Soranoha

ハツカネズミと小鳥と腸づめの話

ハツカネズミとことりとちょうづめのはなし

グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール、グリム ヴィルヘルム・カール

むかしむかし、ハツカネズミと小鳥ことりと腸ちょうづめがなかまになって、一家いっかをもちました。長いあいだ、みんなはいいぐあいになかよくくらして、財産ざいさんもだいぶこしらえました。

小鳥のしごとは、まい日森のなかをとびまわって、たきぎをとってくることでした。ハツカネズミは水をくんで、火をおこし、おぜんごしらえをする役やくめです。それから、腸ちょうづめは煮にたきをすることになっていたのです。

しあわせすぎるものは、なにかかわった、あたらしいことをやってみたがるものです。そんなわけで、ある日、小鳥はとちゅうでほかの鳥にであって、じぶんの身みのすばらしいしあわせを話して、さかんにじまんしました。ところが、その鳥は、

「おまえはばかだな。おまえはほねのおれるしごとをしているのに、ほかのふたりはうちでらくをしているじゃないか。」

と、小鳥をこばかにしていいました。

なるほど、そういわれれば、たしかにそのとおりです。だって、ハツカネズミは火をおこして、水をくんでしまえば、あとはじぶんのへやにはいって、おぜんごしらえをしろといわれるまでは、やすんでいられます。腸ちょうづめは土どなべのそばにいて、食べものの煮にえぐあいを見ていればいいのです。そうしているうちに、ごはんどきになったら、おかゆか、煮にもののなかを、せいぜい四回もころがりまわれば、それで油あぶらっけも塩しおっけもうまくついて、したくもできあがりというわけです。そこへ小鳥ことりがかえってきて、おもたい荷にをおろすのです。そこで、みんなはおぜんについて、やがてごはんがすみますと、あしたの朝までぐっすりねむります。なるほど、まことにもってすばらしいくらしです。

小鳥は、ほかの鳥に知恵ちえをつけられたものですから、つぎの日は、

「ぼくは、もうずいぶん長いあいだ下男げなんしごとをやってきた。まるで、きみたちにばかにされていたようなもんだ。ここらでひとつ役やくめをかえて、ちがったやりかたをしてみようじゃないか。」

と、いって、どうしても森へいこうとはしませんでした。

ハツカネズミばかりか腸ちょうづめまでが、小鳥にいってきてくれとしきりにたのみましたが、小鳥はなんとしてもききいれませんでした。そこで、とにかくやってみなくてはというわけで、みんなでくじをひいてみました。すると、腸ちょうづめにくじがあたりましたので、腸づめがたきぎをとりにいくことになりました。そして、こんどは、ハツカネズミが料理番りょうりばんになり、小鳥が水をくむ役やくにまわりました。

さてそれで、どんなことになったでしょうか。

腸ちょうづめは森をさして、でかけていきました。いっぽう、小鳥ことりは火をおこして、ハツカネズミはふかいおなべの用意よういをしました。こうして、腸づめがあしたのたきぎをもってかえってくるのを、待まつばかりになりました。

ところが、その腸ちょうづめはいつまでたってもかえってきません。それで、ふたりは、腸づめがどうかしたのではないかと心配しんぱいになってきました。そこで、小鳥がちょっととんでいってみました。

すると、あまり遠くないところに、道ばたに一ぴきの犬がいました。この犬が、かわいそうに、腸ちょうづめを見るとどうじに、いいえものがきたとばかりにひっつかまえて、殺ころしてしまったのです。小鳥は犬にむかって、

「そりゃあおまえ、だれがみたって強盗ごうとうというもんだぞ。」

と、はげしくもんくをいいたてました。

けれども、犬のほうでは、

「おれは、あの腸ちょうづめのやつが、にせ手紙てがみをいくつももっているのを見つけたんだ。だから、おれがあいつの息いきの根ねをとめてやったのさ。」

と、いいますので、どうにもしかたがありませんでした。

小鳥は、しおしおと、たきぎをせおってとんでかえりました。そして、見たり、きいたりしてきたことを、ハツカネズミに話してきかせました。ふたりは、すっかりかなしくなりましたが、それでも、できるだけのことをしよう、そうして、いつまでもふたりでいっしょにいよう、と、かたく約束やくそくしました。

こういうわけで、小鳥ことりは食卓しょくたくのじゅんびをし、ハツカネズミは食べものの用意よういをしました。そして、ハツカネズミはすっかりごはんごしらえをしてしまおうと思いました。そこで、まえに腸ちょうづめがやったように、土どなべのなかにはいって、おかゆのなかをころがりまわって、味あじをつけようと思ったのです。ところが、ハツカネズミはまんなかまではいらないうちに、身動みうごきができなくなってしまいました。そして、皮かわと毛けをなくすだけではすまないで、命いのちまでもなくしてしまったのです。

小鳥がやってきて、食べものをならべようとしましたが、料理番りょうりばんのすがたが見えません。小鳥はあわてふためいて、たきぎをあっちこっちへほうりだして、大声によびながら、さがしまわりました。でも、料理番のすがたはどこにも見えません。

こんなことでうっかりしているうちに、火がたきぎのなかにはいってしまって、火事かじになりました。小鳥はいそいで水をくみにいきました。ところが、水をくむおけが井戸いどのなかへおっこちるひょうしに、小鳥もいっしょにおっこちてしまいました。こうして、小鳥はもうどうすることもできなくなって、あぶあぶしているうちに、とうとう水におぼれて死しんでしまいました。

底本 / Source edition

底本:「グリム童話集(1)」偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月1刷
2009(平成21)年6月49刷
※表題は底本では、「ハツカネズミと小鳥《ことり》と腸《ちょう》づめの話」となっています。
入力:sogo
校正:チエコ
2021年2月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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書誌 / Bibliography
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グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール、グリム ヴィルヘルム・カール「ハツカネズミと小鳥と腸づめの話」(新字新仮名)、底本『グリム童話集(1)』偕成社文庫、偕成社、1980年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 059846_001091, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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