Soranoha

「白秋詩集」第二巻解題

はくしゅうししゅう だいにかんかいだい

北原 白秋

一、本巻には処女詩集「邪宗門」、抒情小曲集「思ひ出」、及び少年期の長篇数種を収めた「朱泥の馬」、それに補遺の数篇とを輯める事にした。本巻に於ても亦公刊した集はなるべく原形の儘にした。

一、「邪宗門」は明治四十二年三月の初版である。同三十九年の四月から四十一年の臘月に至る約三年間の所作を収めたもので、私の初期の象徴詩その他を代表した集であつた。本集は危うく絶版の悲運に際会しようとしたが四十四年の十一月に書肆を換えて再版し、なほ大正五年の六月に更に増補訂正して三版した、その後引続いて版を重ねてゐる。この中、ことに初版「邪宗門」はその装幀に於て当時の贅を尽してゐた。何処を探してももう滅多に無い。

一、「思ひ出」は明治の四十四年六月に初版を出した。この集こそ私の出世作であつた「邪宗門」の前半や「東京景物詩」と同時の所作であつて、主として幼時の追憶をのみ輯めてある。但しこの中の「おもひで」二十篇の追憶体は初めて詩らしいものを書き出した初めてのもので、それらは「邪宗門」以前の作である。

一、「朱泥の馬」に収めた長篇数種は中学時代に書いた「林下の黙想」以後、私の少年期の所作である。これらは主として雑誌の「文庫」に投稿した。尤も「霊場詣」以下は雑誌「明星」に載せて貰つたものである。今から見ると、ただ架空な夢や生命の無い美辞麗句ばかりあつめてゐる。あの頃は何でも美しい事ばかり歌へばいゝと思つてゐた。耻かしくて顔から火が出さうであるが、これも一つの道程だと思つて巻尾に収める事にした。

一、「補遺」は少々にした。まだ拾へば随分沢山にあるであらうが、可なり散逸してもゐるし、どうせ仕方のないものなので思ひきり棄てゝ了つた。

一、なほ本巻編纂に際しても、一集一集の序文なり余言なりを除いて本文だけにした。私のこれまでの詩集は一冊一冊に各独特の風情があるが、ことに「邪宗門」と「思ひ出」はその中で最も異色のある内容外形を備へてゐる。「思ひ出」の序文の如きは五十頁に亘る長文で、是非読んでほしいものである。それを読んでいただくと、なほさらトンカジヨンの生ひ立ちがよくわかる。

一、巻尾にこれまで発刊した私の詩集目録を添へて置いた。尤も歌集は入れてゐない。一々に探し出して読んでいたゞけばこれ位著者にとつて有り難い事は無い。

底本 / Source edition

底本:「白秋全集 3」岩波書店
1985(昭和60)年5月7日発行
底本の親本:「白秋詩集 第二巻」アルス
1921(大正10)年1月1日刊行
初出:「白秋詩集 第二巻」アルス
1921(大正10)年1月1日刊行
※底本における表題「第二巻解題」に、底本の親本名を補い、作品名を「「白秋詩集」第二巻解題」としました。
入力:岡村和彦
校正:フクポー
2017年3月11日作成
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書誌 / Bibliography
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北原 白秋「「白秋詩集」第二巻解題」(新字旧仮名)、底本『白秋全集 3』岩波書店、1985年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 055620_000106, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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