むかし　むかし、おおかみが、きつねを、じぶんのうちにおいていました。

きつねは、<ruby><rb>動物</rb><rt>どうぶつ</rt></ruby>のなかでも、たいへんよわい　けものでした。ですから、おおかみのいうことは、なんでも、きかなければなりませんでした。きつねは、なんとかして、このしゅじんのところから　にげだしたいと、おもっていました。

ある日のこと、きつねとおおかみは、ふたりで　<ruby><rb>森</rb><rt>もり</rt></ruby>のなかをあるいていました。

そのとき、おおかみがいいだしました。

「おい、あかぎつね。なにか　たべるものをもってこい。さもないと、おまえを　ガリガリ　たべちまうぞ。」

すると、きつねがこたえました。

「わたしは、子ひつじが二、三びきいる　<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうやをしっています。もし、おのぞみでしたら、そいつを一ぴき、とったらどうでしょう。」

おおかみは<ruby><rb>気</rb><rt>き</rt></ruby>にいりました。そこで、ふたりででかけていきました。

きつねは、子ひつじを　こっそり　ぬすみだして、おおかみのところへもってきました。そして、じぶんは、そのまま　さっさと、いってしまいました。おおかみは、ぺろりとごちそうをたいらげました。でも、まだまだ　たりません。ほかのも　ほしくなりました。そこで、ほかのもちょうだいしに、のこのこ　でかけていきました。

ところが、おおかみのやりかたは、へたくそです。たちまち、子ひつじのお母さんに、みつかってしまいました。子ひつじのお母さんは、<ruby><rb>大声</rb><rt>おおごえ</rt></ruby>をはりあげて　なきわめきました。それを　お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんたちがききつけて、とんできました。

みんなは、おおかみをみつけると、さんざんに　ぶったたきました。おかげで、おおかみは　<ruby><rb>足</rb><rt>あし</rt></ruby>をひきずり、ヒーヒー　なきながら、きつねのところへもどってきました。

「やい、きさま、よくも　おれをだましたな。おれは、ほかの子ひつじも　さらってこようと、おもったんだ。そしたら、<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうどもにとっつかまってな。このとおり、<ruby><rb>体</rb><rt>からだ</rt></ruby>がぐにゃぐにゃになるまで、ぶちのめされたぞ。」

と、おおかみはいいました。

「あんたは、どうして、そう、くいしんぼうなんでしょうねえ。」

と、きつねはこたえました。

あくる日、ふたりは、また　<ruby><rb>野原</rb><rt>のはら</rt></ruby>へでかけました。

くいしんぼうのおおかみが、またもや　いいだしました。

「おい、あかぎつね。なにか　たべるものをもってこい。さもないと、おまえを　ガリガリ　たべちまうぞ。」

すると、きつねはこたえました。

「わたしは、ある<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうやをしってるんですがね。そこのおかみさんが、こんや、たまごパンをやきます。そいつを　とってやりましょうよ。」

ふたりはでかけていきました。きつねは、<ruby><rb>家</rb><rt>いえ</rt></ruby>のまわりを、こそこそ　あるきまわりました。ながいこと、のぞいてみたり　くんくん　かいでみたりしてから、ようやく　おさらのあるところを、みつけました。きつねは、そのおさらから、たまごパンを　<ruby><rb>六</rb><rt>むっ</rt></ruby>つだけひきずりおろして、おおかみのところへもってきました。

「さあ、ごちそうをもってきましたよ。」

と、きつねは、おおかみにいって、じぶんは、さっさと　いってしまいました。

おおかみは、たまごパンを　<ruby><rb>六</rb><rt>むっ</rt></ruby>つとも、あっというまに　のみこんでしまいました。

「もっと、くいたいなあ。」

おおかみは　そう　いうと、こんどは、ひとりででかけていきました。

ところが、おおかみときたら、たまごパンを、おさらにはいったまま　ひきずりおろしたのです。さあ、たまりません。おさらは下におっこちて、こなごなに　われてしまいました。

ガラガラ　ピシャン　という　すさまじい<ruby><rb>音</rb><rt>おと</rt></ruby>に、おかみさんがとびだしてきました。

おかみさんは、おおかみのすがたをみると、<ruby><rb>大声</rb><rt>おおごえ</rt></ruby>で、男たちをよびました。男たちはすっとんできて、おもいっきり、おおかみをたたきのめしました。で、おおかみは、<ruby><rb>足</rb><rt>あし</rt></ruby>をひきずり　ワーワー　なきながら、<ruby><rb>森</rb><rt>もり</rt></ruby>のなかの　きつねのところへ、もどってきました。

「やい、きさまは、おれをひどいめにあわしたな。<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうどもが、おれをとっつかまえて、さんざっぱら　なぐったんだぞ。」

と、おおかみはどなりました。

「あんたは、なんて、くいしんぼうなんでしょうねえ。」

とだけ、きつねはいいました。

三日めです。ふたりは、また　そろってでかけました。おおかみは、きょうは、<ruby><rb>足</rb><rt>あし</rt></ruby>をひきずりひきずり、やっと　あるいているありさまです。

それでいながら、また　いいだしました。

「おい、あかぎつね。なにか　たべるものをもってこい。さもないと、おまえを　ガリガリ　たべちまうぞ。」

すると、きつねはこたえました。

「わたしは、ある男をしってるんですがね。その男は　<ruby><rb>動物</rb><rt>どうぶつ</rt></ruby>をころしましてね。しおづけにした<ruby><rb>肉</rb><rt>にく</rt></ruby>を　たるにつめて、あなぐらにしまっているんですよ。そいつをとってきましょうよ。」

けれども、おおかみは、こんどは　こう　いいました。

「それじゃ、おれも　いっしょにいく。おれがにげられなくなったら　おまえに　たすけてもらえるようにな。」

「どうぞ、おすきなように。」

と、きつねはいって、おおかみに、ぬけ<ruby><rb>道</rb><rt>みち</rt></ruby>やら　ちか<ruby><rb>道</rb><rt>みち</rt></ruby>やらを、おしえました。

ふたりは、そこをとおって、ようやく　あなぐらのなかへ　はいりこみました。みると、<ruby><rb>肉</rb><rt>にく</rt></ruby>が　うんとこさ　あります。おおかみは、ものをもいわず　かぶりつきました。

（こいつをかたづけるには、じかんがかかるな。）

と、おおかみはおもいました。

きつねも、うまそうにたべました。けれども、しょっちゅう、あたりを　きょろきょろみまわしていました。そのあいだには、ときどき、さっきとおってきた　あなのところへいって、じぶんの<ruby><rb>体</rb><rt>からだ</rt></ruby>が、まだ　とおりぬけられるかどうかを、ためしていました。

それをみて、おおかみがいいました。

「やい、きつね。いったい　なんだって、そんなに、あっちへうろうろ　こっちへうろうろ、とびだしてったり　とびこんできたりしているんだ。」

「だれかきやしないか、よく　みはってないと、いけませんからね。」

と、きつねはこたえました。そして、つけくわえて、いいました。

「それより、あんまり　たべすぎないほうがいいですよ。」

けれども、おおかみはいいました。

「このたるを　からっぽにするまでは、ここを　うごきやしないぞ。」

そうしているうちに、お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんが、きつねのとびはねる<ruby><rb>音</rb><rt>おと</rt></ruby>を　ききつけて、あなぐらへやってきました。きつねは、お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんをみると、ピョンと　ひととび　はねて、あなから　にげていってしまいました。

おおかみも、あわてて　ついていこうとしました。ところが、あんまりたべすぎて、おなかが　ぱんぱんにふくれています。はいってきたときのあなを、とおりぬけることができません。<ruby><rb>体</rb><rt>からだ</rt></ruby>がひっかかって、ぬけなくなってしまいました。

お<ruby><rb>百</rb><rt>ひゃく</rt></ruby>しょうさんは、まるたんぼうをつかんできて、おおかみを、なぐってなぐって　なぐりころしてしまいました。

きつねは、<ruby><rb>森</rb><rt>もり</rt></ruby>のなかへ　とんでかえりました。こちらは、くいしんぼうの　じいさんおおかみから、うまく　にげだすことができて、おおよろこびでした。