## 春の計畫

粉雪の中で　四十雀が啼いてゐる　春が眞近にせまつてきた

谿間で風が鳴つてゐる　楢山毛欅櫟　それらの枯葉が　雪の上を走つてゐる

山山よ　裸の木木よ　樂しい冬も　間もなく冬も終るだらう

懷かしい私の友垣　風よ　雲よ　山山よ　私達の友情の　さて　春の<ruby><rb>計畫</rb><rt>プラン</rt></ruby>を考へよう

## その昔

その昔　その山のその<ruby><rb>旅籠</rb><rt>はたご</rt></ruby>へは　米も野菜も新聞も　煙草も手紙も

電報も　牛の背中で運んできた

谿に臨んだ細路に　のつと牝牛が顏を出す　午後二時三時

山では仔牛が待つてゐた　踏みしだかれた草の香の　ほろほろ苦い牛小舍に

## 雪後

向ふの山で樹が伐られる　ああまた一本倒された

微かな音も聞えない　小さな人が動いてゐる

たぶんあそこの<ruby><rb>親爺</rb><rt>おやぢ</rt></ruby>だらう……　<ruby><rb>息子</rb><rt>むすこ</rt></ruby>かな

ヒュッテに煙がたつてゐる

## 筆硯枯渇

油が盡きた　ランプの焔が小さくなる

後ろの山で風が鳴る

やみなん　<ruby><rb>神</rb><rt>かみ</rt></ruby>安息を垂れ給ふ

萬年筆のインクが<ruby><rb>凍</rb><rt>し</rt></ruby>みた