Soranoha

『新辞泉』序文

『しんじせん』じょぶん

新村 出

この辞典の編集方針など、必要な事は一切このあとの凡例(はんれい)にのべますから略しますが、要するに、今度はわたくしがこれ以前に出した中辞典のうち一つ二つとは違って、国語辞典の本体を成るべく固守して、百科辞書風のおもむきを脱却したことが一つの特点です。申さば、標準的な現代語を主として、専ら学生向きに適せしめると共に、一般の社会人に対しての参考用に資したいと思って、作りました。

最近二十年間、わたくしの辞書事業については、絶えず盟友溝江八男太翁から、とても言葉にはつくせぬ程の終始一貫した協力を得たことを感謝しますが、この『新辞泉』もまたそれに洩れません。家庭内に在っては、わたくしの統督と指導との下に、長男秀一が語詞の取捨や選択や詳略などを首め、一語一語の解釈等に及ぶまで、その益友にして旧同僚たる現京都市立紫野高等学校教諭の東辻保和君と共に、国漢の智識と教壇の成果とを傾注してくれたことを特筆しておきます。ましてや清文堂編集部の野中義一氏が、大阪外国語学校仏語科出身たる経歴に由り、殊に外来語そのほかの点に、余力を以て他山の石を供給されたことを忘れるわけにはゆきません。

最後に本辞典の刊行に際して終始努力をされた清文堂社長前田勝雄氏に甚深の感謝を捧げる次第であります。(昭和二十九年九月吉辰)

(昭和二十九年十月刊『新辞泉』)

底本 / Source edition

底本:「新村出全集第九巻」筑摩書房
1972(昭和47)年11月30日発行
初出:「新辞泉」清文堂書店
1954(昭和29)年10月刊
※表題は、「序文」に辞書名を補い、底本編集時に与えられたものです。
入力:フクポー
校正:きゅうり
2019年2月22日作成
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書誌 / Bibliography
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新村 出「『新辞泉』序文」(新字新仮名)、底本『新村出全集第九巻』筑摩書房、1972年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 058506_001938, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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