Soranoha

極めて家庭的に

きわめてかていてきに

木村 好子

すそを吹き上げる

北風は凍り

おおいのない、野天の井戸

洗い物をしぼる手はまっ赤

お前は温順

お前は過去の女

ぱっと冷いしぶきがとびかかる

私は空を仰いだ

くらくらと瞼をおおう

おもい冬空

生活はつづく

新しいものと

古いものが

ごっちゃになってどんでんがえり

新しいモラルの前では

或る女たちが特権を以て針を折り

ひしゃくを投げすて

昨日のくびきをふりほどく

そこには

栓をひねればお湯がとび出す

手をよごさずとも

夫に清潔なカラーをつけさせることが出来る

御馳走も思いのままに……

ゆたかな温床が用意されている

特権をもたない女たちは悲惨だ

自我を失い

個性を失い

文化に背を向けて

パチパチ炭火を煽って飯をたき

あかがね色の庖丁で

菜っぱをきざむ

己れをきざむ

古いわだちにすべりこみ

極めて家庭的な荊棘の冠をいただかねばならない

お前 だがほこりもて

家庭の女よ

やさしく、つよく

冬空の下で、洗え

洗え………

日本の女の無知と朦昧を――

(『詩人』一九三六年二月号に発表)

底本 / Source edition

底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社
1987(昭和62)年6月30日初版
底本の親本:「詩人」
1936(昭和11)年2月号
初出:「詩人」
1936(昭和11)年2月号
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年9月1日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

この表示について / About this rendering

記録は下にリンクした署名済みの TEI ファイルです。このページはそれを読むための一つの形です。読みが複数ある箇所は一つだけを本文に示し、もう一方は語の title に残しています。 / The record is the signed TEI file linked below. This page is one way of reading it. Where the text has more than one reading, the page shows one of them and keeps the other on the word itself, in its title text.

リリース / Release
913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c
TEI
/works/054101_001643/tei
プレーンテキスト / Plain text
/works/054101_001643/plaintext
書誌 / Bibliography
/works/054101_001643/

木村 好子「極めて家庭的に」(新字新仮名)、底本『日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)』新日本出版社、1987年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 054101_001643, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite