母の胸には 無数の血さへにじむ爪の跡!
あるひは赤き打撲の傷の跡!
投石された傷の跡! 歯に噛まれたる傷の跡!
あゝそれら痛々しい赤き傷は
みな愛児達の生存のための傷である!
忘れられぬ乳房はもはや吸ふべきものでない
転居の後の如く荒れすたれ
あゝ 愛はすでに終了されたのだ!
さるを今 ふたゝび母の胸を蹴る!
新らしき世紀の恋人のため!
新らしき世界に青年たるため!
あゝ われ等は古き父の遺跡を
見事に破壊するを主義とする!
あいはしゅうりょうされ
萩原 恭次郎
母の胸には 無数の血さへにじむ爪の跡!
あるひは赤き打撲の傷の跡!
投石された傷の跡! 歯に噛まれたる傷の跡!
あゝそれら痛々しい赤き傷は
みな愛児達の生存のための傷である!
忘れられぬ乳房はもはや吸ふべきものでない
転居の後の如く荒れすたれ
あゝ 愛はすでに終了されたのだ!
さるを今 ふたゝび母の胸を蹴る!
新らしき世紀の恋人のため!
新らしき世界に青年たるため!
あゝ われ等は古き父の遺跡を
見事に破壊するを主義とする!
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 恭次郎「愛は終了され」(新字旧仮名)、底本『日本の詩歌 26 近代詩集』中央公論社、1970年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 060965_000725, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079