるよ。おまえさんは、そこへねころがって 手足てあしをのばしていたまえ。ぴくりとも うごくんじゃないよ。死しんだようにしてるんだぜ。」

と、きつねがいいました。

馬うまは、きつねにいわれたとおり、ごろりと そこにねころびました。

きつねは、ちかくのほらあなにいる ライオンのところへいって、

「おもてに、死しんだ馬うまがいますよ。でてごらんなさい。うまいごちそうにありつけますよ。」

と、いいました。

ライオンは、きつねといっしょに でていきました。

馬うまのそばまでくると、きつねは、ライオンにいいました。

「ここじゃ、気きらくにたべられませんね。よかったら、わたしが、この馬うまのしっぽを、あなたの体からだに しばりつけてあげますよ。そうすりゃ、あなたは、この馬うまを ほらあなのなかへひきずりこんで、ゆっくり たべられるってわけですよ。」

ライオンは、たしかに いいかんがえだ、とおもいました。そこで、きつねが、じぶんに、馬うまを しっかり むすびつけることができるように、じっと たっていました。

ところが、きつねは、馬うまのしっぽで、ライオンの足あしを ぐるぐるまきにしてしまったのです。しかも、ライオンが、どんなに力をふりしぼっても ちぎれないように、ぎゅっとむすんでしまったのです。

この仕事しごとをおえると、きつねは、馬うまのかたをたたいて、

「そうれ いけ。そうれ いけ。」と、いいました。

とたんに、馬うまははねおきて、ライオンをひきずったまま はしりだしました。

ライオンは、ウオー ウオーと、すさまじい声こえで ほえたてました。森もりの鳥とりという鳥とりが、こわがって とびたちました。けれども、馬うまは、ライオンがほえたてても おかまいなしです。野原のはらをこえて しゅじんの家いえの戸口とぐちまで、ライオンをひきずっていきました。

しゅじんも、それをみると、かんがえをかえて、

「おまえは、うちにおいて だいじにしてやろう。」と、いいました。

こうして、馬うまは、死しぬまで おなかいっぱい たべさせてもらいました。

底本 / Source edition

底本:「グリムの昔話(1)野の道編」童話館出版
2000(平成12)年10月20日第1刷発行
2014(平成26)年8月20日第14刷発行
底本の親本:「グリム童話全集 3 おおかみと七ひきの子やぎ」実業之日本社
1963(昭和38)年
※表題は底本では、「きつねと 馬《うま》」となっています。
入力:sogo
校正:木下聡
2024年8月21日作成
青空文庫作成ファイル:
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TEI
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール、グリム ヴィルヘルム・カール「きつねと 馬」(新字新仮名)、底本『グリムの昔話(1)野の道編』童話館出版、2000年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 061533_001091, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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