世界じゅうで、眠りの精のオーレ・ルゲイエぐらい、お話をたくさん知っている人はありません！――オーレ・ルゲイエは、ほんとうに、いくらでもお話ができるのですからね。

夜になって、子供たちがまだお<ruby><rb>行儀</rb><rt>ぎょうぎ</rt></ruby>よくテーブルにむかっていたり、低い<ruby><rb>椅子</rb><rt>いす</rt></ruby>に<ruby><rb>腰</rb><rt>こし</rt></ruby>かけたりしているころ、オーレ・ルゲイエがやってきます。オーレ・ルゲイエは、静かに静かに階段を上ってきます。なぜって、<ruby><rb>靴下</rb><rt>くつした</rt></ruby>しかはいていないのですからね。オーレ・ルゲイエは、そっとドアをあけて、子供たちの目の中に、シュッと、あまいミルクをつぎこみます。でも、ほんの、ほんのちょっぴりですよ。けれど、それだけでも、子供たちは、もう目をあけてはいられなくなるのです。ですから、子供たちには、オーレ・ルゲイエの姿が見えません。

オーレ・ルゲイエは、子供たちのうしろにしのびよって、首のところをそっと<ruby><rb>吹</rb><rt>ふ</rt></ruby>きます。すると、子供たちの頭が、だんだん重くなってきます。ほんとですよ。でも、べつに害をくわえたわけではありません。だって、オーレ・ルゲイエは、子供たちが大好きなんですから。ただ、子供たちに静かにしていてもらいたい、と思っているだけなのです。それには、子供たちを<ruby><rb>寝床</rb><rt>ねどこ</rt></ruby>へ連れていくのがいちばんいいのです。オーレ・ルゲイエは、これからお話を聞かせようと思っているので、子供たちに静かにしていてもらいたいのです。――

さて、子供たちが眠ってしまうと、オーレ・ルゲイエは寝床の上にすわります。見れば、たいへんりっぱな身なりをしています。上着は絹でできています。でも、それがどんな色かは、お話しすることができません。というのも、オーレ・ルゲイエがからだを動かすと、それにつれて、緑にも、赤にも、青にも、キラキラ光るのですから。<ruby><rb>両腕</rb><rt>りょううで</rt></ruby>には、こうもりがさを一本ずつ、かかえています。一本のかさには、絵がかいてあります。それをよい子供たちの上にひろげると、その子供たちは、一晩じゅう、それはそれは楽しいお話を<ruby><rb>夢</rb><rt>ゆめ</rt></ruby>に見るのです。もう一本のかさには、なんにもかいてありません。これをお行儀のわるい子供たちの上にひろげると、その子たちは、ばかみたいに眠りこんでしまって、あくる朝目がさめても、なんにも夢を見ていないのです。

ではこれから、オーレ・ルゲイエがヤルマールという小さな男の子のところへ、一週間じゅう毎晩、出かけていって、どんなお話をして聞かせたか、わたしたちもそれを聞くことにしましょう。お話はみんなで七つあります。一週間は、七日ですからね。

## 月曜日

「さあ、お聞き」オーレ・ルゲイエは、晩になると、ヤルマールを寝床へ連れていって、こう言いました。「今夜は、きれいにかざろうね」

そうすると、植木ばちの中の、花という花が、みんな大きな木になりました。そして、長い<ruby><rb>枝</rb><rt>えだ</rt></ruby>を、<ruby><rb>天井</rb><rt>てんじょう</rt></ruby>の下や、かべの上にのばしました。ですから、<ruby><rb>部屋</rb><rt>へや</rt></ruby>全体が、たとえようもないほど美しい、あずまやのようになりました。どの枝にもどの枝にも、花がいっぱい<ruby><rb>咲</rb><rt>さ</rt></ruby>いています。しかも、その花の一つ一つが、バラの花よりもきれいで、たいそうよいにおいをはなっているのです。おまけに、それを食べれば、ジャムよりも<ruby><rb>甘</rb><rt>あま</rt></ruby>いのです。<ruby><rb>実</rb><rt>み</rt></ruby>は、金のようにキラキラ光っています。そればかりか、ほしブドウではちきれそうな菓子パンまでも、ぶらさがっているのです。ほんとうに、なんてすばらしいのでしょう！

ところがそのとき、ヤルマールの教科書のはいっている机の引出しの中で、なにかがはげしく泣きだしました。

「おや、なんだろう？」と、オーレ・ルゲイエは言いながら、机のところへ行って、引出しをあけてみました。すると、<ruby><rb>石盤</rb><rt>せきばん</rt></ruby>の上で、なにやらさかんに、<span data-tei-rend="bouten 傍点 right" style="text-emphasis-style: filled sesame; text-emphasis-position: over right">押し合いへし合い</span>しているではありませんか。それは、こういうわけです。算数の計算のときにまちがった数が、いつのまにか、そこへはいりこんできたため、それを<ruby><rb>押</rb><rt>お</rt></ruby>し出そうとして、数たちが、今にも散らばろうとしているところだったのです。石筆が、ひもにゆわえられたまま、まるで小イヌのように、とんだりはねたりしていました。石筆は、なんとかして計算を助けようとしていたのですが、ちっともうまくいきません。――

と、今度は、ヤルマールの習字帳の中から、とても聞いてはいられないほど、泣きわめく声が聞えてきました。そこで習字帳をあけてみると、どのページにも、全部の大文字が、縦に一列にならんでいました。その大文字のとなりには、小文字が一つずつ、ならんでいました。これはお手本の字です。けれども、またそのそばに、二つ三つ字が書いてありました。これらの字は、自分では、お手本の字に似ているつもりでいました。なにしろ、ヤルマールがお手本の字を見て書いたものだったのですから。ところが、これらの字は、<ruby><rb>鉛筆</rb><rt>えんぴつ</rt></ruby>で引いた線の上に立っていなければいけないのに、ころんだように、横だおれになっていました。

「ほら、いいかい。こんなふうに、からだを起すんだよ」と、お手本の字が言いました。「ほうら。こんなふうに、いくぶんななめにして、それから、ぐうんとはねるんだぜ」

「ぼくたちだって、そうしたいんだよ」と、ヤルマールの書いた字が言いました。「だけど、できないのさ。ぼくたち、気分がわるいんだもの」

「じゃ、おまえたちは、げざいを飲まなきゃいけないね」と、オーレ・ルゲイエが言いました。

「いやだよ、いやだよ！」と、みんなはさけぶといっしょに、さっと起き上がりました。そのありさまは、見ていておかしいほどでした。

「今夜は、お話はしてあげられないよ」と、オーレ・ルゲイエは言いました。「これから、訓練をしなければならないんだよ！　一、二！　一、二！」それから、みんなは訓練をうけました。そうすると、お手本の字のように、元気よく、まっすぐに立ちました。けれども、オーレ・ルゲイエが行ってしまって、つぎの朝、ヤルマールが目をさましたときには、みんなは、やっぱりきのうと同じように、なさけないかっこうをしていました。

## 火曜日

ヤルマールが寝床にはいったとたん、オーレ・ルゲイエは、小さな<ruby><rb>魔法</rb><rt>まほう</rt></ruby>の注射器で、部屋の中の、ありとあらゆる家具にさわりはじめました。すると、さわられた家具は、つぎつぎとしゃべりだしました。しかも、みんながみんな、自分のことばかりしゃべりたてました。なかにただひとり、<ruby><rb>痰壺</rb><rt>たんつぼ</rt></ruby>だけは、だまりこくって立っていました。けれども、心の中では、みんながあんまりうぬぼれが強く、自分のことばかりを考え、自分のことばかりをじまんしていて、おとなしくすみっこに立って、つばをはきかけられているもののことなどは、ちっとも考えてくれないのを、ふんがいしていました。

たんすの上には、一枚の大きな絵が、金ぶちの<ruby><rb>額</rb><rt>がく</rt></ruby>に入れられてかかっていました。その絵は風景画でした。大きな年とった木々や、草原に咲いている花や、大きな湖が、かいてありました。湖からは、ひとすじの川が流れでて、森のうしろをめぐり、たくさんのお城のそばを通って、遠くの大海にそそいでいました。

オーレ・ルゲイエは、魔法の注射器でその絵にさわりました。と、たちまち、絵の中の鳥は、歌をうたいはじめ、木々の枝は風にそよぎ、雲は空を流れてゆきました。そして、雲の<ruby><rb>影</rb><rt>かげ</rt></ruby>が、野原の上にうつってゆくのさえ、見えました。

さて、オーレ・ルゲイエは、小さなヤルマールを、額ぶちのところまで持ちあげてやりました。そこで、ヤルマールは、絵の中の深い草の中に足をふみいれて、そこに立ちました。お日さまが、木々の枝のあいだからヤルマールの頭の上にさしてきました。ヤルマールは湖のほうへかけていって、ちょうどそこにあった、小さなボートに乗りました。ボートは、赤と白とにぬってありました。<ruby><rb>帆</rb><rt>ほ</rt></ruby>は、銀のように、キラキラ光っていました。ボートは、六<ruby><rb>羽</rb><rt>わ</rt></ruby>のハクチョウに引かれていきました。ハクチョウたちは、みんな首のところに黄金の輪をつけ、頭にはきらめく青い星をいただいていました。ボートが緑の森のそばを通ると、森の木々は、<ruby><rb>盗賊</rb><rt>とうぞく</rt></ruby>や<ruby><rb>魔女</rb><rt>まじょ</rt></ruby>の話をしてくれました。森の花は、かわいらしい、小さな<ruby><rb>妖精</rb><rt>ようせい</rt></ruby>のことや、チョウから聞いた話をしてくれました。

見るも美しいさかなが、金や銀のうろこをきらめかせながら、ボートのうしろからおよいできました。ときどき、水の上にはね上がっては、ピチャッ、ピチャッと、音をたてました。赤い鳥や青い鳥が、大きいのも小さいのも、長く二列にならんで、ボートのあとから飛んできました。ブヨはダンスをし、コガネムシはぶんぶん歌をうたいました。そして、みんながみんな、ヤルマールのあとについてこようとしました。しかも、みんな、めいめい一つずつのお話を持っててです！

なんというすばらしい船あそびではありませんか！　やがて、森が深くなって、うす暗くなりました。と、思うまもなく、すぐまた、お日さまのキラキラ照っている、世にも美しい<ruby><rb>花園</rb><rt>はなぞの</rt></ruby>に出ました。花園には、ガラスと大理石でできた、大きな<ruby><rb>御殿</rb><rt>ごてん</rt></ruby>が、いくつも立っていました。そして、御殿の<ruby><rb>露台</rb><rt>バルコニー</rt></ruby>には、お<ruby><rb>姫</rb><rt>ひめ</rt></ruby>さまたちが立っていました。しかし、どのお姫さまも、ヤルマールが前にあそんだことのある、よく知っている、小さな女の子たちばかりでした。みんなは、手をさし出しました。見れば、<ruby><rb>菓子屋</rb><rt>かしや</rt></ruby>のおばさんのところでもめったに売っていないような、すてきにおいしい、小ブタのさとう菓子を持っていました。ヤルマールは通りすぎるときに、その小ブタのさとう菓子のはしをつかみました。けれども、お姫さまがそれをしっかりとにぎっていたので、さとう菓子は二つに割れてしまいました。そして、お姫さまの手には小さいほうが残り、ヤルマールの手には大きいほうが残りました。どの御殿の前にも、小さな王子が番兵に立っていました。みんな、金のサーベルで敬礼しながら、ほしブドウと、すずの兵隊さんを、雨のように降らせてくれました。だからこそ、ほんとの王子というものです！

まもなく、ヤルマールのボートは森の中をぬけました。それから大きな広間のようなところを通ったり、町の中を通りすぎたりしました。そのうちに、ヤルマールがごく小さかったころ、おもりをして、たいそうかわいがってくれた、子もり<ruby><rb>娘</rb><rt>むすめ</rt></ruby>の住んでいる町へ、やってきました。娘はうなずいて手をふりながら、かわいらしい歌をうたいました。その歌は、まえに自分で作って、ヤルマールに送ってくれたものでした。

いとしいわたしのヤルマール、

思うはあなたのことばかり！

かわいい<ruby><rb>唇</rb><rt>くちびる</rt></ruby>、赤い<ruby><rb>頬</rb><rt>ほお</rt></ruby>、

キスしたことも、忘られぬ。

あなたのさいしょのかたことを

耳にしたのは、このわたし。

だのに、いまは会えないの。

わたしの天使のしあわせを

ひとりわたしは<ruby><rb>祈</rb><rt>いの</rt></ruby>りましょう！

すると、鳥も、みんないっしょにうたいだしました。花はくきの上でダンスをし、年とった木々はうなずきました。まるで、オーレ・ルゲイエのお話を、みんなが聞いているようでした。

## 水曜日

まあまあ、外は、なんというひどい雨でしょう！　<ruby><rb>眠</rb><rt>ねむ</rt></ruby>っていても、ヤルマールには雨の音がよく聞えました。オーレ・ルゲイエが窓をあけると、水が窓わくのところまで届いていました。外には、大きな湖ができています。ところが、りっぱな船が一そう、家の前にきていました。

「ヤルマールや！　船に乗って、旅に出かけよう」と、オーレ・ルゲイエは言いました。「今夜のうちに、よその国へ行って、あしたの朝は、ここへもどってこられるからね」

そこで、ヤルマールは、さっそく晴着を着て、そのりっぱな船のまんなかに乗りこみました。すると、すぐにお天気がよくなりました。そして、船は通りを走りだしました。教会をぐるっとまわると、大きな広い海に出ました。船は、それから長いあいだ走りつづけました。もう、陸地は、かげも形も見えなくなりました。

コウノトリが、むれをつくって飛んでゆくのが見えました。コウノトリたちは、いま、ふるさとを去って、暖かい国へゆこうというのです。一羽また一羽と、一列になって飛んでいました。みんなは、今までに、とてもとても長いこと飛んできました。ですから、そのうちの一羽は、つかれきって、もうこれ以上つばさを動かして、飛んでいくことができなくなりました。その鳥は、列のいちばんおしまいを飛んでいましたが、そのうちに、みんなからずっと<ruby><rb>離</rb><rt>はな</rt></ruby>れてしまいました。そして、とうとうしまいには、つばさをひろげたまま、下へ下へと落ちていきました。二度、三度、つばさをバタバタやりましたが、もう、どうしようもありません。足が、船の<ruby><rb>帆綱</rb><rt>ほづな</rt></ruby>にさわりました。帆の上をすべり落ちて、バタッと、<ruby><rb>甲板</rb><rt>かんぱん</rt></ruby>の上に落ちました。

船のボーイがこのコウノトリをつかまえて、ニワトリや、アヒルや、シチメンチョウのはいっている、トリ小屋の中に入れました。あわれなコウノトリは、しょんぼりして、みんなの中に立っていました。

「みなさん、ごらんなさいな！」と、メンドリたちが、いっせいに言いました。

すると、シチメンチョウは、思いきり、ぷうっとふくらんで、おまえはだれだい、とたずねました。アヒルたちはあとずさりして、たがいに<ruby><rb>押</rb><rt>お</rt></ruby>しあいながら、「早く言いな。早く言いな」と、ガアガアさわぎたてました。

そこで、コウノトリは、暖かいアフリカのこと、ピラミッドのこと、<ruby><rb>砂漠</rb><rt>さばく</rt></ruby>を野ウマのように走るダチョウのこと、などを話しました。しかし、アヒルたちには、コウノトリの言うことがわかりません。それで、たがいに押しあいながら、言いました。「どうだい、みんな、こいつばかだと思うだろう！」

「うん、たしかに、こいつはばかだよ！」シチメンチョウはこう言って、のどをコロコロ鳴らしました。コウノトリは何も言わずに、ただアフリカのことばかりを心に思っていました。

「おまえさんは、きれいな細い足をしているね」と、シチメンチョウは言いました。「五十センチでいくらするんだい？」

すると、アヒルたちは、「ガア、ガア、ガア！」と、ばかにしたように、笑いました。けれども、コウノトリは、なんにも聞えないような顔をしていました。

「いっしょに笑ったらどうだい」と、シチメンチョウは言いました。「ずいぶん、しゃれたつもりなんだからな。それとも、おまえさんには低級すぎたかい。おや、おや！　こいつはちっと足りないや！　おれたちは、おれたちだけで、ゆかいにやろうぜ！」こう言って、クッ、クッと鳴きました。すると、アヒルたちは、「ガア、ガア、ガア！」とさわぎたてました。こうして、みんながおもしろがっているありさまは、おそろしいほどでした。

けれども、ヤルマールはトリ小屋へ行って、戸をあけて、コウノトリを呼びました。コウノトリは、ヤルマールのあとから甲板にとび出てきました。いまでは、からだも、じゅうぶんに休まりました。コウノトリは、ヤルマールにお礼を言いたそうに、うなずいているみたいでした。それから、つばさをひろげて、暖かい国へむかって飛んでいきました。ニワトリたちはクッ、クッと鳴き、アヒルたちはガアガアおしゃべりをし、シチメンチョウは顔をまっかにしました。

「あした、おまえたちをスープにしてやるぞ」と、ヤルマールは言いました。けれども、やがて目がさめたときには、いつもの小さな<ruby><rb>寝床</rb><rt>ねどこ</rt></ruby>の中に寝ていました。それにしても、オーレ・ルゲイエが、ゆうべさせてくれた旅は、ほんとうにふしぎな旅でした！

## 木曜日

「いいかね」と、オーレ・ルゲイエは言いました。「こわがっちゃいけないよ。ごらん。ここに、小さなハツカネズミがいるね」こう言いながら、かわいい、ちっちゃなハツカネズミを持った手を、ヤルマールのほうへ差しだしました。「このハツカネズミは、おまえを<ruby><rb>結婚式</rb><rt>けっこんしき</rt></ruby>に招待しにきたんだよ。ここで、二ひきのハツカネズミが、今夜、結婚することになっているのさ。そのふたりは、おまえのおかあさんの食物部屋の<ruby><rb>床下</rb><rt>ゆかした</rt></ruby>に住んでいるんだよ。あそこは、とても住みごこちのいいところなんだって！」

「でもね、ちっちゃなネズミの穴から、どうして床下へはいっていけるの？」と、ヤルマールは聞きました。

「わたしにまかせておけば、<ruby><rb>大丈夫</rb><rt>だいじょうぶ</rt></ruby>！」と、オーレ・ルゲイエは言いました。「いま、おまえを小さくしてあげるよ」それから、オーレ・ルゲイエが、あの<ruby><rb>魔法</rb><rt>まほう</rt></ruby>の注射器でヤルマールのからだにさわると、ヤルマールのからだは、たちまち、どんどん小さくなって、とうとう、指ぐらいの大きさになってしまいました。「もう、すずの兵隊さんの服が、かりられるよ。きっと、似合うだろう！　<ruby><rb>宴会</rb><rt>えんかい</rt></ruby>のときは、軍服を着ていたほうが、スマートに見えるからね」

「うん、そうだね」と、ヤルマールが言ったとたん、もう、このうえなくかわいらしいすずの兵隊さんのように、ちゃんと軍服を着ていました。

「どうか、おかあさまの指ぬきの中に、おすわりくださいませ」と、小さなハツカネズミが言いました。「そうすれば、あたくしが引っぱってまいりますから」

「おや、お<ruby><rb>嬢</rb><rt>じょう</rt></ruby>さんに、そんなお骨折りをしていただいては、申しわけありません」と、ヤルマールは言いました。こうして、みんなは、ハツカネズミの結婚式へ出かけていきました。

はじめに、みんなは、床下の長い<ruby><rb>廊下</rb><rt>ろうか</rt></ruby>にはいりました。そこは、指ぬきに乗って、やっと通れるくらいの高さでした。くさった木の切れはしのあかりが置いてあるので、廊下じゅうが明るくなっていました。

「ここは、いいにおいが、しやしません？」と、ヤルマールを引っぱっているハツカネズミが言いました。「廊下じゅうに、ベーコンの皮がしいてあるんですのよ。こんなに<span data-tei-rend="bouten 傍点 right" style="text-emphasis-style: filled sesame; text-emphasis-position: over right">すてき</span>なことってありませんわ！」

まもなく、みんなは式場へ来ました。右側には、小さなハツカネズミの婦人たちが、ひとりのこらず立っていて、ひそひそ声で話しては、ふざけあっていました。左側にはハツカネズミの<ruby><rb>紳士</rb><rt>しんし</rt></ruby>たちが立ちならんでいて、前足でひげをなでていました。部屋のまんなかに、<ruby><rb>花嫁</rb><rt>はなよめ</rt></ruby>、<ruby><rb>花婿</rb><rt>はなむこ</rt></ruby>の姿が見えました。ふたりは、中身をくりぬいたチーズの皮の中に立っていて、みんなの見ている前で、何度も何度もキスをしていました。むりもありません。ふたりはもう婚約しているのですし、それに、いまにも結婚式をあげようというのですからね。

それから、お客さまが、ますますふえてきました。とうとうしまいには、おたがいが、もうすこしで、<ruby><rb>踏</rb><rt>ふ</rt></ruby>み殺されそうなくらいになりました。そのうえ、花嫁と花婿が戸口に立っていたものですから、だれひとり出ることも、はいることもできません。部屋の中にも、廊下と同じように、ベーコンの皮がしきつめてありました。これが、ご<ruby><rb>馳走</rb><rt>ちそう</rt></ruby>の全部だったのです。デザートには、エンドウマメが一つぶでました。このエンドウマメには、家族の中のひとりが、花嫁と花婿の名前を歯でかみつけておきました。といっても、<ruby><rb>頭文字</rb><rt>かしらもじ</rt></ruby>だけですがね。こんなところは、ふつうの結婚式とは、まったくかわっていました。

ハツカネズミたちは、口々に、りっぱな結婚式だった、それに、話もなかなかおもしろかった、と言いあいました。

そこで、ヤルマールも家へ帰りました。こうして、ほんとうにじょうひんな宴会に行ってきたのです。ただ、からだをちぢこめて、小さくなって、すずの兵隊さんの軍服を着ていかなければなりませんでしたが。

## 金曜日

「ちょっと信じられないことだが、おとなの中にも、わたしにそばにいてもらいたい人が、大ぜいいるんだよ」と、オーレ・ルゲイエが言いました。「わけても、なにかわるいことをした人が、そうなんだよ。『やさしい、小さなオーレさん』と、その人たちは、わたしに言う。『ああ、どうしても<ruby><rb>眠</rb><rt>ねむ</rt></ruby>れません。一晩じゅう、こうして横になっていると、今までにやったわるい行いが、みんな目に見えてくるんですよ。ちっぽけな、みにくい<ruby><rb>魔物</rb><rt>まもの</rt></ruby>の姿になって、<ruby><rb>寝床</rb><rt>ねどこ</rt></ruby>のはしにすわり、熱い湯をおれたちにひっかけるんです。どうか、きて、そいつらを追っぱらってください。ぐっすり寝られるように！』こう言って、深いため息をつくんだよ。そしてまた、『お礼はよろこんでしますとも。それじゃ、おやすみなさい、オーレさん！　お金は窓のところにありますよ』と、言うのさ。でも、わたしは、お金がほしくて、そんなことをするんじゃないんだよ」と、オーレ・ルゲイエは言いました。

「今夜は、どんなことをするの？」と、ヤルマールはききました。

「そう、どうだね、今夜も、もう一度、結婚式へ行く気があるかい？　きのうのとは、もちろんちがうけどね。おまえのねえさんは、ヘルマンという、男のような顔をした大きな人形を持っているだろう。あれがベルタという人形と結婚することになっているんだよ。それに、きょうは、この人形の<ruby><rb>誕生日</rb><rt>たんじょうび</rt></ruby>だしするから、<ruby><rb>贈</rb><rt>おく</rt></ruby>り<ruby><rb>物</rb><rt>もの</rt></ruby>も、きっと、うんとたくさんくるよ」

「うん、それなら、ぼくもよく知ってるよ」と、ヤルマールは言いました。「人形たちに新しい着物がいるようになると、いつもねえさんは、誕生日のお祝いか、結婚式をやらせるんだよ。きっと、もう百回ぐらいになるよ」

「そうだよ。今夜が、百一回めの結婚式なんだよ。でも、この百一回がすめば、それで、みんな、おわってしまうのさ。だから、今夜のは、とくべつすばらしいだろうよ。まあ、見てごらん」

そう言われて、ヤルマールがテーブルの上を見ると、そこには、小さな紙の家が立っていて、どの窓にも明りがついていました。そして、家の前には、すずの兵隊さんが、みんな、<ruby><rb>捧銃</rb><rt>ささげつつ</rt></ruby>をしていました。花嫁と花婿は、<ruby><rb>床</rb><rt>ゆか</rt></ruby>にすわって、テーブルの足によりかかり、なにか物思いにふけっていました。もちろん、それには、それだけのわけがあったのです。オーレ・ルゲイエは、おばあさんの黒いスカートをつけて、<ruby><rb>坊</rb><rt>ぼう</rt></ruby>さんのかわりに、式を行いました。式がすむと、部屋じゅうの家具という家具が、みんなで声をそろえて、<ruby><rb>鉛筆</rb><rt>えんぴつ</rt></ruby>の作った、美しい歌をうたいました。その歌は、兵隊さんが兵舎に帰るときのラッパの<ruby><rb>節</rb><rt>ふし</rt></ruby>でした。

歌えや、歌え！　この喜び、

われら歌わん、ふたりのために！

見よや、見よ！　顔こわばらせ、楽しげに、

中に立つは、われらの<ruby><rb>革</rb><rt>かわ</rt></ruby>人形！

ばんざい！　ばんざい！　革人形！

われら歌わん、声高らかに！

それから、ふたりは贈り物をもらいました。しかし、食べ物は、みんなことわりました。だって、ふたりは愛情だけで、もういっぱいだったのですから。

「ところで、ぼくたちは、いなかに住むことにしようか、それとも、外国へでも旅行しようか？」と、花婿がたずねました。そして、たくさん旅行をしているツバメと、五度もひなをかえしたことのある、年よりのメンドリに相談してみました。すると、ツバメは、美しい、暖かい国のことを話しました。そこには、大きなブドウの<ruby><rb>房</rb><rt>ふさ</rt></ruby>が、おもたそうにたれさがっていて、気候はじつにおだやかで、山々は、ここではとうてい見られないような、すばらしい色をしていると。

「でも、そこには、わたしたちのところにあるような、青キャベツはないでしょう」と、メンドリが言いました。「わたしは、子供たちといっしょに、いなかで、一夏をすごしたことがあるんですがね。そこには、<ruby><rb>砂利</rb><rt>じゃり</rt></ruby>取り場があって、わたしたちは、その中を歩きまわって、土をかきまわしたものですよ。それから、青キャベツの畑にはいることも、ゆるしてもらいましたよ。ああ、ほんとに青々としていましたっけ。あそこよりいいところなんて、わたしにはとても考えられませんわ！」

「だけど、キャベツなんて、どこのだっておんなじですよ」と、ツバメは言いました。「それに、ここは、ときどき、とてもひどい天気になるじゃありませんか！」

「そうですね、でもそんなことには、みんな、なれてしまっていますよ」と、メンドリは言いました。

「でも、ここは寒くって、氷もはりますよ！」

「そのほうが、キャベツにはいいんですよ」と、メンドリは言いました。「それに、ここも暖かになることだってありますわ。四年前のことですがね、夏が五週間もつづいたんですよ。あのときは、暑くて暑くて、それこそ、息をするのもやっとでしたわ！　それからここには、暑い国にいるような、毒をもった動物がいませんよ。どろぼうの心配もありません。この国をどこよりも美しい国だと思わないような人は、わるい人です！　そんな人は、この国にいる、ねうちがありません！」こう言うと、メンドリは泣きだしました。「わたしだって、旅行をしたことはありますよ。かごにはいって、十二マイル以上も旅をしてきたんですからね。でも旅行なんて、ちっとも楽しいものじゃありませんわ！」

「そうだわ。ニワトリの<ruby><rb>奥</rb><rt>おく</rt></ruby>さんのおっしゃるとおりよ」と、人形のベルタは言いました。「あたし、山の旅行なんていやだわ！　だって、登ったり、<ruby><rb>下</rb><rt>お</rt></ruby>りたりするだけなんですもの。ねえ、あたしたちも、砂利取り場の近くへ行きましょうよ。そうして、キャベツ畑を散歩しましょうね」

そして、そのとおりになりました。

## 土曜日

「さあ、お話してね」ヤルマールは、オーレ・ルゲイエに寝床へ連れていってもらうと、すぐに、こう言いました。

「今夜は、お話しているひまがないんだよ」オーレはこう言って、見るも美しいこうもりがさを、ヤルマールの上にひろげました。

「まあ、この中国人をごらん」

見ると、こうもりがさは、全体が大きな中国のお<ruby><rb>皿</rb><rt>さら</rt></ruby>のようで、それには青い木々や、とがった橋の絵が、かいてありました。その橋の上に、小さな中国人が立っていて、こちらにむかってうなずいていました。

「わたしたちは、あしたの朝までに、世界じゅうをきれいにしておかなければならないんだよ」と、オーレは言いました。「あしたは日曜日で、神聖な日だからね。わたしは、これから教会の<ruby><rb>塔</rb><rt>とう</rt></ruby>へ行って、教会のこびとの<ruby><rb>妖精</rb><rt>ようせい</rt></ruby>が<ruby><rb>鐘</rb><rt>かね</rt></ruby>をみがいて、いい音がでるようにしておいたかどうかを見なければならないし、畑へも行って、風が草や木の葉から、ほこりを<ruby><rb>吹</rb><rt>ふ</rt></ruby>きはらってくれたかどうかも見なければならないんだよ。でも、いちばん大事な仕事は、空の星をみんな下ろして、みがくことだよ。わたしは、それを<ruby><rb>前掛</rb><rt>まえか</rt></ruby>けに入れて、持ってくるんだがね、その前に、一つ一つの星に、番号をつけておかなければならないのさ。そして、取り出したあとの穴にも、同じ番号をつけなければならないんだよ。星が帰ってきたときに、ちゃんと、もとの場所へもどれるようにね。もしちがった穴へでもはいってしまうと、ちゃんとすわっていられないから、あとからあとからころがり落ちて、流れ星があんまりたくさんできてしまうからね」

「もしもし、ルゲイエさん！」と、そのとき、ヤルマールの<ruby><rb>寝</rb><rt>ね</rt></ruby>ている、上のかべにかかっている、古い<ruby><rb>肖像画</rb><rt>しょうぞうが</rt></ruby>が言いました。「わしはヤルマールの<ruby><rb>曾祖父</rb><rt>そうそふ</rt></ruby>です。子供にいろいろ話を聞かせてくださって、あつくお礼を申します。しかし、子供の考えを迷わさないように願いますぞ。空の星は、取り下ろしたり、みがいたりできるものではありませんからな。星というものは、われわれの地球と同じく、天体なのですぞ。そしてまた、それがいいところなんですからな」

「ありがとう、お年よりのひいおじいさま！」と、オーレ・ルゲイエは言いました。「ありがとう！　あなたは、一家のお<ruby><rb>頭</rb><rt>かしら</rt></ruby>です。あなたは『古い』お頭です。しかし、わたしは、あなたよりももっと古いのです。わたしは、むかしの異教徒なのです。ローマ人やギリシャ人は、わたしのことを、『<ruby><rb>眠</rb><rt>ねむ</rt></ruby>りの精』と呼んだものですよ。わたしは、いちばんとうとい家の中へもはいっていきましたし、今でもはいっていきます。わたしは、小さい人とも大きい人とも、おつきあいができるのです！　それでは、今夜は、あなたが話をしてやってください！」――

こう言うと、オーレ・ルゲイエは、こうもりがさを持って、行ってしまいました。

「今では、自分の考えを言うこともできんのか！」と、古い肖像画が言いました。

そのときヤルマールは目がさめました。

## 日曜日

「今晩は！」と、オーレ・ルゲイエは言いました。すると、ヤルマールはうなずきました。けれども、すぐさまとんで行って、ひいおじいさんの肖像画を、かべのほうへ向けてしまいました。こうしておかないと、またゆうべのように、口を出されて、お話が聞けなくなってしまいますからね。

「さあ、お話を聞かせて。『一つのさやに住んでいる、五つぶの青いエンドウマメの話』や、『メンドリの足に愛をささやいた、オンドリの足の話』や、『あんまり細いので、ぬい<ruby><rb>針</rb><rt>ばり</rt></ruby>だとうぬぼれている、<span data-tei-rend="bouten 傍点 right" style="text-emphasis-style: filled sesame; text-emphasis-position: over right">かがり</span>針の話』なんかをね」

「お話のほかにも、ためになることはたくさんあるよ」と、オーレ・ルゲイエは言いました。「ところで、今夜は、ぜひともおまえに見せたいものがあるんだよ。わたしの弟なんだがね、名前は、やっぱりオーレ・ルゲイエだよ。もっとも、弟は、どんな人のところへも、一度しかこないがね。くれば、すぐに、その人をウマに乗せて、お話を聞かせてやる。ところが、そのお話というのは、二つっきり。一つは、だれも思いおよばないような、すばらしく美しいお話、もう一つは、ぞっとするような、<ruby><rb>恐</rb><rt>おそ</rt></ruby>ろしい、――とても書くことができないような、お話なんだよ」

そこで、オーレ・ルゲイエは、小さなヤルマールを窓のところへだき上げて、言いました。「ほら、あそこに見えるのが、わたしの弟で、もうひとりのオーレ・ルゲイエだよ。人間は、弟のことを、死神とも言っている。だけど、ごらん。絵本だと、<ruby><rb>骸骨</rb><rt>がいこつ</rt></ruby>ばかりの、恐ろしい姿にかかれているけれども、そんなふうじゃないね。それどころか、銀のししゅうをした、上着を着ている。まるで、美しい<ruby><rb>軽騎兵</rb><rt>けいきへい</rt></ruby>の軍服のようじゃないか！　黒いビロードのマントが、ウマの上でひらひら、ひるがえっている！　あれあれ、あんなに速くウマを走らせているよ！」

言われて、ヤルマールがながめると、そのオーレ・ルゲイエがウマを走らせていました。そして、若い者や、年とった者を、ウマに乗せていました。ある者は前に、また、ある者はうしろに乗せました。けれども乗せる前に、オーレ・ルゲイエは、いつもこうたずねました。

「成績表はどんなだね？」

「いい成績です」と、だれもかれもが、言いました。

「よろしい、ちょっと見せたまえ」と、オーレ・ルゲイエは言いました。

そこで、みんなは、成績表を見せなければなりません。その結果、「<ruby><rb>秀</rb><rt>しゅう</rt></ruby>」と「優」とをもらっていた者は、ウマの前のほうに乗って、楽しいお話を聞かせてもらいます。ところが、「良」と「可」とをもらっていた者は、ウマのうしろのほうにすわって、ぞっとするようなお話を聞かなければならないのです。その人たちは、ふるえながら、泣いていました。ウマからとび下りようとしても、だめなのです。なぜって、みんなはウマに乗せられたとたん、たちまち、根が<ruby><rb>生</rb><rt>は</rt></ruby>えたように、動けなくなってしまうからです。

「だけど、死神って、とってもりっぱなオーレ・ルゲイエだねえ！」と、ヤルマールは言いました。「ぼく、ちっともこわくないよ」

「そう、こわがることなんかないね」と、オーレ・ルゲイエは言いました。「いい成績表を、もらえるようにしさえすればいいんだよ」

「さよう、これはためになる！」と、ひいおじいさんの肖像画が、つぶやきました。「やっぱり、自分の考えを言えば、役にたつのじゃな！」こう言って、肖像画は満足しました。

みなさん！　これが<ruby><rb>眠</rb><rt>ねむ</rt></ruby>りの精のオーレ・ルゲイエのお話です。今夜は、オーレ・ルゲイエが、みなさんに、もっといろいろのお話をしてくれるかもしれませんよ！