Soranoha

簡易銷夏法

かんいしょうかほう

長塚 節

私の樣に田舍にばかり居て何といつて極つた用もないものには銷夏法抔といふ六かしいことを考える必要もなく隨つて名案もありません只今では少し百姓の方に手を出して居るので氣候が暑く成るに連れてずん〱と氣持のよく成るのが畑の陸稻です大豆の葉の朝風にさわ〱と搖れるのも目が醒めるやうです暇の折には自分の仕付けた畑を何遍となく廻つて歩きます幾ら見ても飽きることが有りません作物の凡でが「凡でが」はママどうも主任者たる私が居ないとうまく行かない樣ですそれで今年は此の農作物に引きとめられて森の中の家で夏を過すことに成るのでせう愈暑さが酷く成ると私は庭前の井戸端で日に數回冷水を浴びます其度に單衣の肌觸りが何ともいひない善い心持です汗に成れば早速井戸端で大きな盥へ冷水を汲んでがぶ〱と浴びるのが毎年繼續して居る銷夏法ともいひ得るのでせう此が私の暑さ凌ぎにも一番なので有ります。

(大正二年八月一日發行、中央公論 所載)

底本 / Source edition

底本:「長塚節全集 第五巻」春陽堂書店
1978(昭和53)年11月30日発行
初出:「中央公論」
1913(大正2)年8月1日
入力:岡村和彦
校正:高瀬竜一
2016年6月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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長塚 節「簡易銷夏法」(旧字旧仮名)、底本『長塚節全集 第五巻』春陽堂書店、1978年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 057445_000118, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite