吾老いぬれど

仙家に入らず

茶烟軽く

紅塵の<ruby><rb>裡</rb><rt>うち</rt></ruby>に住む

<ruby><rb>柴門</rb><rt>さいもん</rt></ruby>を守るは

吾家の月

竹窓に吹くは

隣家の風

人来れば

迎へて会ふ

人去れば

<ruby><rb>吾座</rb><rt>わがざ</rt></ruby>にもどる

眠り足りて

夢なく

起きて

<ruby><rb>倦</rb><rt>う</rt></ruby>むことなし

昼には

昼に書くことあり

夜には

夜に語ることあり

世にあづけたる

わが<ruby><rb>寿</rb><rt>いのち</rt></ruby>は

時来らば

世に返さむ

草の生命は

わが生命より短く

樹の年輪は

わが年輪より多し

わが生命の一瞬

心眼明らかに

天人の五衰は

問はず