銅とスズとの合金が立つてゐる。
どんな造型が行はれようと
無機質の圖形にはちがひがない。
はらわたや粘液や脂や汗や生きものの
きたならしさはここにない。
すさまじい十和田湖の圓錐空間にはまりこんで
天然四元の平手打をまともにうける
銅とスズとの合金で出來た
女の裸像が二人
影と形のやうに立つてゐる。
いさぎよい非情の金屬が青くさびて
地上に割れてくづれるまで
この原始林の壓力に堪へて
立つなら幾千年でも默つて立つてろ。
とわだこのらぞうにあたう
高村 光太郎
銅とスズとの合金が立つてゐる。
どんな造型が行はれようと
無機質の圖形にはちがひがない。
はらわたや粘液や脂や汗や生きものの
きたならしさはここにない。
すさまじい十和田湖の圓錐空間にはまりこんで
天然四元の平手打をまともにうける
銅とスズとの合金で出來た
女の裸像が二人
影と形のやうに立つてゐる。
いさぎよい非情の金屬が青くさびて
地上に割れてくづれるまで
この原始林の壓力に堪へて
立つなら幾千年でも默つて立つてろ。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c高村 光太郎「十和田湖の裸像に与ふ」(旧字旧仮名)、底本『婦人公論 第三十八巻第一号』中央公論社、1954年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 061060_001168, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079