とある家の垣根から

<ruby><rb>蔓</rb><rt>つる</rt></ruby>草がどんなにやさしい手をのばしても

あの雲をつかまえることはできない

遠いのだ

あんなに手近にうかびながら

とある木の<ruby><rb>梢</rb><rt>こずえ</rt></ruby>の

終りの<ruby><rb>蝉</rb><rt>せみ</rt></ruby>がどんなに小さく鳴いていても

すぐそれがわきかえるような激しさに変る

鳴きやめたものがいつせいに目をさますのだ

町の曲り角で

田舎みちの踏切で

私は立ち止つて自分の影を踏む

太陽がどんなに遠くへ去つても

あの日石畳に刻みつけられた影が消えてしまつても

私はなお強く　濃く　熱く

今<ruby><rb>在</rb><rt>あ</rt></ruby>るものの影を踏みしめる