上衣のボタンもかけずに
厠へつっ走って行った
厠のまん中に
くさったリンゴみたいな電灯が一つ
まっ黒な兵舎の中では
兵隊たちが
あたまから毛布をかむって
夢もみずにねむっているのだ
くらやみの中で
まじめくさった目をみひらいている
やつもいるのだ
東の方が白んできて
細い月がのぼっていた
風に夜どおしみがかれた星は
だんだん小さくなって
光をうしなってゆく
たちどまって空をあおいで
空からなにか来そうな気で
まってたけれども
なんにもくるはずもなかった
よどおしかぜがふいていた
竹内 浩三
上衣のボタンもかけずに
厠へつっ走って行った
厠のまん中に
くさったリンゴみたいな電灯が一つ
まっ黒な兵舎の中では
兵隊たちが
あたまから毛布をかむって
夢もみずにねむっているのだ
くらやみの中で
まじめくさった目をみひらいている
やつもいるのだ
東の方が白んできて
細い月がのぼっていた
風に夜どおしみがかれた星は
だんだん小さくなって
光をうしなってゆく
たちどまって空をあおいで
空からなにか来そうな気で
まってたけれども
なんにもくるはずもなかった
記録は下にリンクした署名済みの TEI ファイルです。このページはそれを読むための一つの形です。読みが複数ある箇所は一つだけを本文に示し、もう一方は語の title に残しています。 / The record is the signed TEI file linked below. This page is one way of reading it. Where the text has more than one reading, the page shows one of them and keeps the other on the word itself, in its title text.
913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c竹内 浩三「夜通し風がふいていた」(新字新仮名)、底本『竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻』藤原書店、2001年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 054782_001675, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079