月青く人影なきこの深夜

家々の閨をかいま見つゝ

白き巷を疾くよぎる侏儒の影あり

愚かなる<ruby><rb>状</rb><rt>さま</rt></ruby>して黒々と立てる屋根の下に

<ruby><rb>臥所</rb><rt>ふしど</rt></ruby>ありて人はいぎたなく眠れり

家々はかく遠く連なりたれど

眠の罪たるを知るもの絶えてあらず

月も今宵その青き光を恥ぢず

<ruby><rb>快楽</rb><rt>けらく</rt></ruby>を欲する人間の流す

いつはりの涙に媚ぶと見えたり

かゝる安逸の領ずる<ruby><rb>夜</rb><rt>よる</rt></ruby>なれば

あらんかぎりの<ruby><rb>男女</rb><rt>をとこをみな</rt></ruby>の肌を見んとて

魔性の侏儒は心たのしみ

おもはゆげもなく軒より軒へ

白き巷をよぎりゆくなり