Soranoha

骨のうたう(原型)

ほねのうたう(げんけい)

竹内 浩三

戦死やあわれ

兵隊の死ぬるやあわれ

とおい他国で ひょんと死ぬるや

だまって だれもいないところで

ひょんと死ぬるや

ふるさとの風や

こいびとの眼や

ひょんと消ゆるや

国のため

大君のため

死んでしまうや

その心や

苔いじらしや あわれや兵隊の死ぬるや

こらえきれないさびしさや

なかず 咆えず ひたすら 銃を持つ

白い箱にて 故国をながめる

音もなく なにもない 骨

帰っては きましたけれど

故国の人のよそよそしさや

自分の事務や 女のみだしなみが大切で

骨を愛する人もなし

骨は骨として 勲章をもらい

高く崇められ ほまれは高し

なれど 骨は骨 骨は聞きたかった

絶大な愛情のひびきを 聞きたかった

それはなかった

がらがらどんどん事務と常識が流れていた

骨は骨として崇められた

骨は チンチン音を立てて粉になった

ああ 戦場やあわれ

故国の風は 骨を吹きとばした

故国は発展にいそがしかった

女は 化粧にいそがしかった

なんにもないところで

骨は なんにもなしになった

底本 / Source edition

底本:「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」藤原書店
2001(平成13)年11月30日初版第1刷発行
2002(平成14)年8月30日初版第5刷発行
入力:坂本真一
校正:雪森
2014年7月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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竹内 浩三「骨のうたう(原型)」(新字新仮名)、底本『竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻』藤原書店、2001年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 054814_001675, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite