Soranoha

竹の皮の飴包み

たけのかわのあめづつみ

中野 鈴子

どのお菓子屋の店先もくじを当てる時のような人だかり

露店商人らは 飴市に限って軒を並べない

町の角 角に

雪があれば 雪の上

土が見えれば板を敷き

白木造りの大きな桶に 飴を山盛りにする

飴は大きな かたまり

コハク色を帯びて

黒ゴマがふりかかっている

小さな城下町

小一里向こうに国境の山々がずっとつらなる

北陸の丸岡の町に

年に一度 飴市がたつ

二月はじめのこの日は 毎年吹雪く

一里四方の村じゅうの家が

飴市へ 飴市へ出かけてゆく

飴売りも 飴買う人も 雪にたたかれ

人の絶え間がない

雪は 飴の上にも消えてゆく

飴売りは 出刃ぼうちょうで

カンカンと 飴の山をくずす

かたい飴のかけらが 雪にまじってはじく

飴は幅のひろいひろい竹の皮に包んでくれる

竹の皮の飴包み

家では みんな待っている

ワラグツが ゴムグツに

からかさが オーバーに

帰りは 電車にのっても

竹の皮の飴包み

昔古来の飴包み

今日は丸岡のアメ市じゃ アメ市じゃ

年寄りは子供にかえり

子供らは年寄りの言葉を受けて

「米で作ったアメじゃ これが本当のアメじゃ……」

孫も子も 口いっぱいにほおばってゆく

底本 / Source edition

底本:「中野鈴子全詩集」フェニックス出版
1980(昭和55)年4月30日初版発行
底本の親本:「中野鈴子全著作集 第一巻」ゆきのした文学会
1964(昭和39)年7月10日発行
入力:津村田悟
校正:かな とよみ
2025年5月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

この表示について / About this rendering

記録は下にリンクした署名済みの TEI ファイルです。このページはそれを読むための一つの形です。読みが複数ある箇所は一つだけを本文に示し、もう一方は語の title に残しています。 / The record is the signed TEI file linked below. This page is one way of reading it. Where the text has more than one reading, the page shows one of them and keeps the other on the word itself, in its title text.

リリース / Release
913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c
TEI
/works/061048_001637/tei
プレーンテキスト / Plain text
/works/061048_001637/plaintext
書誌 / Bibliography
/works/061048_001637/

中野 鈴子「竹の皮の飴包み」(新字新仮名)、底本『中野鈴子全詩集』フェニックス出版、1980年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 061048_001637, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite