この傾斜では
お伽話はやめて
こはれたオペラグラスで
アラベスク風な雨をごらん
ひととき鳩が白い耳を洗ふと
シガーのやうに雲が降りて来て
ぼくの影を踏みつけてゐる
光のレエスのシヤボンの泡のやうに
静かに古い楽器はなり止む
そして…………
隕石の描く半円形のあたりで
それはスパアクするカアブする
匂ひの向ふに花がこぼれる
優しい硝子罎の中では
ひねくれた愛情のやうに
ぼくがなくした時刻をかみしめる
ぼくはぼくの歌を忘れてゐる
うたのないうた
森川 義信
この傾斜では
お伽話はやめて
こはれたオペラグラスで
アラベスク風な雨をごらん
ひととき鳩が白い耳を洗ふと
シガーのやうに雲が降りて来て
ぼくの影を踏みつけてゐる
光のレエスのシヤボンの泡のやうに
静かに古い楽器はなり止む
そして…………
隕石の描く半円形のあたりで
それはスパアクするカアブする
匂ひの向ふに花がこぼれる
優しい硝子罎の中では
ひねくれた愛情のやうに
ぼくがなくした時刻をかみしめる
ぼくはぼくの歌を忘れてゐる
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c森川 義信「歌のない歌──《夕暮に》」(新字旧仮名)、底本『増補 森川義信詩集』国文社、1991年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 054365_001652, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079