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        <title type="main" xml:lang="ja">スザナの物語</title>
        <title type="reading" xml:lang="ja-Hira">スザナのものがたり</title>
        <title type="sub" xml:lang="ja">――経典外聖書――</title>
        <title type="sub-reading" xml:lang="ja-Hira">――けいてんがいせいしょ――</title>
        <title type="original">THE HISTORY OF SUSANNA</title>
        <author><persName xml:lang="ja"><surname>作者不詳</surname><idno type="aozora-person-id">001529</idno></persName><persName xml:lang="ja-Hira"><surname>さくしゃふしょう</surname></persName><persName xml:lang="ja-Latn"><surname>Sakushafusho</surname></persName></author>
        <respStmt><resp>翻訳者</resp><persName xml:lang="ja"><surname>村崎</surname><forename>敏郎</forename><idno type="aozora-person-id">002084</idno></persName><persName xml:lang="ja-Hira"><surname>むらさき</surname><forename>としろう</forename></persName><persName xml:lang="ja-Latn"><surname>Murasaki</surname><forename>Toshiro</forename></persName></respStmt>
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        <bibl><title>〔名探偵登場Ⅰ〕</title><publisher>HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS、早川書房</publisher><date>1956（昭和31）年2月28日</date><note type="input-edition">1993（平成5）年9月15日3版</note><note type="proof-edition">1993（平成5）年9月15日3版</note></bibl>
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      <classDecl><taxonomy xml:id="ndc"><bibl>日本十進分類法 (Nippon Decimal Classification), as recorded by <title>青空文庫</title> in its 分類番号 field.</bibl></taxonomy><taxonomy xml:id="aozora-orthography"><bibl><title>青空文庫</title> 文字遣い種別: the orthographic style Aozora Bunko records for the transcription.</bibl></taxonomy></classDecl>
      <refsDecl xml:id="source-spans"><p>A note of type source-span has an xml:id of the form source-START-END, giving the extent in UTF-8 bytes of the decoded primary text identified in sourceDesc. <ptr target="https://w3id.org/soranoha/ns/tei"/></p></refsDecl>
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        <classCode scheme="#aozora-orthography">新字新仮名</classCode>
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      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-546-825">バビロンにヨアキムという人が住んでいた。そしてこの人はスザナという妻をもらつたが、これはケルキアスの娘で、たいへん美人であり、神を恐れる婦人であつた。この女の両親も正しい人で、モーゼの</seg><ruby type="furigana" rend="right" source="#source-825-846"><rb>律法</rb><rt>おきて</rt></ruby><seg source="#source-846-881">に従つて娘を教育した。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-881-1120">さてヨアキムは金持でえらい人だつたが、家に接する美しい庭園を持つていた。そしてこの人は他のだれよりも尊敬されていたので、ユダヤ人たちがしげしげと出入りした。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-1120-1497">その年に人々の中から二人の長老が裁き人に任じられたが、これは主が告げたもうたように、邪悪はバビロンの老いたる裁き人からくるというたぐいの人で、人々を支配しているようであつた。この二人はたいていヨアキムの家にいて、法律の訴えをする者はみなここへ来た。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-1497-2213">さて人々が正午に立ち去つてしまうと、スザナは家の庭園へ散歩に行つた。そして二人の長老は毎日彼女が散歩に入つてくる姿を見て情欲を燃え立たせていた。そして邪心を起こしたので、眼をそむけて、天を仰ぎ見ないようにし、正しい裁きを思い出さないようにした。そして二人とも彼女への恋に傷ついていたけれど、それでも相手に自分の悲しみを見せようとはしなかつた。というのは彼女を自分の物にしたいという欲情を公言するのを恥じていたからである。それでも彼らは毎日怠らずに彼女を見ようと注意していた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">そして一人が相手に言つた。「さあ中食の時間だから、帰ろうじやないか」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-2320-2664">そこで二人は外に出て、別々にわかれたが、また引き返して、同じ場所で出合つてしまつた。そして、おたがいにどうしたわけかときいてから、二人は自分たちの欲情を認めた。そこで女が一人でいる機会が見つかつたら一緒に行動しようと約束した。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-2664-2984">そして二人が折あらばとねらつているとき、彼女はいつものとおり二人の女中だけを連れて入つて行つて、暑いので庭で体を洗いたくなつた。そして姿をかくして彼女を見張つていた二人の長老以外には、そこにはだれもいなかつた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">そこで彼女は女中たちに言つた。「わたしに油とあかすりを持つてきておくれ。そして体を洗うから、庭の戸をみんな閉めておくれ」そして女中は言われたとおりにして、庭の戸を閉め、自分たちは隠し戸から出て、言いつけられた品物を取りに行つた。だが女中たちは隠れていた長老の姿には気がつかなかつた。</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">さて、女中が行つてしまうと、二人の長老は立ち上つて、彼女のそばへ駆けよつて、言つた。「見よ、庭の戸は閉じられて、だれも見る者はない。そしてわれわれはおまえを恋している。それゆえにおとなしくわれわれの言うことをきいて、一緒に寝るのだ。もしおまえがいやだといえば、われわれは、若い男がおまえと一緒にいたので、そのためにおまえは女中たちを遠ざけたのだと言つて、おまえをおとしいれる証言をするぞ」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">その時スザナは嘆息して、言つた。「わたくしは八方ふさがりです。だつて、もしわたくしがおつしやるとおりにすれば、死ぬよりつらいことです。といつて、もしいやだといえば、あなた方の手を逃れられません。わたくしは主の見たまう処で罪をおかすよりは、そんなことはお断りして、あなた方の手中に落ちるほうがましです」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-4454-4573">そう言うとスザナは大声で叫んだ。そして二人の長老は彼女を責めてどなり出した。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-4573-4638">その時一人が走つて行つて庭の戸を開けた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-4638-4958">そこで家の召使たちが庭の叫び声を聞いて、隠し戸から駆けこんで、彼女に何事かあつたのかと見にきた。しかし長老たちがそのことを宣言すると、召使たちは、今までスザナのそんな噂を聞いたことがなかつたので、大いに恥じた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">そして次ぎの日になつて、人々が彼女の夫ヨアキムの処へ集つたとき、二人の長老もスザナを死刑にしてやろうというので有害な空想をたくましくしながらやつてきた。そして人々の前で言つた。「ケルキアスの娘、ヨアキムの妻、スザナを呼びにやれ」そこで人々は呼びに行つた。</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-5344-5694">さてスザナはたいへんたおやかな、見る眼にも美しい婦人であつた。そしてこの悪者どもは（スザナがベールをつけていたので）彼女の美しさをつくづく楽しむために顔を出して見せろと命じた。それゆえに彼女の友達や、彼女を見た人はすべて、泣いた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-5694-5903">その時二人の長老は人々の真中に立ち上り、彼女の頭上に手を置いた。そして彼女は泣きながら天のほうを見上げた。心に主を信じていたからである。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">長老たちは言つた。「われわれが二人きりで庭を歩いていると、この婦人が二人の女中と一緒に入つてきて、庭の戸を閉め、女中たちを使いに出した。するとそこに隠れていた若い男が彼女の処へ来て、一緒に横になつた。その時庭の隅にいたわれわれは、この邪悪なありさまを見て、二人のそばへ駆けよつた。そして二人が一緒にいるのを見つけたが、男はわれわれより強かつたので、捕えかねているうちに、戸を開けて、飛び出して行つた。だがわれわれは、この女をつかまえたので、あの若い男はだれだときいたが、女は話そうとしなかつた。このことはわれわれが誓つて証言する」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-6703-6861">すると会衆は、二人が人々の長老であり裁き手であるので、それを信じた。そこで長老は彼女に死の宣告をした。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">その時スザナは大声で叫んで、言つた。「おお永遠の神よ、あなた様は秘密をご存じですし、あらゆることを事の起こる前からご存じでいらつしやいます。あなた様はこの二人がわたくしをおとしいれる偽りの証言をしたことをご存じでいらつしやいます。そして、見よ、わたくしは死ななければなりません……それでもわたくしはこの人たちがわたくしをおとしいれるために悪意で創りあげたようなことをしたおぼえはございません」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-7454-7510">そして主は彼女の声を聞きたもうた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">それゆえに彼女が死刑にされようとして引き立てられたとき、主はダニエルという名の年少の若者の聖なる魂をかき立てた。若者は大声で叫んだ。「わたしはこの女の血を避けるぞ！」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">その時すべての人々は彼のほうにふり向いて、言つた。「おまえが口に出したその言葉はどういう意味だ？」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">そこで彼は人々の真中に立つて、言つた。「イスラエルの子たちよ、きみらは真実をしらべもせず、知ろうともせずに、イスラエルの娘に罪の宣告をするほど、それほど愚か者なのか？　もう一度裁きの場所へ帰れ、あの二人は彼女を陥しいれる偽りの証言をしたのだ」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">ここにおいてすべての人々は大急ぎでまた戻つて行つた。長老たちはダニエルに言つた。「さあ、われわれの中にすわつて、はつきり見せてくれ。神はおまえに長老の名誉を与えてくだすつたようだな」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">その時ダニエルは人々に言つた。「この二人を一人ずつ遠く離してくれ。そうすればわたしが二人をしらべよう」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">そこで二人が別々に引き離されると、ダニエルは一人を呼んで、彼に言つた。「おお邪悪に年老いたる者よ、今やおまえのすでにおかした罪が明るみに出た。それは、主が『汚れなき者正しき者は殺すべからず』と言われたにもかかわらず、おまえは偽りの裁きを言い渡し、罪なき者を罪にし、<ruby type="furigana" rend="right" source="#source-9119-9143"><rb>罪人</rb><rt>つみびと</rt></ruby>を許してやつたからだ。さあ、それでは、もしおまえがこの女を見たというなら、男と一緒にいるのを見たのはどの木の下であつたか、言つてみろ？」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">長老は答えた。「マスチックの木（<seg type="warichu" rend="two-line" source="#source-9400-9472"><seg source="#source-9418-9445">うるし科の小常緑樹</seg></seg>）の下で」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">そしてダニエルは言つた。「よろしい。おまえは自分の首をなくすようなうそをついたな。というのは、もう今でも神の<ruby type="furigana" rend="right" source="#source-9654-9678"><rb>使者</rb><rt>みつかい</rt></ruby>はおまえを二つに切れという神の宣告を受け取つているのだぞ」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">そこでダニエルはその長老を退場させて、もう一人の男を連れてくるように命じて、その男に言つた。「おおユダヤの血を受けぬ、カナーン<ruby type="furigana" rend="right" source="#source-9959-9974"><rb>人</rb><rt>びと</rt></ruby>の子孫よ、美色がおまえをあざむき、欲情がおまえの心を堕落させた。こうしておまえはイスラエルの娘たちと関係し、彼女らは恐怖のためにおまえに従つたのだな。だがユダヤの娘はおまえの邪悪をがまんしようとはしなかつた。さてそれゆえに言つて見ろ、どの木の下で二人が一緒にいるところをおまえは見たのか？」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">この男は答えた。「かしわの木の下で」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">その時ダニエルは男に言つた。「よし、おまえも自分の首をなくすようなうそをついた。というのは神の使者が、おまえを殺すために、おまえを二つに切ろうとして剣を持つて待つているぞ」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-10733-11248">それと一緒に会衆一同は大声で叫んで、信ずる者を救いたもう神をほめたたえた。そして人々は二人の長老は有罪だといつて起立した（ダニエルが二人の口にした偽証を告発したからである）。そしてモーゼの律法に従つて、人々は、二人が悪意を持つて隣人を計ろうとしていたとおりの目にあわせることにして、二人を死刑にした。こうして罪なき者の血が同じ日に救われた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-11248-11457">それゆえにケルキアスとその妻は、夫のヨアキムや親類すべてと共々に、娘スザナのために神をほめたたえた。娘に少しも不正がなかつたからである。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-11457-11532">その日から以後ダニエルは世間の評判が高くなつた。</seg></p>
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        <note type="source-attribution" source="#source-11540-11763"><seg type="source-line">底本：「〔名探偵登場※［＃ローマ数字1、1-13-21］〕」HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS、早川書房</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1956（昭和31）年2月28日初版発行</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1993（平成5）年9月15日3版発行</seg></note>
        <note type="transcriber-note" source="#source-11763-12223"><seg type="source-line">※底本は新字新仮名づかいです。なお平仮名の拗音、促音が並につくられているのは、底本通りです。</seg><lb/><seg type="source-line">入力：sogo</seg><lb/><seg type="source-line">校正：かな　とよみ</seg><lb/><seg type="source-line">2021年12月27日作成</seg><lb/><seg type="source-line">青空文庫作成ファイル：</seg><lb/><seg type="source-line">このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫（https://www.aozora.gr.jp/）で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。</seg></note>
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