□先月号は風俗壊乱と云ふ名の下に発売を禁止されました。忌諱にふれたのは原田さんのらしいのです、他には何にもそんなのはありませんから。私は少しもそんなことを考へずに、可なりさうした考へが誰の頭にも浮ぶことを思つて立派な一つの問題を提供するものとしてのせました。けれども私は不注意な編輯者としてしかられました。けれども私は可なりあの堕胎とか避妊と云ふことについて男の人たちの意見は聞きました、けれども女の意見は聞きませんから知りたいと思つたのです、今でもその考へはあります。

□それで、私は早くからかういふことについても考へてゐたのです、此雑誌に出る作品は大抵何かしら問題をもつたものが一つや二つありますので、それを考へる方はまじめに考へられませうけれど気づかずに過すことが可なりあると思ひますので毎月前月号に出たものゝなかから、その出た月に、どれを問題にすると云ふことを<ruby><rb>極</rb><rt>き</rt></ruby>めておいて皆でいろんな方面から研究してこの次のか次の次のかで発表することにしたらと思ひます。それはたゞ一人々々でずん〱よんでおもしろかつたと云ふ<ruby><rb>丈</rb><rt>だ</rt></ruby>けよりも更にもつといゝ何かしらを得ることになると思ひます、それで前号にも申ましたやうに八月は一月やすみまして九月の紀念号からしつかりしたものを出したいと思ひます。丁度いゝ機会ですから九月から初めやうと思ひます、それで九月号には堕胎避妊についてのお考へを成べく多数の方から伺ひたう御座います、これも前月に申ました日記や感想とおなじに、たゞもうお考へになつたことをそのまゝお書き下さればいゝのでしてどんなに永くても短かくてもかまひません、何卒読者諸姉のまじめなお考へを伺ひたいと思ひます。

□今迄は原稿の〆切がかなり後れましたが以後は十五日には<ruby><rb>屹度</rb><rt>きっと</rt></ruby>集めてしまひたいと思つてゐますから右の原稿をどうぞそのおつもりでお願ひいたします。但し此度は八月号をやすみますから七月一杯か、おそくも八月十日までにはお送りを願ひます、頁がふえますから印刷所にはやくまはさなければ間に合ひませんから。

□私は七月中旬迄には一度九州の実家へかへらうと思つてゐます。九月号の原稿は七月十日過ぎならば左の所あてにお願ひいたします。

福岡県糸島郡今宿村　伊藤野枝

□今月は先月の禁止の埋め合はせをするつもりでゐましたが廿日頃まではいろ〱な印刷所をかへたり何かする用事で原稿がかけないで廿日すぎてからは毎日のやうに気分がわるかつたり何かしてすつかりおくらして仕舞ひましたので何にも書けませんでした。九月号には七月一杯かゝりで少し立派なものを書きたいと思つて居ります。九月にはどうかしていゝ雑誌を出したいと思つてゐます。

□平塚<ruby><rb>明</rb><rt>はる</rt></ruby>氏は四ツ谷南伊賀町四一にお越しになりました。

□可なり苦しい遣繰りをしてゐましたのに此度また発売禁止を喰ひましたので大分困つて居ります。購読費の切れた方は何卒お払ひ込み下さいますやうお願ひいたします。

□今月はまたおち〱本をよむことも出来ませんでした為めに新刊紹介を思ふやうにすることが出来ませんでした。何卒あしからず。九月号からは屹度いたします。

□大杉栄氏は小石川区<ruby><rb>水道端</rb><rt>すいどうばた</rt></ruby>二ノ十六に<ruby><rb>仏蘭西</rb><rt>フランス</rt></ruby>文学研究会をおいて毎週土曜の夜高等科では一回読み切りの小説脚本、講演等を講義し猶別に初等科をおいて仏語を初歩から教授なさるさうです。

［『青鞜』第五巻第七号、一九一五年七月号］