Soranoha

我々は牢獄で何をなすべきか

われわれはろうごくでなにをなすべきか

槙村 浩

現在ほど、国家機構に直面する牢獄におけるわれ〱の態度の乱れ勝ちな、しかも現在ほど、その統一を必要とする時代はない。

われ〱はこれについて、苦惨な体験にもとづき、左の如きものを基本的態度と考える。

1、われ〱はいかなる場合にも、断乎としてわれ〱の利害を主張し、断じて転向、裏切り、消極的、個人的行動をとってはならぬ。たヾ一人の最も部署に及ぼす影響も、主観的情勢の極めて立ち遅れている現在の日本としては、百パーセントに階級的利益の線に沿って守られねばならぬ。一語の転向声明も断然たる階級的裏切者である。この点について、何等の釈明も許されぬ。停滞期と前進期とによって、この点に差別はない。

2、われ〱がマルキストたるのは、たヾ組織による。一切の場合、組織は絶対である。政治的警察囚、未決囚、既決囚の各部の組織、全国的組織、他の囚人を含む任意のグループ的組織に、われ〱は常にヘゲモニーをとって、われ〱の利益を大胆に主張し、部署の責任者を定め、かつ組織の統制をして一糸乱れしめぬようにせねばならぬ。

3、牢獄は死の場処であると共に、一時的な国営ホテルの舎房であるに過ぎぬ。われ〱は遠慮なく、亭主、使用人、食料係、医師、書籍係に対して、思う存分要求せねばならぬ。われ〱プロレタリアートの汗のしづくによって積み上げられた国費をもって支弁せしめられている以上、さらにわれ〱の自費を追加するのは愚の極である。そして強制収容后力と力の押し合いが一段落ついた場合には、可及的早く脱獄せねばならぬ。もし非合法手段がとられざる場合には、単に医師の診断書一枚があれば足る。現在若き日の非衛生的拘禁は、それ自身拷問であり、かてゝ加えて拷問は日夜あらゆる手段で加えられる。これは常に一種の牢獄病を誘発する。牢獄付きの医師は、何等かの病名を付し、合法的脱獄を許可するの義務を、われ〱に対して負う。われ〱は執拗にデモ、ハンストをもって要求せねばならぬ。もし能わずんば、普通三十円以上の身の代金と、国家が身の代金保管に関する責任を負うかぎりにおいて、われ〱も身の代金の意義に関して責任を負う旨の一通の証書とを交付し、堂々と国家を買収して脱獄することが出来る。これは憲法と刑法と監獄法に明記するところのものである。われ〱はしば〱あるように当局官吏の欺瞞政策に欺かれることなく、堂々かつ執拗に要求せねばならぬ。

4、現在科学的拷問は惨虐を極め、精巧な機械は、瞬間にして殺人電波によって目に見えずして人を殺しうると伝えられる。毒殺の如きは、最もひん/゜\と行われる。科学的知識の欠如が、われ〱をして時機を逸せしめぬように、われ〱は周到な用意と打合せと団結要求とを怠ってはならぬ。これは実にわれ〱が不注意でいる間に、積極的に逆襲せられがちであるから、われ〱としては不断の注意と攻勢とを守らねばならぬ。

5、不幸にして事及ばず、また外部からの連絡を絶たれて下獄した場合には、天皇直営監獄部屋の一労働者たることを明瞭に自覚し、労働組合、諸種のグループ、及び××組織の確立に努め、上からの全員委員会をまで逆用し、出来る限りのことをせねばならぬ。

6、健康闘争

7、勉強。

8、連契。責任面会者を必ず定め、随時責任引取人たらしむべく、能うる限りの活躍をせしめること。手紙と面会は、出来るだけ多くの人にせねばならぬ。

外部にいる人の義務としては、出来るだけがんばらして、病気による執行停止名義で一日も早く出す事が急務である。たとえいかなる口実ありとも、がんばらなかった以上はがんばらなかった事が悪い、とゆうことを人民の前に公然と告白せねば、決してもとの階級的部署につくことは出来ぬ。そうでなくてつく場合に、くだらぬ不平やボス根性を起して、いわざる、見ざる、聞かざる主義の上に出ようとするために、実に多くの弊害が起りすぎる。今こゝに名をあげぬが、堂々たる文筆上の名士で、公然半公然の転向声明后不都合な口実を惜用して、自分の裏切り行為をもみけし、非合法の秘密曝露のために、奇怪な攪乱機関をこしらえて、労働者を瞞着するものは実に多いのであり、彼等は漏洩を怖れると、奇怪な買収と弾圧を講じて、現在日本階級戦線上の最も憎むべき敵の隠然たる部分を形成しつゝある。彼等の詳細の問題については、次稿多くの確証を発表するであろう。

底本 / Source edition

底本:「槇村浩全集」平凡堂書店
1984(昭和59)年1月20日発行
入力:坂本真一
校正:雪森
2014年8月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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書誌 / Bibliography
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槙村 浩「我々は牢獄で何をなすべきか」(新字新仮名)、底本『槇村浩全集』平凡堂書店、1984年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 054247_001585, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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