くらがり なすによしなき哀れさよ、 早や日数経て、今日の日も 暗がりわたる物おもひ。 水や空なる波の上に、 淋しくかゝる綾雲は、 やがて消ゆべき希望かや。 その希望もて吾が道は、 深海の底の青貝の、 螺線の中のゆきもどり。 物の幾度□貝□葉に、 灰色なせる涙もて、 悲哀の文字を印せしも、 暗き深みのみなぞこの、 声も言葉もかよわねば、 昨日も今日も、かくて暮れゆく。 暮の鐘 灰色の雲かさなりて、 黄昏は死人のけわひ。 しく〱と泣きいる風は、 谷隈の底をはひ出で、 黄ばみたる木立はらひぬ。 冷やかな自然よ君と、 今日も又、かくて暮れゆく、 哀音の鐘の響きは、 痛みたる君が胸より、 傷た振るる、苦患の声か。 うなだるる眼ひらきて 黄昏の空を仰げば 奥津城の岩のほとりの、 小山なす屍の上に、 胸もどき声をきゝしる。