Soranoha

蘭郁二郎氏の処女作

らんいくじろうしのしょじょさく

大倉 燁子

「探偵文学」誌上で発表された時、非常な好評を博した蘭郁二郎氏の「夢鬼」がこの度上梓された。私は早速また繰返して読んだ。いくたび読んでも面白い。

妖魔の如き美少女葉子と、醜い憂鬱な少年黒吉との曲馬団の楽屋裏における生立から始まり、幼い二人はいつか互に愛しあうようになる。葉子にとっては戯れのようなこの恋も、黒吉にとっては実に命がけのものであったが、やがて移り気な彼女に捨てられる。恋に破れた彼は彼女を遂に殺し、その死体を抱いて飛行機から飛降り心中をするという終端まで一気に読んでしまった。そしてその後もなお妖しき興奮はなかなか冷めなかった。黒吉少年が最も得意とするブランコからブランコに飛びうつる曲芸がある、その空を切って懸命に影を描き得られたのではあるまいか。この点だけでも心霊学に造詣ふかい方だと想像される。「夢鬼」以下五つの短篇を添えてあるが、何れも興味ふかく読んだ。「歪んだ夢」もやはり心霊小説のような気がした。この五篇の中では「魔像」が一番面白かった。

底本 / Source edition

底本:「大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子探偵小説選」論創社
2011(平成23)年4月30日初版第1刷発行
底本の親本:「読売新聞」
1936(昭和11)年12月9日
初出:「読売新聞」
1936(昭和11)年12月9日
入力:kompass
校正:門田裕志
2013年1月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
/works/054462_001669/

大倉 燁子「蘭郁二郎氏の処女作──――「夢鬼」を読みて――」(新字新仮名)、底本『大倉燁子探偵小説選』論創社、2011年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 054462_001669, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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