Soranoha

詩四章

しししょう

三好 達治

春の計畫

粉雪の中で 四十雀が啼いてゐる 春が眞近にせまつてきた

谿間で風が鳴つてゐる 楢山毛欅櫟 それらの枯葉が 雪の上を走つてゐる

山山よ 裸の木木よ 樂しい冬も 間もなく冬も終るだらう

懷かしい私の友垣 風よ 雲よ 山山よ 私達の友情の さて 春の計畫プランを考へよう

その昔

その昔 その山のその旅籠はたごへは 米も野菜も新聞も 煙草も手紙も

電報も 牛の背中で運んできた

谿に臨んだ細路に のつと牝牛が顏を出す 午後二時三時

山では仔牛が待つてゐた 踏みしだかれた草の香の ほろほろ苦い牛小舍に

雪後

向ふの山で樹が伐られる ああまた一本倒された

微かな音も聞えない 小さな人が動いてゐる

たぶんあそこの親爺おやぢだらう…… 息子むすこかな

ヒュッテに煙がたつてゐる

筆硯枯渇

油が盡きた ランプの焔が小さくなる

後ろの山で風が鳴る

やみなん 神かみ安息を垂れ給ふ

萬年筆のインクが凍しみた

底本 / Source edition

底本:「三好達治全集第一卷」筑摩書房
1964(昭和39)年10月15日発行
底本の親本:「明朗 創刊號」
1936(昭和11)年3月
初出:「明朗 創刊號」
1936(昭和11)年3月
※表題は、初出時に与えられたものです。
入力:kompass
校正:大久保 知美
2018年12月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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三好 達治「詩四章」(旧字旧仮名)、底本『三好達治全集第一卷』筑摩書房、1964年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 058750_001749, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite