Soranoha

秋の小曲

あきのしょうきょく

漢那 浪笛

◉

秋の木の葉がふるひ出す、

ものにおびへた眼めの色は、

たゞ白しろびかり――何を見る。

ひら〱と黄葉きはがちる、

彼れは何処へ? 真暗まつくらな、

谷へほこらへ――あな消へた。

◉

暗い森から鳥とりが啼く、

あなほろ〱と、そこなりに………

ある触るる音よ、暮くるるる日の

天そらと人とのなかを過ぐ。

食ひのこしたるパンの切れ、

ぢつとみつめば、涙ぐむ。

◉

白髪しらが頭のお爺ぢいさん、

曲まがつた腰もかまはずに、

物識ものしり顔に世を渡る。

前にあるのは何かいな、

後うしろにゐるのは誰れかいな、

静かに眼まなこひらき見よ!

前にあるのは白き家、

後ろにあるは、黒き影、

なかのお爺さんそを知らぬ。

◉

空が焼けた、真紅まつかにやけた!

悪しき獣を屠はふつたやうに………。

空の自然□(不明)鏡レンズなら、

人間道 悲惨みぢめな心、

写し出いだした地獄□(不明)か?

底本 / Source edition

底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※[#ローマ数字1、1-13-21]」国書刊行会
1991(平成3)年6月6日第1刷
初出:「沖縄毎日新聞」
1912(大正元)年11月6日
※初出時の署名は「浪笛」です。
入力:坂本真一
校正:良本典代
2016年9月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
/works/054543_001666/tei
プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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漢那 浪笛「秋の小曲」(新字旧仮名)、底本『沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ』国書刊行会、1991年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 054543_001666, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite