おれは白蟻のように噛み切ることはできない おれは飛行機のように軽快に空を飛ぶことはできない だが脳髄の中の空間に飛行船を遊歩させることはできる 現在の頁を空白に削りとられた者の前には 明日の希望が堂々と逍遥し始める のぞき窓からのぞき込む鋭い二つの目も 希望の青空を漂泊するおれの飛行船を のぞき得ないし、捕らえ得ないし、投獄し得ない。 おれの希望の青空に昇るのは 工場の烟突と凍え飢えた野良にかがやく太陽だ (獄中から大沼渉宛書簡一九三一年二月四日付 『陀田勘助詩集』を底本)