今日は一月一日

今日は正月だ

明けましておめでとうって

たとえのようにいうけれど

わたしらはそんなどころではないわ

年がら年じゅう米つくるが商売なのに

一片の雑煮もない

毎年ただ一本きていた

他国からの年賀状も今年は来ない

来るものは町の掛取りや

残りの年ぐ米を取りに来る地主の番頭だ

台所はポチャンポチャンと雨がもる

炭は買えず　もみがらをぶすぶす燃やす

くすぶり火が家一ぱいにひろがる

七十五の婆はあつい汁もあたらず

枯木のような背中を曲げて

水鼻をすすり目をつむっている

十一の弟と七つの妹は

一生けんめい

一銭にもならない繩なうている

賑やかなのは寺の鐘ばかり

あさ早うからやかましい

いくら鐘たたいても

わたしらもうまいる気はせんわ

いくらナミアミダブツ唱いても

飢じい腹はふくれはせんわい

婆に軽いふとんの一枚も着せられないわ

子供のひびあかぎれが快うなりもせんわ

夏のさかりでも白足袋はいて

<ruby><rb>魚</rb><rt>さかな</rt></ruby>喰って何が地獄じゃ　極楽じゃ

何が持ちつ持たれつじゃ

わたしらだとて一人前の人間だ

地主や坊主ばかりが

うまいもの喰って　いい気持ちして

わたしらを家来あつかいにして

その田圃をわたしらに持たせてみろ

みんなの持ち物をおんなじにしてみろ

その上で物が言いたいわ

わたしら　この腕っぷしで

いい米収ってみせるぞ

遊んでいる者が親方で

働く者が家来で

おお　これを××××かえしたいわ

この腕っぷしで目に物見せたいわ

わたしは今日二十三になる百姓女

若い血が湧きたぎる

きっとやってみせる

みんなの胸たたいて

みんな手引っぱって

目に物見せてやるぞ

火ぶた切るのろしの鐘を

村から村に鳴りひびかせてみせるぞ