Soranoha

神埼歓迎会に於ける演説

かんざきかんげいかいにおけるえんぜつ

大隈 重信

歸郷毎に櫛田神社參拜――平ヶ里は私の領地――仁比山山王社――九州の古社寺――私も諸君と兄弟格――神埼商工業の發展――名物の素麺饂飩――副産物としての藁製品――産業發達と學問の應用――諸君の多幸多福

本日は斯く盛大に私の爲めに歡迎せらるゝは實に忘るゝ能はざる所である。私は郷里に歸る毎に必ず櫛田神社に參拜するのを例としてゐる。吾輩と神埼とは密接な關係がある。即ち此近所の平ヶ里は私の領地であつた。微々たるもので領地と云ふ程の物でもないが、先祖から深い關係があるので、櫛田神社には必ず參拜するのである。

神埼の上手一里の處には仁比山山王神社がある、櫛田社も山王社も共に肥前の社寺中最も古く、否九州中の社寺中でも最も古く由緒ある神社である。諸君は此神社の氏子であつて私も同じく諸君と兄弟格である。然して神埼は郡内の中心であつて、商工業が次第に發展を告げつゝあるは最も喜ぶべき事で、中にも素麺饂飩の如きは此土地の名物であつて、私は子供の時分から嗜好の一つであつた。次に農作の副産物としては藁がある。是は他縣にも輸出せられ、延いては外國にも輸出せらるゝであらう。要するに商業と云ひ、工業と云ひ、其發達を期するは學問の應用に在つて、學問に依つて智能を啓發し、以て普く之を應用しなければならないのである。

尚ほ神埼地方の人士は、普通の人士以上に櫛田神社の神助を享受して働きつゝあるは、多幸多福と云はねばならぬ。故に諸君は一層奮勵努力しなければならないのである。私は今日久振りに懷しき此土地に來り、神の惠に浴する事を得たるは何よりも喜ばしい次第である。

底本 / Source edition

底本:「歸郷記念 大隈侯爵講演集」大隈侯講演集記念刊行會
1918(大正7)年3月3日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:フクポー
校正:植松健伍
2026年1月4日作成
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書誌 / Bibliography
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大隈 重信「神埼歓迎会に於ける演説──(五月二十五日於神埼記念舘)」(旧字旧仮名)、底本『歸郷記念 大隈侯爵講演集』大隈侯講演集記念刊行會、1918年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 058984_001879, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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