Ⅰ

<ruby><rb>陽</rb><rt>ひ</rt></ruby>の<ruby><rb>眼</rb><rt>め</rt></ruby>を知らぬ原始林の

幾日幾夜の旅の間

わたくし　熟練な未知境の探険者は

たゞふかぶかと頭上に生ひ伏した闊葉の

思ひつめた吐息を聴いたのみだ。

たゞ<ruby><rb>蹠</rb><rt>あなうら</rt></ruby>に踏む湿潤な苔類の

ひたむきな情慾を感じたのみだ。

Ⅱ

まことに原始林は

光なき黄金の水蒸気に氾濫し

夏の日の大いなる堆肥の内部さながらに

エネルギーの無言の大饗宴であつた。

あゝ嘗て私の狂愚と慚羞とを照した太陽は

この探険の最初の日

さりげなく　だが　赤々とその身を萎み

私をこの植物の大穹窿の中へと解き放つた。

その日から私に与へられたのは

獣類の眠りのやうな漆黒の忘却であつた……

それを思へば

今もなほ　あゝ　喜びに身が慄ふ！

Ⅲ

毛並さはやかな仔豹のやうに　しづしづと

また軽捷に

私は怪奇な木賊族の夢を貪婪に掻き分けた――

何ものの悪意も知らず　怖れもなくて

強靱な植物らの絶え間なく発汗する

強酒のやうな露を身に浴び

誇りかに　たゞ誇りかに

鼻孔をひらき　かぐろいエーテルを分けて進み行くわが身は

心楽しく闇と海とに裂傷をつくる

春の夜の無心の帆船であつた。

だが　ときをりは

嘗て見た何かの<ruby><rb>外套</rb><rt>マントオ</rt></ruby>のやうな

巨大な闊葉の披針形が

月光のやうに私の心臓に射し入つてゐたこともあつたが……

Ⅳ

恥らひを知らぬ<ruby><rb>日</rb><rt>にち</rt></ruby>々の燥宴のさなかに

ある日（呪はれた日）

私の暴戻な肉体は

大森林の暗黒の赤道を航過した！

盲ひたる　酔ひしれたる一塊の肉　私の存在は

何ごともなかつたものゝやうに

やはり得々と　弾力に満ちて

さまざまの樹幹の膚の畏怖の中を

軽々と摺り抜けて進んでは行つたが、

しかし

喩へば肉身を喰む白浪の咆吼を

砂丘のかなたに予感する旅人のやうに

心はひそやかな傷感に衝き入られ

何のためとも知らぬ身支度に

おのが外殻の硬度を験めす日もあつたのだ！

Ⅴ

（未完）