立ち去つた私のマリアの記念にと
友と二人アプサントを飲んだ帰るさ
星空の下をよろめいて、
互の肩につかまりあつた。
――もうあの女に会へないと決まつたときは
泣いたせゐで、俺は結膜炎に罹つたつけ。
――さうさう、すると、眼を泣き潰したといふ昔話も
まんざら嘘ぢやないかもしれない。
さるいかめしい黒塀の角を曲がつたとき
球をつくキユーの花やいだ響きに
見上げる眼にふと入つた
薔薇色の天井に張りわたした蜘蛛手の万国旗……
COLLOQUE MOQUEUR
富永 太郎
立ち去つた私のマリアの記念にと
友と二人アプサントを飲んだ帰るさ
星空の下をよろめいて、
互の肩につかまりあつた。
――もうあの女に会へないと決まつたときは
泣いたせゐで、俺は結膜炎に罹つたつけ。
――さうさう、すると、眼を泣き潰したといふ昔話も
まんざら嘘ぢやないかもしれない。
さるいかめしい黒塀の角を曲がつたとき
球をつくキユーの花やいだ響きに
見上げる眼にふと入つた
薔薇色の天井に張りわたした蜘蛛手の万国旗……
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c富永 太郎「COLLOQUE MOQUEUR──Depuis que Maria ma quitte pour aller dans une autre etoile ―― Mallarme」(新字旧仮名)、底本『富永太郎詩集』現代詩文庫、思潮社、1975年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 055463_000678, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079