Soranoha

料理人を募る

りょうりにんをつのる

北大路 魯山人

「料理人を募る」星岡茶寮で新聞広告を出すと、たちまちあのチッポケな十行くらいの雇傭広告一回に対して、百人余りもぞろぞろ申込者があった。不景気で失業している人の多いのにもよろうが、料理人が世に溢れるくらいたくさんいるのだとは、よくよく肯かれる。にもかかわらず、ここにこの広告を出すことになった。たくさんの人を欲しいためではなく、たった一人の真の料理人を本誌読者諸氏のお知合の中から得られはしまいか、と思ってです。

真の料理人とは、良寛さまから「いやなものは料理人の料理」と、いやがられない良い料理をこしらえ得る人です。従って、ほんとの料理をよくわきまえた人で、今後わきまえ得る人の意味です。

そういう料理人はまず第一に味を知り、味を楽しむ人でなくてはなりません。うまいもの、うまくないものに対して、極度の緊張した神経を始終持って、日常の食事を踏み台として、人生の修業をやっていく心がけの人です。月収百円、二百円、三百円を目的として茶寮にはいろうとする人は望むところではありません。

応募の資格。日本料理とかぎらず、美的趣味を持っている人。絵画、彫刻、建築、工芸等、芸術に愛着を持ち、今日まで食物道楽で変人扱いを世間から受けるくらいの人。そうして非常に健康な身体を持った人。

時と場合、人柄と嗜好とを考えて臨時応変の料理をこしらえる。この機転と、そして美味を解する人、後世天下に名料理人として名を遺す料理人をたった一人でいいから見つけたいと思います。またそういう質の人を教育したいと思っています。年齢を問わず、経歴またこだわるところではありません。豊かな天分を持ち、不屈の努力でやって行く人を茶寮料理人として募るゆえんであります。希望の方は茶寮の人事係へ履歴書を添えてお申込み願います。(昭和十年)

底本 / Source edition

底本:「魯山人著作集 第三巻」五月書房
1980(昭和55)年12月30日
初出:「星岡 57号」星岡窯研究所
1935(昭和10)年6月
※本文末の編者による注記は省略しました。
入力:江村秀之
校正:木下聡
2021年2月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
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書誌 / Bibliography
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北大路 魯山人「料理人を募る」(新字新仮名)、底本『魯山人著作集 第三巻』五月書房、1980年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 059651_001403, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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