この訳本の原書は、ニューヨーク、グロセット・ダンラップ会社出版の「スケッチ・ブック」（<em>The Sketch Book</em>, Grosset &amp; Dunlap New York, 1819\-20）である。

作者アーヴィング（Washington Irving, 1783\-1859）は、改めて記すまでもなく、十九世紀前半に仕事をしたアメリカのエッセイスト、短篇作家、伝記作者であるが、その主な作品には、この「スケッチ・ブック」の他に「オリバー・ゴールドスミス伝」（<em>Oliver Goldsmith : A Biography</em>, 1840）、「マホメットとその後継者たち」（<em>Mahomet and His Successors</em>, 1849\-50）、「ジョージ・ワシントンの生涯」（<em>Life of George Washington</em>, 1855\-59）等がある。一八〇六年、二十三歳の時、弁護士となり、再三ヨーロッパに遊び、一八四二年には、スペイン公使に任ぜられて、四年間マドリッドに滞在した。

かれの作品の舞台がしばしばイギリスを始めとしてヨーロッパに取られているのは、当時、新しい秩序を求めて、はげしい動きを見せていたアメリカが、かれの余りにも浪漫的な筆に適さなかったためであろう。アメリカ西部の開拓者たちの精力的な生活の姿を写し取るには、同じく精力的なリアルな作風を必要としたのである。「大草原の旅」（<em>A Tour on the Prairies</em>, 1835）、「アストリア」（<em>Astoria</em>, 1836）等の、ミシシッピー河以西の初期探険家の物語も、あることはあるが、やはり、かれの本領を余すところなく伝えているのはこの「スケッチ・ブック」であると言われている。

「スケッチ・ブック」は三十二篇の物語とエッセイを含んでいる。その中から、短篇小説三篇と日本でよく読まれていると思われる九篇を選んで、ここに訳出した。スケッチ・ブックの特色、あるいは性格は、これらによって、十分に表現されていると思う。なお、「リップ・ヴァン・ウィンクル」中の同名の主人公と、「スリーピー・ホローの伝説」中の主人公イカバッド・クレーンの二人はかれの創造した人物中の傑作とされていることを申しそえておこう。

（一九五七年一月一日）