あの山を越えるとき

おれたちは機関車のように　蒸気ばんでおった

だまりこんで　がつんがつんと　あるいておった

急に風がきて　白い雪のかたまりを　なげてよこした

水筒の水は　口の中をガラスのように刺した

あの山を越えるとき

おれたちは焼ける<ruby><rb>樟樹</rb><rt>くすのき</rt></ruby>であった

いま　あの山は　まっ黒で

その上に　ぎりぎりと　オリオン星がかがやいている

じっとこうして<ruby><rb>背嚢</rb><rt>はいのう</rt></ruby>にもたれて

地べたの上でいきづいていたものだ

またもや風がきて雨をおれたちの顔にかけていった