波がものを言ふやうになつてから
誰も姿を見せない砂浜に
抵抗する事を知らない貝殻のやうな女が
私生児を抱いて立つてゐた
それは――生きる為には、生きる為には
泥蟹をまで食べなければならぬ
悲しい漁村の一つの姿である
夢を見ることのゆるされない漁村の娘は
今日泥蟹の殻ばかりを捨てに行くのだつた
ぎょそん
森川 義信
波がものを言ふやうになつてから
誰も姿を見せない砂浜に
抵抗する事を知らない貝殻のやうな女が
私生児を抱いて立つてゐた
それは――生きる為には、生きる為には
泥蟹をまで食べなければならぬ
悲しい漁村の一つの姿である
夢を見ることのゆるされない漁村の娘は
今日泥蟹の殻ばかりを捨てに行くのだつた
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c森川 義信「漁村」(新字旧仮名)、底本『増補 森川義信詩集』国文社、1991年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 054258_001652, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079