## 元気は青年の生命なり

今日の青年は中学でも卒業してから少し筆が立つとか、文学上の事でも研究すると<ruby><rb>直</rb><rt>ただ</rt></ruby>ちに俺は文学者になろうの新聞記者雑誌記者になろうのという考えを起し、小説の一つも書いてみたり論文の一つも<ruby><rb>綴</rb><rt>つづ</rt></ruby>ってみて、いっぱし文学者になった気になる連中が多い。勉強も<ruby><rb>仕</rb><rt>し</rt></ruby>なければ発達も仕ない。<ruby><rb>次第次第</rb><rt>しだいしだい</rt></ruby>に<ruby><rb>惰</rb><rt>なま</rt></ruby>け者になり柔弱になり、少しも青年の元気というものが無くなってしまう。<ruby><rb>不心得</rb><rt>ふこころえ</rt></ruby>千万な事だ。元気は人間の生命といっても好い。ことに青年の生命である。青年にして既にこの元気が無いなら、もはや何事も<ruby><rb>成遂</rb><rt>なしと</rt></ruby>ぐることは出来ない。〔<ruby><rb>豊臣</rb><rt>とよとみ</rt></ruby>〕<ruby><rb>秀吉</rb><rt>ひでよし</rt></ruby>や〔<ruby><rb>徳川</rb><rt>とくがわ</rt></ruby>〕<ruby><rb>家康</rb><rt>いえやす</rt></ruby>の如きはその人格の果して<ruby><rb>如何</rb><rt>いか</rt></ruby>なる人で在ったかは、今日未だ断定することは出来ない。何となれば歴史は彼等の全体を<ruby><rb>窮</rb><rt>うかが</rt></ruby>うに足らないから、ことに家康の如きに至ってはあまりに誇張せられたる部分が多くないかとの嫌いがある。しかしながら、一生を通して如何に彼等が元気の旺盛な人物で有ったかという事だけは断言する事が出来る。大人物というも他にはない。ただ旺盛な元気を何時でも持って小成に安んぜず、勇進向上する者の<ruby><rb>謂</rb><rt>いい</rt></ruby>である。これがまず今日の青年に望む第一の要件であるが、更に進んでは青年<ruby><rb>宜</rb><rt>よろ</rt></ruby>しく世界の大勢を察知して日本の位置を知り、以て自己の立場を確立して誤らざる事である。

## 科学の競争に於て外国に勝て

来るべき世界の競争は科学の競争である。日本は武を以て世界に勝るといって安心する事は出来ない。平和の戦たる科学の大戦争に於て大勝利を見るに非ざれば、決して安心する事は出来ない。

<ruby><rb>勿論</rb><rt>もちろん</rt></ruby>文学美術その他何でも世界に勝るに於て不可なる事は無いが、元来日本は火山脈の多い国で、この点に於ては欧州の<ruby><rb>伊太利</rb><rt>イタリア</rt></ruby>を除いては他に匹敵する国はない。これに<ruby><rb>由</rb><rt>よ</rt></ruby>りて見ると、日本は科学の応用に<ruby><rb>依</rb><rt>よ</rt></ruby>って化学的工業、鉱山事業、紡績事業等は他の事業に比してなかんずく開発進歩を計らなければならない事は明らかである。これらの事業に依って将来我が日本は世界の優位に立つべきは、まさに我が国の天職というも<ruby><rb>差支</rb><rt>さしつか</rt></ruby>えないくらいである。<ruby><rb>然</rb><rt>しか</rt></ruby>るに事実は全くこれに反して、ほとんど比較する事の出来ないほど劣っている。悲しい事ではあるが日本ではその原料を外国に供給してやって、出来上がった上でそれを外国から輸入しているという始末だ。外国へ原料を安く売って品物を造ってもらって高く買う。まるであべこべな話である。それからまた留学生を出す。これも向うが進歩しているから仕方がないけれども、今日のところただ外国を模倣するに過ぎぬ。速やかに一頭地を抜んずるようにならんければならない。これ青年の一大奮発を要するところである。

## 小成に安んぜず奮闘一番せよ

が、ここにもまた前いう通り元気が必要である。日本でも今日はよほどこれらの先覚も有って色々の新事業を興し、新発明等をするものも段々出来たが、<ruby><rb>如何</rb><rt>いかん</rt></ruby>せん考えが小さいから、ちょっとした物でも発明するともう自分は大発明家にでもなったように自慢する。少し気の<ruby><rb>利</rb><rt>き</rt></ruby>いた新会社でも興すともう自分は成功したかの如く思って小成に安んずる。大勇猛進が無いのである。

今日の青年は<ruby><rb>須</rb><rt>すべか</rt></ruby>らく奮闘一番して不生産的な閑事業や、さなくば投機的の暴利を<ruby><rb>貪</rb><rt>むさぼ</rt></ruby>り望むが如き悪弊を脱して盛んに新方面に活動してもらいたい。