半缺けの日本の月の下を、
一寸法師の夫婦が急ぐ。
二人ながらに 思ひつめたる前かゞみ、
さても毒々しい二つの鼻のシルヱツト。
生白い河岸をまだらに染め抜いた、
柳並木の影を踏んで、
せかせかと――何に追はれる、
揃はぬがちのその足どりは?
手をひきあつた影の道化は
あれもうそこな遠見の橋の
黒い擬宝珠の下を通る。
冷飯草履の地を掃く音は
もはや聞えぬ。
半缺の月は、今宵、柳との
逢引の時刻を忘れてゐる。
かげえ
富永 太郎
半缺けの日本の月の下を、
一寸法師の夫婦が急ぐ。
二人ながらに 思ひつめたる前かゞみ、
さても毒々しい二つの鼻のシルヱツト。
生白い河岸をまだらに染め抜いた、
柳並木の影を踏んで、
せかせかと――何に追はれる、
揃はぬがちのその足どりは?
手をひきあつた影の道化は
あれもうそこな遠見の橋の
黒い擬宝珠の下を通る。
冷飯草履の地を掃く音は
もはや聞えぬ。
半缺の月は、今宵、柳との
逢引の時刻を忘れてゐる。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c富永 太郎「影絵」(新字旧仮名)、底本『富永太郎詩集』現代詩文庫、思潮社、1975年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 055470_000678, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079