唐招提寺には鑑眞和上に隨從して來た諸律僧の中の優れた彫刻家が、唐風の樣式をそのまま作り出した佛像が多いので、一種別樣の作風が見られて興味がある。そして此の律宗獨特の作風がすぐあとにつづく弘仁の密教的佛像に影響を與へてゐる點もおもしろい。この如來形像の一木造りの殘缺も遺憾なく當時傳來の技法を示してゐる。大陸で發達した石彫彫刻の技法が檀木の彫刻に自然と移行して來て、この如來形像などはまるで石彫の衣紋そつくりの彫り方が爲てある。しかもそれが石でなくて木材であるため、用刀の制約から必然的に木彫としての特質を生かすことになつてゐるのがおもしろいのである。かういふ樣にして他國の藝術樣式などが消化されてゆくところを見ると、われわれもどしどし平氣で異質の美を世界の到る處から攝取して消化してしまふがいいと思ふ。
唐招提寺木彫如来形像
とうしょうだいじもくちょうにょらいぎょうぞう
高村 光太郎
底本 / Source edition
1957(昭和32)年12月10日初版第1刷発行
1995(平成7)年2月20日増補版第1刷発行
初出:「日本美術の鑑賞 古代篇」帝国教育会出版部
1942(昭和17)年6月20日発行入力:岡村和彦
校正:nickjaguar
2021年3月27日作成
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高村 光太郎「唐招提寺木彫如来形像」(旧字旧仮名)、底本『高村光太郎全集第五卷』筑摩書房、1957年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 058182_001168, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079