地を掘る君等

重い大きい<ruby><rb>鶴嘴</rb><rt>つるはし</rt></ruby>を地面のなかに打込む君等、

汗する君等、

満身の力を一本の鶴嘴に<ruby><rb>籠</rb><rt>こ</rt></ruby>める君等、

おお君等の<ruby><rb>足下</rb><rt>あしもと</rt></ruby>に何と地面が掘り下げられてゆくよ。

君の一枚の<ruby><rb>襯衣</rb><rt>シャツ</rt></ruby>は汗にまみれている、

君の<ruby><rb>頭髪</rb><rt>かみ</rt></ruby>はべったりと額に垂れている、

しかし君の雙腕には血に充ちた力瘤の隆起がある、

君の眼は鋭く、そして不断に愛に燃えている――まことに君等ほど純粋の友情に生きるものはない、

君等ほど愛に飢え、愛に<ruby><rb>充</rb><rt>みた</rt></ruby>されているものはない、

あらゆるものが君等の<ruby><rb>掌</rb><rt>てのひら</rt></ruby>のなかに真実の感動と歓びを経験する、

君等の胸には熱した血とゆたかな逞しい骨肉とが豊饒な土地のようにひろがっている、

君等の胸はあらゆるものに開かれている、

君等の胸はあらゆる健全な女性のものを受けることが出来る、

君等の力は何者をも貫き通す、

何者にも打勝ち、何者をも怖れない。

地を掘る君等、

君等の鶴嘴は鉄でつくられている、

君等の鶴嘴はどんなものでも粉砕しつくすだろう、

あらゆる偶像、あらゆる根柢なき信仰を打破るだろう、

あらゆる君等の<ruby><rb>行手</rb><rt>ゆくて</rt></ruby>の障害を突き破るだろう、

君等は何人にも使役されず、また何人にも犯されない、

君等は個人である、そして君等は一緒である、

君達の力が君達を<ruby><rb>活</rb><rt>い</rt></ruby>かす、

君達の自由と、君達の権利と、君達の平等の愛のために奮闘せよ。

地を掘れ君達！

地を掘れ君達！

地面は君達の前に宏大だ、

君達の下に無限だ、

君達の鶴嘴が君達を光の方に導くだろう、

未来の国の方に導くだろう、

「<ruby><rb>実現</rb><rt>レアリザッシオン</rt></ruby>」の方に導くだろう、

地を掘れ君達、

やがて君達は掘りゆく土地の底から君達の太陽を見出すだろう、

真実の光は君達を待っている、

君達の鶴嘴がその暗い戸を<ruby><rb>打毀</rb><rt>うちこわ</rt></ruby>す時を待っている、

光は君達を待っている、

光は君達を思慕している。

（『ぬかるみの街道』に発表　一九三〇年六月新潮社刊『現代詩人全集』第十二巻を底本）