Soranoha

みんな悲しげにそう思う

みんなかなしげにそうおもう

倉橋 潤一郎

胡瓜つくってもいい

トマトつくってもいい

南瓜も西瓜も茄子も

高い肥料代や小作米にくわれる

二番稲をつくるより

野菜をつくって市へだすのが

なんぼいいかも知れない

山の向うの村から

はこんで来るリヤカーの群をみると

みんな悲しげにそう思う

今朝も

おっかあ達は

ここ 町の入口で

がやがやとかけひきに余念がない

家の側を流れる溝で

夜になって 月にぬれて

野菜や果物を洗ってみたい

自分で手入れて

自分でみがいて

売りにいってみたい

みんなそう思うのだが

今日も

雨にしがみつくような銃声がきこえて来る

「敵は左方 四百米」

稲田の畔の こえぐろの影で

赤と白

半々の旗がひらめいている

俺達ゃ はらはらする

「追撃」の声もろとも

泥田の畔をふみ砕いてつき進む群

「畑だったら

畑だったら、わやくそだ!」

みんな悲しげにそう思う

(『車輪』一九三六年九月号に発表 一九七九年二月野田晌子発行『倉橋潤一郎作品集』を底本)

底本 / Source edition

底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社
1987(昭和62)年6月30日初版
底本の親本:「倉橋潤一郎作品集」野田※[#「日+向」、第3水準1-85-25]子
1979(昭和54)年2月
初出:「車輪」
1936(昭和11)年9月号
入力:坂本真一
校正:雪森
2014年6月22日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
/works/054111_001645/tei
プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
/works/054111_001645/

倉橋 潤一郎「みんな悲しげにそう思う」(新字新仮名)、底本『日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)』新日本出版社、1987年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 054111_001645, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite