<ruby><rb>露西亜</rb><rt>ロシア</rt></ruby>は地上のあらゆるものを乗越えて飛ぶ。他の国民と諸王国と諸帝国は傍へ寄って彼女に道を譲りながら、呆気にとられて<ruby><rb>流眄</rb><rt>ながしめ</rt></ruby>に見ている！　ゴーゴリ

おお露西亜よ

汝は飛ぶ、

汝は道をつくってゆく、

汝の動く時、

汝は自由だ、

あらゆる国土の上を、

あらゆる紛乱と殺戮の上を、

おおトロイカよ

汝は飛ぶ。

おおあらゆる一切のものを、

一切のヨーロッパを、

アジアを、アフリカを、

尨大な全アメリカを、

一切の政府とその国民を、

教会とトラストを、

あらゆる締結された自我的な国際条約を。

おお<ruby><rb>軽馬車</rb><rt>トロイカ</rt></ruby>よ

汝の馭者はいま一人の百姓だ、

労働者だ、

汚れた服と汗みずくの<ruby><rb>襯衣</rb><rt>シャツ</rt></ruby>の所有者だ、

はだけた胸と、日に焼けた赭い皮膚の所有者だ、

鶴嘴を握り馴れたはばひろい掌に、

それはいま太い綱を支えている、

鞭を振り上げている、

横眼もふらず行方を見ている、

馬の<ruby><rb>鬣</rb><rt>たてがみ</rt></ruby>は切れんばかりに大気に逆らっている、

横腹には汗がにじみだしている、

しかし、殆んど「蹄を地に触れない位に」

疾走する、

飛んでゆく。――

（『ぬかるみの街道』に発表　『百田宗治詩集』を底本）