塗板がセンベイ食べて
春の日の夕暮は静かです
アンダースロウされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は穏かです
あゝ、案山子はなきか――あるまい
馬嘶くか――嘶きもしまい
たゞたゞ青色の月の光のノメランとするまゝに
従順なのは春の日の夕暮か
ポトホトと臘涙に野の中の伽藍は赤く
荷馬車の車、油を失ひ
私が歴史的現在に物を言へば
嘲る嘲る空と山とが
瓦が一枚はぐれました
春の日の夕暮はこれから無言ながら
前進します
自らの静脈管の中へです
はるのゆうぐれ
中原 中也
塗板がセンベイ食べて
春の日の夕暮は静かです
アンダースロウされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は穏かです
あゝ、案山子はなきか――あるまい
馬嘶くか――嘶きもしまい
たゞたゞ青色の月の光のノメランとするまゝに
従順なのは春の日の夕暮か
ポトホトと臘涙に野の中の伽藍は赤く
荷馬車の車、油を失ひ
私が歴史的現在に物を言へば
嘲る嘲る空と山とが
瓦が一枚はぐれました
春の日の夕暮はこれから無言ながら
前進します
自らの静脈管の中へです
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c中原 中也「春の夕暮」(新字旧仮名)、底本『新編中原中也全集 第二巻 詩Ⅱ』角川書店、2001年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 055904_000026, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079