――よう戻って来た

娘の手を握りながら

<ruby><rb>両親</rb><rt>ふたおや</rt></ruby>は娘一人ふえたこれからの<ruby><rb>生活</rb><rt>くらし</rt></ruby>を考える

正月だと言って

餅を鱈腹食うて寝ては居れなかった

地主の塀からきこえる

景気のいい餅搗きの音に

餓鬼どもは<ruby><rb>咽喉</rb><rt>のど</rt></ruby>をグウグウいわせて駄々をこねた

お父うが鍬をかついで

裏口からコッソリ出かけようとしたとき

お母あはどう言って泣いたか

――三ヵ日にようもまあ、仕事をするだ

<span data-tei-rend="bouten 傍点 right" style="text-emphasis-style: filled sesame; text-emphasis-position: over right">フウ</span>が悪うて………

米の有り余る豊年に

百姓の納屋はがらん洞だ

出来がよい、と聞けば

――いつかの不足米を、とぬかして

ゴソッと持って行く奴め

豊年じゃいうておどる間抜けがどこにある

百姓の<ruby><rb>生活</rb><rt>くらし</rt></ruby>は何時もかわらぬギリギリだ

豊年飢饉！

バスケットをぶらさげて

東京の工場を追ン出された娘は帰って来た

――操業短縮　強制帰国

――操業短縮　強制帰国

東京モスリン××工場に戦いの火はもえた

<span data-tei-rend="bouten ばつ傍点 right" style="text-emphasis-style: '×'; text-emphasis-position: over right">人殺</span>しの馘首に抗して

二千の女工たちはストライキへ入った

だが見ろ！

大衆党幹部のポケットへ札束が入り

女工たちの要求は勝手にゆがめられた

失業地獄のどん底で

垢ほどの手当が何になる

泣き　泣き

女工たちの帰って行くのは何処なのか

豊年飢饉になやみ　疲れ

くたばりかけの農村へ！

――よう戻った　達者でよかった

だが、帰って来た娘は

もう肺がくさりかけだ

工場での絶え間ない労働強化に体を痛め

荒い野良仕事は出来そうにもない！

見ろ！

<ruby><rb>資本家</rb><rt>きゃつら</rt></ruby>の死物狂いの重<span data-tei-rend="bouten ばつ傍点 right" style="text-emphasis-style: '×'; text-emphasis-position: over right">圧</span>は

くたばりかけの農村にまで襲いかかる

産業合理化に押しひしがれ

わしら百姓が

さらに背負わされる数え切れぬ苦労の山々！

わしはあんまり<ruby><rb>暢気</rb><rt>のんき</rt></ruby>すぎた

遠いようで決して遠くない

他人のようで自分のことだ

農村から！

そうだ、わしらは叫ぼう

失業反対だ！

暗い！

くたばりかけの村は暗い！

だがわしらは貧乏だから賢かったぞ

わしらは合点した

わしらは行こう

此の暗さから抜け出でて一つのあかるい出口へ！

わしらは一人じゃねえ

金輪際ガッチリと一緒だぞ！

わしら百姓は一つの<span data-tei-rend="bouten ばつ傍点 right" style="text-emphasis-style: '×'; text-emphasis-position: over right">赤</span>旗の下、全農へ<ruby><rb>密集</rb><rt>あつま</rt></ruby>る！

おっひろがった野良で肩がはる！

わしらは

春さきの風の中をまっすぐに行きながら

此の闘いをたたかい抜こう！

失業反対だ！

（『プロレタリア詩』一九三一年四月号に黒島謙名で発表）