きその日は思むすぼれ、とぼとぼと 馬を進むる憂き旅路、これも旅かや まのあたり、路のもなかに「愛」の神、 巡禮姿、しほたれて、衣手輕し。 うれはしき其かんばせは、さながらに、 位はがれしやらはれのやつれ姿か、 憂愁の思にくれて吐息がち、 人目を避けて、うなだるゝあはれの君よ。 ふとしもわれを見給ひて呼び給ふやう、 『われは、今、かの遠里をはなれ來ぬ。 さきにはそこに汝が身の心の臟をぞ 置きたれど、新の悦得させむと 持ち來りぬ』とのたまひつ、忽ちわれに 憑きたまひ、消え失せたるぞ不思議なる。